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京都大学の取り組み

授業・研究室リレーエッセー

  • 皆さんこんにちは。
  • 今回は、京都大学大学院地球環境学堂教授の松下和夫先生にお話を伺って参りました。本当に多くの経験を積まれている先生で、お話を聞いていて、私もとてもわくわくさせていただきました。

それでは、インタビューの方をどうぞ!

 

授業や研究室ではどのようなことを教えられていますか?

学部の講義では、全学共通科目の環境政策論Ⅰ・Ⅱ、それと地球環境政策特論というのを教えています。環境政策論Ⅰは毎年500名くらいの方が受講を希望されて、抽選科目になっていますね。前期には日本の戦後の環境問題やその対策・政策の話をして、後期は地球という範囲に広げて、国際的な環境問題や気候変動、温暖化問題などに焦点を当てて、条約や各国ごとの取り組みを見ていきます。その関係で、国と対比して地方や自治体の取り組み、市民やNGOの取り組みにも注目しています。

環境政策論Ⅱは、20名ちょっとくらいで、ゼミのような形式でやっています。簡単に講義をしてから、学生さんには4、5人のグループに別れてもらってグループ毎の報告と全体でのディスカッションをしてもらっています。前期は持続可能な社会作りやエネルギー問題などを題材にして、後期は原発問題や生物多様性について深く勉強をしています。

大学院の方では、地球環境学舎で、1回生の前期に地球環境法・政策論という科目を教えています。この講義は英語で行なっていて、『Global Environmental Governance』という参考書を用いています。学生は40人くらいで、地球規模での持続可能な発展を実現していくための仕組みを見ていくために、各国の政策やNGOの活動などの、地球環境に関する法・制度的な枠組について研究しています。

 

研究室の雰囲気はどんな感じでしょうか?

基本的には、学生の主体性を重んじた形式を取っているので、みなさんに自分の関心があるテーマにつき調査・研究したことを発表し議論する時間を積極的に取っています。また地球環境学舎(大学院)全体でカリキュラムとして、1回生の後期に必修で3ヶ月程度の企業や官公庁、国際機関などへのインターンシップがあります。今年は、東京都の排出量取引制度を研究している学生や、インドのNGOに所属して水問題について調査をしている学生がいますね。あ、ちなみに、合宿旅行にも行きます(笑)。フィールドワークや現地視察を兼ねて行きます。訪問先では卒業生が働いていたり、インターンをしている学生がいて、案内してもらったりします。去年は長野県の飯田市、今年は花背交流の森に行きました。大学での勉強や研究も大切ですが、実際に現場を見るということもとても大切だと思います。

 

学生時代のお話を伺ってもよろしいでしょうか?

私は1960年代末から1970年代初めにかけて東京大学の経済学部にいました。最初は環境問題が専門ではなかったのです。当時は高度経済成長時代で公害等の問題が深刻でした。経済学部で勉強していてふと、「経済の活性化だけでは人々は幸せを得られないな」と思ったのです。東京大学には公害自主講座というのがありました。そこに参加するようになって、環境問題に携わるようになっていきました。東京大学を卒業してからは、当時はまだできたばかりの環境庁に勤めました。その頃は自然保護の問題も注目されるようになり、その法律策定に関わっていました。

その後、アメリカや日本等で光化学スモッグが深刻化するということがありました。それを受けて、アメリカでは原因物質である窒素酸化物を10分の1に抑えようという規制(マスキー法)の動きがありました。当時の日本はアメリカに自動車を多く輸出していましたから、規制をクリアしないと自動車が輸出できないということで、日本でも排気ガス規制を実施することになりました。日本の自動車メーカーは大反対をしましたが、規制はなんとか実施されました。でも、この規制があったことによって、日本の自動車の燃焼技術は大幅に向上しました。今もなお日本が高い自動車技術を維持していることに、少なからず繋がっていると思います。このことからも、環境対策を先取りしていくことによって、環境と調和したよりよい経済発展ができるという考え方を持つようになりました。

1990年頃からは、地球サミットの開催に向けてジュネーブの事務局に勤めていました。そして、その後、2002年から京都大学にできたばかりの今の地球環境学堂に勤めることになりました。地球環境学堂は、今年で10周年になるんですよ。

 

今は、どんな活動をされているのですか?

環境首都創造ネットワークという組織ができ、環境に熱心な市長さんの集まりがあります。長野県飯田市や、熊本県水俣市、静岡県掛川市、山口県宇部市などの市長さんが集まります。それに関わらせていただいています。持続可能な町づくりを考えるといったような勉強会も行なっています。また、市と学生をつないで、学生をインターン生として送り出したりもしています。国際社会での取り決めや、国の政策も重要ですが、地域の現場から取り組むこともとても大事です。現在はそうした取り組みにも力を入れています。

 

インタビューは以上になります。

特に、学生時代、そして大学を卒業してからのお話は、本当にわくわくするようなお話でした。そして、自身の経験からも、やはり机上の勉強だけではなく、実際に現場を見ていくということが大切であるとおっしゃっていました。地球環境学堂では必ずインターンシップをするというのは僕も今回はじめて知りましたが、とても良い制度だと思います。

  • それでは、短い記事ではありますが、今回はこれにて失礼します。
  • 今回ご協力いただいた松下和夫先生、ありがとうございました!
  • また次回の記事をお楽しみに!

文責:奥本隼也


今回はジェーン・シンガー先生たちのレポートの紹介をしたいと思います。2012年5月にシンガー准教授(地球環境学堂)とマクレラン准教授(エネルギー科学研究科)は留学生と日本人学生向けにキャンパスの持続可能性に関する講義を行いました。「持続可能な未来の構築:原則と挑戦」と題した集団学習型の学生向けKUINEP(Kyoto University International Education Program)コースの一環です。
 講義の間、生徒たちは京都大学の持続可能なキャンパス像を真剣に考え、私たちに多くの提案をしてくれました。このようにすべてのステークホルダーが情報を共有でき議論できる機会を多く持つことができるといいですね。
 英語版のレポートは[?こちら ]から閲覧できます。
?? The Report in English version can be read [ here?].

生徒の関心を通じたキャンパスの持続可能性の向上

2012年5月、「持続可能な未来の構築:原則と挑戦」と題したKUINEP提供の春季学部生向コース(コース長:ギャノン准教授)所属の24名の留学生と日本人学生が京都大学キャンパスの持続可能性について調査しました。生徒が調査したのはキャンパスの環境管理に関する5つの分野―エネルギー、交通、廃棄物、食品、土地と建物―です。ティーチングアシスタント(TA)に引率されて各チームはキャンパスを行き来し、持続可能性に関して良い例と悪い例を探し、各自のトピックについて見識のある教職員にインタビューを行いました。そして、得られた知見や提案を学生同士、また、環境科学センターからのゲストと互いに共有しました。以下にその一例を紹介します。


写真:キャンパスのエネルギー管理者へのインタビュー

持続可能性につながる好例

生徒はキャンパスで実践されている良い環境配慮行動をいくつか発見しました。

  • ・ J-Podセミナーハウスは国産材を使用し、エネルギーを削減している。
  • ・ 生協食堂は食事の栄養情報を公開している。;使用済み天ぷら油はごみ収集車のバイオディーゼル燃料にリサイクルされている。;食の安全基準が厳しく維持されている。
  • ・ エネルギー科学研究所では「スマートオフィス」を増やすためソーラーパネルを利用している。
  • ・ 自動車や電車より自転車の方が多く生徒や教職員に利用されている。
  • ・ キャンパスではごみは種類ごとに分別されている。
  • ・ 生協ショップはレジ袋を渡さないようにしている。
  • ・ 紙消費量削減または古紙リサイクルの努力がされている。


写真:エネルギー科学研究科の石原先生が自身の「スマートオフィス」で節約術を説明

発見された問題点

生徒は今後改善が求められるいくつかの問題点も発見しました。

  • ・ 廃棄物:あまりに多くの紙が捨てられている。;ごみや食品の廃棄について責任を負う一本化されたシステムがない。;部局間で研究室、講義室のごみの分別区分がばらばらである。
  • ・ 建物:断熱性に欠ける。;窓が小さい。;キャンパスと学生寮の関係が希薄。;改善(改修)が断片的である。;わずか10-20%の建物した省エネ型の建物に改装されていない。
  • ・ 交通:数百台もの自転車が廃棄されている。;6,700台分の駐輪スペースが足りない。;廃棄される自転車のリサイクルシステムがない。
  • ・ 食品:食堂で配膳されなかった料理を欲しい人に譲るシステムがない。;産地に関する情報がない。
  • ・ エネルギー:京都大学は京都市で最もエネルギー消費が大きい事業所の1つであり、エネルギー消費はそれほど減っていない。;エネルギー消費量を削減させるような政府の要請力はほとんどない。
  • ・ その他一般:共通したガイドラインがない。;一本化されていない意思決定。;生徒と部局に協力しようとするモチベーションがない。;大学の規則や方針が生徒に届いていない。;環境に関する意識や協調が十分ではない。


写真:講義で生徒たちが成果を共有


写真:環境科学センターの中川先生と矢野研究員が生徒のコメントに回答

生徒からの提案

生徒からのフィードバックの際に、キャンパスの持続可能性を高めるいくつかのアイデアが出されました。

  • ・ 包括的にアプローチできるよう持続可能な政策、実践と教育に関する特別なキャンパスの中組織を立ち上げる。
  • ・ キャンパスでソーラーパネルをはじめとする新しい技術を促進する。
  • ・ インターネットを使って自転車の交換、リサイクルシステムを構築する。卒業生から新入生へ自転車を譲り渡す。
  • ・ 部局間で統一した廃棄物政策を確立する。
  • ・ 大学とコミュニケーションをとり、責任を共有する。
  • ・ 学生寮と蜜に連携しエネルギー消費や環境配慮行動について協力する。
  • ・ ベジタリアンフードのメニューを増やす。
  • ・ 環境政策の意思決定に教職員、学生を交える。
  • ・ 持続可能性について部局に教育する。
  • ・ リサイクルをはじめとする環境に関するルールや政策について学生ワークショップを開催する。
  • ・ 自転車リサイクル、廃棄物リサイクルや古紙削減に対して学生サークル等と連携する。
  • 環境配慮行動として、個人の行動をどう変えればよいのか生徒に教育する。


写真:TAと生徒たちがフィールドワークと成果について議論

生徒のこうした提案は7月の2012年度環境報告書ステークホルダー委員会でも紹介され、教職員や学生のみなさんに興味を持って聞いてもらい、細部にわたって前向きな回答をいただきました。

<文責>矢野順也


  • みなさんこんにちは。
  • さて、本コーナーのNo.9ですが、今年度からの新しい取り組みとして、教授にインタビューを行うという形式を採用しています。

今回は、インタビュー第一弾ということで、環境賦課金制度の運用に関わる環境エネルギー専門小委員会の委員長である塩路先生にお話を伺いました!

研究室ではどのような研究をされていますか?

主にはエンジンの燃焼についてですね。排気ガスをきれいにするといったことや、エンジンの性能を向上させること、代替燃料を上手に使うといったことをやっています。研究内容としては、エンジンの高効率化とクリーン化、代替燃料エンジンの利活用、燃焼改善と代替燃料利用のための基礎実験、エンジン燃焼モデル・シミュレーションの開発といったような内容を扱っています。基礎実験では、定容燃焼器と呼ばれる装置を用いて、エンジン燃焼を単発模擬し、燃焼過程を解明するといったようなことをやっています。

  • 写真1 : 定容燃焼装置             写真2 : 水素エンジン開発

 

研究室の学生はどのようなことをされていますか?

基本的には、今述べたようなことですが、燃焼工学を幅広く扱っているので、いろんなことをしています。僕の研究室では、原則的に学生の主体性に任せることにしていて、雰囲気なんかも和やかですよ。あと、これは生徒たちが自主的にやっていることですが、全日本学生フォーミュラー大会に出場したりもしています。京大もあと少しで優勝する所まで来ているのですが。

 

先生は学生時代には何をされていたのですか?

実は僕はずっとここにいるんです。学部生の時は、工学部の機械工学科でした。とは言っても、その時はまだ、エンジンに強い興味を持っていたわけではなくて、研究室に配属される時に、ふと「水素エンジン」という言葉に惹かれたんですよね。それで研究を始めたのがきっかけでした。その後はずっと京都大学にいます。最近は、環境省中央環境審議会や、国交省のいろいろな委員会,検討会の委員をしていて,研究室に顔を出す時間がなかなかとれなくなっていてね…

 

こんなお話も伺いました!

『実は、可採年数は資源量が少なくなっても減らないということを話すと、意外にも多くの人が驚かれます。可採年数が50年だと言うと、資源が50年でなくなると思われているんですね。実際は値段が上がったりして、可採量が増えることと省エネが進むことで、少しずつ伸びるんです。僕がまだ学生の頃は、今よりも可採年数が短かったんですよ。』

少し考えればわかりそうなことですが、思い返せば僕も、可採年数に対してそのような認識でした。可採年数に限らず、環境問題についての講演などを聞くとよく、50年後はどうなっているか、といったような話を聞きます。計算する際にはもちろん様々な要因を考慮に入れるとはいえ、何が起こるかなんて、正確にはわかりませんよね。

『車の後ろに星マークがついているのを見たことはありますか?最近では、よく見かけると思うのですが。環境基準というものがあって、それを守るために排出ガスに規制値を設けています。それをクリアしないと車を市場に出すことができないのですが、星マークはその一つの指標です。排気ガスが環境基準の25%以下のきれいさなら四つ星がつきます。今ではもう、空気の汚い道路を四つ星の車が走ると、排出ガスの方が綺麗な事もあるんですよ。エンジンの機構の中にはフィルターがありますから。ディーゼルエンジンは燃費が良いのですが、排出ガスはまだそれほど綺麗というわけではありません。日本では、ほとんどバスやトラックにしか使われていませんが、ヨーロッパでは乗用車の5割くらいはディーゼルエンジンだったりします。国や地域によるニーズの違いも面白いですね。』

今はもう、車が通ったら空気が汚くなる時代ではなくなってきているのですね。空気が綺麗になるというのは四つ星の車だからということですが、これからはどんどんそういう車が増えていくのでしょう。将来的に「排気ガスはきたない」という認識が消える日も、そう遠くないうちに来るのでしょうか。

 

文責:奥本隼也

研究室のホームページのURL:http://cpel.energy.kyoto-u.ac.jp/


あらゆる環境問題には、二つの原因がある。
一つは「構造的原因」であり、もう一つは、「心理的原因」である。
構造的原因とは、「人間の行動環境」に内在する原因を意味する。例えば地球温暖化問題で言うなら、「クルマの性能が悪く、たくさんのCOが出てしまう」「法律的にクルマ利用が認められているため、人々がクルマをたくさん利用し、その結果、COが大量にでてしまう」といった 原因が、構造的原因である。
もう一方の心理的原因とは、「人間の心理」に内在する原因を意味する。例えば、再び地球温暖化問題で言うなら「皆がクルマを使おうと考える心理を持つが故に、皆がクルマを使い、COが大量に発生してしまう」「皆がクルマを運転する時に、省エネ運転・エコドライブをしようとは考えないような心理を持つが故に、COがたくさんでてしまう」というのが、心理的原因である。

環境問題の解消のためには構造的原因と心理的原因の双方に配慮し続けていくことが不可欠であるが、これまでの環境に関する研究においては、前者の構造的原因に着目した様々な技術開発や環境政策研究が中心的な位置を占めてきた。しかし、後者の心理的原因に着目した政策研究は十分に進められていないのが現状である。
ついてはこうした現状認識の下、本研究室では、とりわけ後者の「心理的原因」に着目した環境政策についての研究を進めている。つまり心理学を中心とする様々な行動科学を基本として、人々の意識や態度の変容を期し、それを通じて環境に配慮した行動への変容を促そうとする様々な「説得的なコミュニケーション政策」の開発を行っている。

その中でもとりわけ本研究室では、交通問題とそれに付随する種々の社会問題の解消を目指して、「過度な自動車利用」を控えるためのコミュニケーション型交通政策「モビリティ・マネジメント」のプログラム開発と実務展開を推進している。この交通政策は、大規模、かつ個別的に、図のようなデータを用いながら人々とコミュニケーションを図ることで、一人一人の交通行動の転換を促すものである。これまで本研究室では、札幌市、和泉市、川西市、猪名川町、帯広市、三木市、明石市、神戸市、富士市等の様々な地域の居住世帯、事業所、そして小学校において、それぞれの現場の交通行政や交通事業所と連携しつつ実務政策を推進してきている。その中で参加者における自動車利用率の平均減少率は12%、平均CO2排出量削減量は19%という実績が上げられている。

  • 図1 クルマからの転換を促すための説得情報例
  • (1)それぞれの「環境に優しい行動」を1年間続けた場合に削減できるCO2。クルマ利用の削減が圧倒的に高い。
  • (2)通勤手段別の肥満者の割合。クルマが他の手段の1.4~1.5倍ほど肥満リスクが高い。

( 『京都大学環境報告書2010』 より )


著書: なぜ正直者は得をするのか(幻冬舎新書)、 公共事業が日本を救う(文春新書)、 社会的ジレンマの処方箋(ナカニシヤ出版)、 モビリティ・マネジメント入門(学芸出版)

受け持たれている講義: 人間行動学

趣味: 磯釣り


なぜ生物多様性が重要なのかという問いに答えようとする本は数多ある。多くは、生物学や生態学を専門とする研究者の方々が著したものである。いずれも博識に裏打ちされた素晴らしいものである。だから、これらを読めば、生物多様性が重要であることを左脳では理解できる。しかし右脳では分からない。なぜか。著者に落ち度があるわけではない。私の感受性が悪いからである。私は生物音痴である。昆虫少年でも、釣り少年でもなかった。景観には興味をもち感動もするが、それを構成する個々の生物には思いが及ばない。生き物オタク(失礼!、でも敬意を込めた呼び方です)には当然のことが、生物音痴にはどうしても分からない。かつ、困ったことに、これまでの私の限られた観察によると、先進国の人々や都市で生活する人々の過半は生物音痴である。生物音痴の心には、生き物オタクの思いがなかなか響かない。

とはいえ、生物音痴であることに胡坐をかいているのはただの怠慢である。この思いを強くしたのは、もう20年ほどまえである。当時、灌漑工学を勉強していた私は、中西準子先生が書かれた短文に出会った。中西先生は水質問題にリスク評価を導入し、社会に役立つ工学研究のエースとして活躍しておられた。その中西先生が、長良川のサツキマスについて書かれた一文である。長良川は、ダムや締切り堰のない稀有な河川であり、サツキマスという回遊性の魚が棲んでいる。サツキマスは、河川で孵化し、海に出て成長し、河川に戻って産卵する。この川に利水と治水を目的とする河口堰の建設が計画され、それに対して大きな反対運動が起こっていた。大規模公共工事を強行しようとする政府とそれに反対する市民運動という、おなじみの構図である。市民運動の論拠の一つがサツキマスの回遊が阻害されるということだった。原文が見つからないので引用することができないが、中西先生も、当初は、利水や治水の効果を検証することと比べて、サツキマスの生息に与える影響を検討することの重要性を理解できなかったそうだ。しかし、長良川の生態系を学ぶにつれて、サツキマスを生息させ続けることがきわめて重要であることが分かったという趣旨のことを述べておられた。すなわち、生物多様性が重要であることを分からないのは無知だからであり、十分な知識を身につければ自ずと理解できるというのである。政府とも市民運動とも常に適度な距離を保つ中西先生の言葉を、研究者として真摯に受け止めようと思った。

その後、私の研究関心は、農業や森林利用、そして沿岸域生態系へと展開していった。自然生態系への人為的な介入が生物多様性をどのように変化させるのか、農業生態系はどの程度の生物多様性を有しているのか、といったテーマは避けて通ることができない中心的な研究課題となった。相変わらず生物音痴の私は自ら生物多様性を調べることはできないが、心やさしい同僚に支えられて、生物多様性を論じるようになった。とはいえ、生物多様性の重要性を、まだ左脳でしか議論できていない自分自身を常に感じていた。

ところが最近、少しずつ、自分自身が変わり始めているのではないかと思っている。何がきっかけとなったのかは、はっきりとは自覚できていない。いろいろな思考が重なった結果だと思う。『ハチはなぜ大量死したのか』(ローワン・ジェイコブセン著、2009年、文藝春秋)を読んでカリフォルニアにおけるアーモンド生産がミツバチなくして成り立たないことを知った。『奇跡のリンゴ』(石川拓治著、幻冬舎、2008年)を読んで、化学肥料により作物の栄養状態を最適に保ち農薬により病虫害を防ぐという近代農学のアプローチを相対化することを考えた。いずれも、農業生産が、これまで私の視野に入っていなかった生物の働きのもとで成り立っていることを教えてくれた。とすると、その生物を支えている環境は何か。その生物の生息も別の生物によって支えられているのではないか。こう考えると、生態系における、生物音痴には無限に見える生物の連鎖が、農業生産を支えていることになる。

このような視点から東南アジアにおける農業を眺めなおすと、人々が生きていくための農業を支えているのは、少しの技術と生態系のもつ大きな生物多様性であると考えるようになってきた。私の右脳に生物多様性が入り込んできたのである。これはまだ、左脳では十分に検証できていない。しかし、これが本当だとすると、これまでの作物を対象としてきた農学から生態系を対象とする農学への転換を図るという、とてつもなく大きな話に展開する可能性を秘めている。20年前の中西先生の言葉に応えるときがようやく来たのだろうか。

タイ東北部の水田。ミミズやタニシ、カニなどの小動物が 生息し、ナンゴクデンジソウなどの水田雑草が繁茂する。

( 『 京都大学環境報告書2010 』 より )


  • 著書: Ecological Destruction, Health, and Development: Advancing Asian Paradigms(共編著)、京都大学学術出版会(2004)
  • Small-scale Livelihoods and Natural Resources Management in Marginal Areas of Monsoon Asia(共編著)、Bishen Singh Mahendra Pal Singh(2006)
  • 論集モンスーンアジアの生 態史 第1巻 生業の生態史(編著)、弘文堂(2008)
  • 地球圏・生命圏・人間圏-持続型生存基盤とは何か-(編著)、京都大学学術出 版会(2010)

受け持たれている講義: 開発生態論、持続型生存基盤研究の方法

趣味: 旅行、マッサージ


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