エコ~るど京大

全員参加型で環境負荷を低減する「持続可能なキャンパス」の実現を目指します

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初夏の陣2018、ご支援ありがとうございました!報告書が完成しました。

2018.08.07

SDGs お知らせ イベント報告 2018年初夏の陣

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◆全体概容

上田 知弥(工学部地球工学科2回生)

 

例年と同じく、学内の環境意識の向上を目的とした「エコ~るど京大 初夏の陣」を今年も開催しました。今年は5月にオープンラボ、6月に各種イベントと2か月にわたり実施し、様々な方に来ていただきました。

まず、例年6月に京大生協ルネの1階イベントスペースで実施しているオープンラボを、5/7~5/31の平日に同様の場所で行いました。今年は昨年度の持活の流れを汲み、「Sustainable Development Goals(SDGs)」をもとに、各目標に関連したイベントを多数実施しました。まず、SDGsそのものについて知ってもらおうということで、食堂にSDGsクイズの三角柱を置いた上でその答えをラボに設置したり、意識調査をするためスマホ上で、わずか3分でできる「持活プレ調査」をしたりしました。その他、各先生によるラボでのお話やおすすめの書籍コーナー、あまり見慣れないスタンディングデスクが置いてあったり、屋外でチャリティーフリーマーケットを開催したりと盛りだくさんでした。

また、6月はより一つひとつの目標に特化したイベントを行いました。例えば、目標1「貧困をなくそう」目標4「質の高い教育をみんなに」にちなみ、タンザニアのフェアトレードコーヒーと教育支援についての講演会を実施しました。週に1回ほどのペースでイベントを行いましたが、6月7日のフェアトレードコーヒー企画から、6月29日の特別イベントに至るまで、どのイベントも学生社会人を問わず参加していただき、活気づいていただけでなく、いろいろな意見を交換することもできました。ここで頂いた意見、得た経験を今年度の活動に生かしていければと思います。

 

◆オープンラボ

西本早希(農学部資源生物科1回生)

上田知弥(工学部地球工学科2回生)澤田大和(農学部森林科学科2回生)共著

 

5月8日から5月30日に京大生協ルネ1Fで開催されたオープンラボは、環境問題について研究されている先生方と学生たちが気軽にコミュニケーションをとれる場を提供するための企画です。

ラボに参加頂いた先生方は、浅利美鈴先生(地球環境学童)、磯部洋明先生(京都市立芸術大学美術学部)、酒井敏先生(人間・環境学研究科)、角山雄一先生(放射性同位体元素総合センター)、野中鉄也先生(工学研究科)、本川雅治先生(総合博物館)、山敷庸亮先生(総合生存学館)の7名です。またAIESEC京都大学委員会、京都ホストファミリー協会KAHFの方にも参加して頂きました。日替わりで先生方にラボに登場して頂き、普段の講義とはひと味違ったお話が聞ける機会を提供できました。また先生方オススメの書籍をラボに展示し、ラボに参加した後、学びを深める機会を設けました。

そして環境問題について考える参加型のワークショップも開催しました。内容は、マイバッグの作成(講師は日本環境国際交流会J.E.E.、布遊工房)、惑星観察ナイト(講師は山敷庸亮先生)、福島県研修報告会(講師は角山雄一先生ほか3月に福島県研修に参加した学生)で、とても充実した内容となりました。環境問題を身近に感じ、体験しながら考えることで日常生活でも役立つ知識を身につける良い機会となりました。

またエコ~るど京大メンバーがSDGsの17項目に関わるクイズを考え、各生協食堂に展示しました。全文英語の問題や答えがひとつではない問題など、難解な問いばかりでした。ラボではクイズの解答・解答例を展示しました。SDGsについて知り、考えるきっかけとなりました。

今年度もたくさんの方々のご協力のおかげで、多くの人に環境問題について考える機会を設けることができました。最後にこの場をお借りしてラボを担当してくださった教員、団体の皆様、ワークショップの講師の皆様、学びやすい場作りに貢献してくださった京大生協の皆様、ご来場下さった皆様に心からお礼申し上げます。

左:JEEの方とMy エコバッグづくり。右:SDGsクイズの解答パネル

 

◆チャリティーフリマ

オープンラボの開催期間中、ルネの店舗前でフリーマーケットを開催しました。日用品やブランド服、書籍などを1点10円から販売しました。食堂の1階の外に置いていたので、お昼時を始めとして数多くの学生が興味をもっていました。それだけでなく大学職員や地域の方々も訪れ、連日賑わっていました。合計売上は32,632円となり、2018年7月上旬に発生した「平成30年7月豪雨」の被災地に寄付します。ご協力頂いたすべての方々にお礼申し上げます。

 

◆変人酒場

白井亜美(総合人間学部1回生)

安藤悠太(工学部博士1回生)共著

 

今回の初夏の陣では、5月16日(水)の放課後に酒井敏先生(人間・環境学研究科)と「京大変人酒場」を開催しました。

私たちからはジビエハンバーグ、おにぎり、食べられる(ゴミが出ない)お皿を用意しました。ジビエを食べることは害獣狩猟の負担を軽減することにも繋がるというメンバーの提案で、「変人酒場」らしい変わり種として用意しました。食べられるお皿は、浅利先生が持っていたドイツ製のもので、硬くてぱさぱさですが食べることはできました。

酒井先生の周りには学生や学内関係者だけでなくから社会人まで25人程度の方に参加していただきました。たくさんの方々が食べ物などを持ち寄って集い大変盛り上がりました。今回変人酒場を開催したのは、酒井先生のつくられた「フラクタル日よけ」のある庭でした。フラクタル日よけは、その形状により日差しをしっかり遮りながら普通の屋根とは違って明るく風通しもよい日よけです。今回は日が沈んでから開催されましたのでフラクタルの効果が示されたわけではないのですが、酒井先生がライトを設置してくださったこともあり、一風変わった刺激的な雰囲気になったのではないかと思います。

「変人」が自分の普段の生活の中では出会わない人を指すのだとすれば、この変人酒場でいろいろな人と出会えることができた参加者も多いのではないでしょうか。私も変人酒場を通じてエコ~るど京大に長くご協力くださっている村田製作所の方とお話をすることができ、自分が意識できる身の回りの世界とはまた違った世間を垣間見ることができましたし、酒井先生から自分の現在属している総合人間学部についても伺うことができました。環境にやさしいお皿や日よけなど普段の生活の中で環境へ配慮することをどのように取り入れていくかは私たちにとっても重要な課題です。今後の様々なイベントにも活用していきたいと思っています。

 

◆健康デー・夜ヨガ・夜太極拳

小谷和也(工学研究科 都市環境工学専攻)

 

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を目指し、5月23日にルネのオープンラボを一日「健康デー」として、気軽に健康について考えてもらう機会を設けました。この企画は京都大学健康科学センターとエコ~るどのコラボ企画として、健康科学センターの先生・医療スタッフの方々と協力して開催しました。

 

当日はあいにくの雨で、予定していた健康相談ができませんでしたが、血圧を測って先生に相談していた学生もいました。

また、オープンラボ期間中には、健康科学センターの先生方による推薦書の販売も併せて行いました。学生のメンタルヘルスや医療情報リテラシー、トレーニングなど様々な本が並びました。京大の学生を多く診ておられる先生の推薦書のため、学生の関心も高かったことと思います。

また、11時から三回、15分のプチ気功・太極拳を開催しました。

ゆったりとした動きでしたが、筋肉が動かされて体が少しぽかぽかしていました。

続けて12時から三回、15分のプチヨガを開催しました。お昼時でざわざわしていたルネでしたが、いくつかポーズをするうちにだんだんと集中することができました。この日の参加者は25名でした。

5月25日には、拡大版ヨガ企画「夜ヨガ」を行いました。参加者は15名でした。京都大学健康科学センターとの共同開催であり、会場は、吉田キャンパス・本部の施設、リニューアルされた健康科学センター「オープンラボ」にて行いました。一時間かけて行ったので、23日の15分プチヨガに比べていろいろなポーズであったり、最後に瞑想をしたりと、より本格的に体験できました。私としては、最後の瞑想が意外と難しかったです。

 

そして6月20日に、拡大版太極拳企画「夜太極拳」を行いました。

京都大学健康科学センターとの共同開催であり、会場は、前回と同じく吉田キャンパス・本部の施設、リニューアルされた健康科学センター「オープンラボ」にて行いました。15分版の際には省略されていた、太極拳の動きの意味の説明を今回は伺うことができました。一時間かけて行ったので、太極拳の一点の流れを行うことができました。この日の参加者は20名でした。

計3日間でヨガ・太極拳をはじめ多くの機会で気軽に健康について考える場を設けることができました。一人暮らしで多くの学生が不安を抱える中、京大の診療所・健康科学センターを知って今後役に立ててもらえるようになると思います。

 

Blue Seafood Lecture(ブルーシーフード)

Abiyan Ardan Arfani

On June 1st, 2018, we had a lecture from Iue San, the founder and the head of the Sailors for the Sea Japan. The lecture contains the ocean environmental issues and her blue seafood guide project from Sailors for the Sea Japan. During her lecture, she was emphasizing the importance our ocean and also the current condition of our ocean. There is a common mindset that the resources in our ocean are unlimited. Some people understand that it is limited yet did not act properly into conserving it. I was moved and inspired from hearing her stories of how she started the project.

In 2013, Iue San, set out on an extraordinary mission to make a sustainable seafood guide for her country. The project is called blue seafood guide. As we all know, Japan as the home country of sushi has a large appetite for seafood. According to the United Nations, Japan consumes 6% of the world’s fish harvest, but its citizens make up only 2% of global population.

Without a large research team or staff, they are using research that are already verified by credible organizations like the Monterey Bay Aquarium in California to create a sustainable seafood guide. However, this quickly created a bump in the road. In the United States, we generally have approximately five seafood options on a menu (salmon, tuna, lobster, mussels, etc.) but on a menu in Japan, the options are significantly broader. Due to that, they realized that they needed many more resources and expanded to reviewing research from the Japan Fisheries Agency and municipal governments as well as Monterey Bay Aquarium, the Marine Stewardship Council, the International Union for Conservation of Nature, the World Wildlife Fund and Greenpeace. To ensure the credibility, they adopted stricter standard and check the usage of multiple sources to show different assessment of data for the same species caught by the same method.

Currently, the Blue Seafood Guide features 60 different fish that are commonly found in restaurants and markets in Japan. In comparison, the Monterey Bay Aquarium pocket guide features 23 best options. When creating the Blue Seafood Guide, Iue San chose to feature only sustainable seafood, rather than include fish and shellfish that should not be eaten. This small, but important shift in approach allows the guide to be well received by Japanese culture, enabling Sailors for the Sea Japan to partner with many organizations that would not normally discuss ocean health issues.

Last year, in partnership with one of Japan’s major TV networks, Asahi TV, Sailors for the Sea Japan held Blue Seafood festivals. These festivals feature celebrities sharing their passion for sustainable seafood and organic products. The events also offer catering and retail areas to allow attendees to taste and purchase the fish and seaweed recommend by the guide. Additionally, Sailors for the Sea Japan has created sustainability partnerships with restaurants that offer fish featured in the Blue Seafood Guide.

Sailors for the Sea Japan asks its readers to give the ocean rest so its resources will be available for future generations. In a country whose culture is steeped in a tradition that includes eating seafood, the guide boldly notes a United Nations statistic that all species currently fished for will be depleted by 2048 if citizens continue to fish at the current pace. As well, the Japanese Eel, widely consumed there, has been designated an endangered species. Additionally, in a nation that still hunts whales and dolphins, the guide is careful to outline that these species are high in mercury.

 

◆フェアトレードコーヒーから貧困・教育を考える

山口 真広(農学部3回)

柴田 星斗(農学部3回)

 

6月7日に農学部総合館で「フェアトレードコーヒーから貧困・教育を考える」とういう講演が行われました。講師には辻村英之先生(京都大学農学研究科教授)、須藤祥吾さん(アイセック京都大学委員会)をお呼びしました。内容は、まず須藤さんによるウガンダでのインターン経験の紹介、その次に、辻村先生によるタンザニア・キリマンジャロのルカニ村における、フェアトレードコーヒーの役割に関する講演でした。レストランカンフォーラで実際に販売しているフェアトレードコーヒーを試飲しながら話を聞ける会で、50名ほどが来場していました。以下お二方のお話の詳細を順にまとめます。

 

須藤さんのお話について。

アフリカのウガンダでのインターンについてお話をして頂きました。須藤さんの現地での活動は、農家さんのお手伝いと、寄付金の収集のためにクラウドファンディング の作成等だったそうです。須藤さんは肌で感じた貧困の現状にとても考えさせられたそうです。農家の方が休憩時間にポリ袋に入った少量の水を飲んでいたというお話には、我々聴衆とてそれぞれに思うことがあったことでしょう。まして実体験としてその現状を見て来られた須藤さんの胸中は、我々では推し量りえません。体験の全てをお聴きするには短い時間ではありましたが、非常に多くのことを考えさせられる時間でした。

 

辻村先生のお話について。

今回紹介して頂いたフェアトレードの取り組みは「最低輸出価格の保証」と「フェアトレード・プレミアムの支払い」でした。前者はコーヒー豆の国際価確低迷時にも、生産者の利益が残る最低価格(現在、単位あたり140¢)以上で豆を輸出することであり、後者は利益の一部を生産地の農協等に還元し、社会開発プロジェクトの経費として利用するものです。

そもそもフェアトレードは貧困削減と農業開発を目的としており、以下フェアトレードが、どのようにこれらの目的を果たしているのかについて紹介します。

まず貧困削減の面については、現地の人たちの置かれた状況は想像以上のものでした。例えば1998年では、我々が450円のコーヒーを買った場合、農家の利益はたったの2円でした(227分の1)。さらにコーヒー豆の生産者価格は乱高下し、2002年には845分の1にまで落ち込みました。これを解決するのが前述の「最低輸出価格の保証」です。また、教育水準も低く、子供が十分な教育を受けられていません。これを解決するのが前述の「フェアトレード・プレミアムの支払い」です。現にこの資金をもとに学校の建設などが行われています。また、2人の子供を中学校に行かせるためには、単位あたり20¢のフェアトレード・プレミアムの支払いが必要になるそうです。

次に農業開発の面については、ルカニ村のコーヒー栽培の栽培形態はアグロフォレストリー(農林複合形態)と呼ばれるものに属し、世界農業遺産に認定されています。世界農業遺産とはFAOが認定する世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を指すものです。アグロフォレストリーとは樹木の間で農作物を栽培する複合的な農業形態を指します。とりわけ直射日光を嫌うコーヒー栽培において、木陰を利用できるこの形態は理にかなっており、ルカニ村ではバナナなど現地の食物栽培とともに行われています。この農業遺産が今、崩壊の危機を迎えています。このことは、コーヒー豆の国際価格の乱高下等の収入の不安定さに起因しており、コーヒー豆の栽培では生活が厳しくなった農家は、コーヒー豆の栽培を辞めトウモロコシの栽培を始めました。多くの日光を必要とするトウモロコシ栽培では、アグロフォレストリーの樹木は邪魔な存在であり、伐採されます。こうした崩壊は、諸悪の根源である「農家の貧困」を改善することにより、防ぐことができます。そのため、フェアトレードが大きな役割を果たすのです。

以上のことよりフェアトレードは、ルカニ村の人と農業を守る手段の一つであるとわかりました。日本で我々がフェアトレードコーヒーを購入することにより、ルカニ村を守ることに繋がります。京都大学ではカンフォーラにて購入することができます。

 

雑感

農家の生活を守るためにはコーヒー以外の道もあるのではないでしょうか。例えば観光が挙げられます。世界農業遺産に登録されているのは観光地として利点です。確かに宿泊施設が無いという欠点も存在し、住民が貧困に苦しむ中観光客に住環境を提供するのは順番が違います。しかし観光関連の大企業と提携する中で、衛生面の向上などが期待できるのではないでしょうか。

「生産者支援は消費者にとって付加価値になりうるのか?」という疑問が湧きました。おそらく環境経済学や今流行りの行動経済学の分野になるのでしょうか。調べてみると面白いと思います。

 

最後になりましたが、辻村先生、須藤さん、並びに今回の講演に携わって頂いた多くの方々にお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 

◆「浴衣着付け教室」京都着物企画

後鳥友里(農学部地域環境工学科1回生)

西道奎(総合人間学部2回生・京都着物企画)共著

 

エコ~るど京大では、6月12日(火)、14日(木)、19日(火)の3日間、放課後に研究室にて浴衣着付け教室を行いました。これは、京都大学の学生団体である京都着物企画さんとの共同企画でした。京都着物企画では、昨年度からエコ~るど京大とコラボして、使わなくなった着物を持ち主から欲しい人の手へと渡し、そのような人と人との繋がりを通して魅力ある着物を再び活用させていく取り組みである“Kistory”を展開しています。今回の着付け教室は、このKistoryのプレイベントも兼ねて行われたものでした。

今回3日間の参加者は11人でした。当日、参加者は自分の持っている浴衣を持参するか、または団体から借りることができました。持参しなかった参加者はまず、数種の浴衣の中から好きな柄の浴衣と帯を選びました。その後、二手に分かれて個別で基本的な着付けと帯の結び方を教えてもらいました。浴衣を美しく着るのは想像していたよりも大変で、おはしょりをきれいに出したり縫い目を上下で揃えたりするのがなかなか出来ませんでした。また、作り帯を使うのではなく一から帯を結ぶのは初めてのことで、これもまたリボンの大きさを調節したり傾かないようにしたりするのが難しかったです。一度教えてもらいながら浴衣を着た後は、今度は何も見本を見ないで各自で着る練習をしました。浴衣を美しく着付けるには、着る際に気をつけるポイントがたくさんあり、それらを思い出しながら着るのは思っていたよりも時間がかかりました。しかし、自分で一から浴衣を着付けることが出来たときはやはりうれしかったです。

今回着付け教室に参加して、日本独自の文化である浴衣はやっぱり素敵だと思いました。

 

↑6月19日(火)参加者

今年も夏がやってきたところですが、浴衣を着る機会があればぜひ自分で着ていきたいと思います。今後も着付け練習は行っていく予定だそうなので、ぜひたくさんの方に参加していただき、浴衣の良さを知ってもらいたいです。

 

◆映画『セプテンバー11』

法学部3回生 谷合敬太

 

*2018年6月21日(木) 18:30~21:00

京都大学本部キャンパス 物理系校舎会議室にて

 

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をテーマに、世界各国を代表する11人の映画監督が「11分9秒01フレーム」という共通の条件下で制作した短編を集めたオムニバス映画『セプテンバー11』の中から、3つの作品を約20人のイベント参加者で鑑賞しました。一つ一つの細かい描写について、その背景となる歴史的事実や思想についてイベント参加者で意見を出し合ったのち、人間環境学研究科の岡真理先生に解説をいただき、映画を深く理解することができました。

イランの映画監督サミラ・マフマルバフ氏の作品では、ソ連のアフガニスタン侵攻で発生したアフガニスタン難民を描いており、難民の子供が先生に諭されながらもアメリカ同時多発テロ事件についてあまり理解していない様子や、日干しレンガで核シェルターを作ろうとしている描写から、世界の常識と難民の生活とのギャップを感じる一方で、どこか歴史的にリアルな描写もあり、監督の強いメッセージを感じました。

インドの映画監督ミーラー・ナーイル氏の作品では、ニューヨークに住むイスラム教徒を描いており、息子がテロリストであると疑われた母親が、息子はアメフトをやっており、スターウォーズが好きな、典型的なアメリカ人だと必死に訴える様子や、かつて仲良くしていた近所の住民から好奇の視線に晒され心身共に疲弊していく様子、息子は事件の究明に向かい犠牲になったということが分かってからは一転、棺にアメリカ国旗がかけられ、英雄であるかのごとく扱われている描写から、国籍というアイデンティティの脆さと、精神的支柱になるという宗教の役割を感じました。

イギリスの映画監督ケン・ローチ氏の作品では、南米チリで起こったもう一つの「9.11」である1973年のチリ・クーデターについて描いており、「自由の国」を掲げるアメリカ合衆国の画策によって、チリのアジェンデ政権が崩壊させられ、罪のない民衆が虐殺される描写から、自国にとっての正義が、他国にとって不正となりうることということを感じました。また、アメリカ合衆国の同時多発テロに比べ、チリ・クーデターについてはあまり知られておらず、私たちがいかにメディアが取り上げる情報に翻弄されているかという事についても、改めて認識しました。

「平和と公正をすべての人に」という日常生活ではあまり感じることができないSDGsの目標を、映画を通じて考えるきっかけとなるようなイベントでした。

 

当日の様子

 

◆日本のご飯を味わう会

高田咲(農学部4回生)

「自給率について考えよう!日本のご飯を味わう会」は、「あなたも国際社会の一員に!模擬国連」の一環として開催されました。なお右の写真は今回の模擬国連とは関係のないものだが、このような形で議論を行いました。「日本のご飯を味わう会」は、模擬国連における各国の戦略を考える場所として提供され、ご飯を味わいながらお互いの国の状況の把握や関係構築を行いました。

提供されたご飯はビュッフェスタイルで、各自がボウル皿にご飯をよそい、その上に野菜炒めや卵、サラダ及び魚などの具材を載せていき、最終的に各自の好みに合ったサラダボウルが出来上がります。また、具材の中には牛・豚・鶏肉を含んだものがなかったが、サーモンやスクランブルエッグから十分なたんぱく質を補うことができ、加えて多くの野菜を摂取することができるため、栄養も自然とバランスよく摂取できる仕組みになっていました。

また、最も重要な点だと感じたのは、この料理はコメを多く消費することができる、ということです。日本は食の西洋化が進み、米の消費率は年々減少しています。しかしこのような料理を作ることで、コメの摂取量が増え、コメ農家を買い支えることにつながります。白米と味噌汁といった日本型食生活が薄れている現在、コメを消費するスタイルも新たにしていく必要があり、西洋化した食生活に上手く日本従来の食生活を練りこむことが、日本の持続可能な社会形成につながるのではないだろうかと感じました。

↑「日本のご飯を味わう会」での食事

 

 

◆国益とのトレードオフ(模擬国連)

横井晴紀(経済学部1回生)

 

6月28日、エコ~るど京大では模擬国連を行いました。模擬国連とは、参加者がそれぞれ違う国の代表になりきって国連での会議を行うゲームです。私はイギリス代表として参加しました。会議は英語で行われるとあって当初は不安も大きかったのですが、始まってみると大使になりきり、いかに自国の利益と名誉を守るかで必死となり、英語への戸惑いは消えていました。

議題は持続可能な社会を作るために先進国が発展途上国に支援する枠組み作りでした。参加した国はアメリカ・日本・ロシア・中国・イギリス・インド・カンボジア・ブラジル・ベトナム・サモア・南アフリカであり、議長を含め、13名が参加していました。会議が始まると、大方の予想通りアメリカに支援を求める声が集まりました。一方のアメリカは、自国のみが負担することに難色を示し、他の先進国にも参加を求めました。ここで発展途上国からイギリスに参加を求める声があがりました。しかしイギリスとしては今や経済力も小さくなってしまっており、資金を出す余裕はないです。だが、資金提供を拒否すれば国際的な非難を浴びることは分かり切っています。そこで私は50億ドルの資金を提供し、基金を設立することを提案しました。ただしその条件として、

他に3か国以上が資金提供をすることを付け加えました。

交渉の構図は現実世界を思わせるようなものとなりました。アメリカと日本はすぐに賛成を表明しましたが、中国とロシアは「我々は発展途上国である」として資金提供を拒みました。日・米・英は資金提供をすれば発展途上国市場に進出できると説得しましたが、日米英との競争になり不利として首を縦に振りませんでした。インドは資金提供の代償として二酸化炭素の排出権の移譲を求め、さらに交渉は難航しました。

最終的に日米英が資金提供、中露が技術協力することで合意案が策定されました。ここでイギリス(筆者)が、当初の3ヵ国が参加するという条件を引き合いにもう1ヵ国の資金提供があるまで基金の設立を延期するという修正案を提示し、受理されました。結果、基金の設立は延期となってしまいました。

なぜ今回、即時資金提供の合意に至らなかったのか。そして、どうすればより多くの先進国を巻き込めたのか。それには、環境問題特有の条件が関係しています。環境問題は世界中の国々に影響を与えます。「だからみんなでお金を出し合って解決しよう」となるのが理想論であるが、現実にはなかなかそうはいきません。他の各国も影響を受けるので、黙っていれば他の国が資金を出してくれる、と考えることもできてしまうからです。つまり、先進国には環境対策に消極的な姿勢をとるインセンティブが働きます。

しかし、実際には先進国は(十分とはいえないまでも)環境対策に資金を提供しているし、今回の模擬国連でも日米英は資金提供の意思を示しました。その理由はひとえに国際世論にあります。これまで大きな環境負荷を与え、経済的にも豊かになった先進国が資金提供を拒否すれば国際的な批判にさらされます。それへの対応という面が一番強いでしょう。もちろん、環境技術によって自国の産業を育成する目的もあります。「技術協力」はその典型です。しかし、多額の資金提供は世論によるところが大きいのです。直接的な自国への利益はもたらさないからです。長期的にみれば社会の持続性が増すことにより大きな便益を受けられるのですが。

今回の議題でも、修正案に「事実上合意を空文化するものではないか」という批判が出れば撤回せざるを得なかったでしょう。先進国に国際貢献を求める世論を形成し、責任逃れを追及していく姿勢の重要性を痛感しました。

 

 

◆「持続可能性への挑戦 講演会・交流会」

小谷和也(工学研究科M2)

奥野真木保(農学部森林科学科1回)

 

第一部では、元京都大学大学院地球環境学堂・学舎長であり現在は滋賀県琵琶湖環境科学研究センター長でおられる内藤正明先生と、前滋賀県知事であり現在は未来政治塾塾長でおられる嘉田由紀子先生をお招きし、学生さんや会場との交流を中心とした企画を実施しました。

ここでは、お二人が著者となられている「滋賀県発!持続可能性社会への挑戦 科学と政策をつなぐ」を参加者全員が事前に読むことでより深く、本の内容から踏み込んだ内容に触れられる形式で行いました。テーマとして、本の中での注目点だった「科学の真理探究と、政策の利害追及の連携」を挙げ、それを基に学生と意見交換をしながらテーマの理解を深めました。本の構成と同様に、それぞれ違うトピックを扱った三部構成として、それぞれの部に対して一名、計三名の学生に発表と意見交換・先生への質問をしていただきました。

第一部の発表をした江城さんは滋賀県民として著書に感じたことをぶつけ、研究と政策と市民それぞれに深く関わる三名による議論となりました。第二部の発表をした山口さんは、地元での地域活性のためのワークショップがうまくいかなかった経験から、東近江市での密度の濃い議論が行われているワークショップの秘訣を求めていました。第三部の発表をした松浦さんは、著書を読んで行政側の活動や特徴を見たうえで原発問題の際に感じた疑問を先生にぶつけていました。

フロアからはマイクロプラスチックに関する質問なども出て、興味深い内容となった講演会でした。

 

【第二部】

第二部は、学生と企業、団体(※)の人が8つのグループに分かれてワークショップを行いました。その内容は、「生産年齢人口の減少、耕作放棄地、大手工場の撤退などの合計10個の問題を抱えた日本のある地方自治体がある。その地域内でそれらの問題を解決できるような会社を設立する。」というものでした。シンキングタイム中には権利カードといって、5分だけ嘉田先生、内藤先生、藤井先生(京都大学大学院地球環境学堂教授)のいずれかからアドバイスをもらうことができました。自己紹介後、企業としてどの問題を解決するものにするかに悩んでいたグループも多かったですが、アドバイスなどをうまく利用することでアイデアもまとまっていったように思われます。その後、シンキングタイム中に作成した企業を紹介するポスターを用いて、各班2分ずつのCM風プレゼンを行いました。BGMや芸人のギャグを用いた紹介などもあり、各班の個性が光る紹介となりました。そして、学生200万円、社会人300万円、先生方500万円を持ち、自分が投資(まさにESG投資)したいと思う企業に100万円単位での投票をしました。最終的に投資額の大きかった企業上位三班が表彰されました。ここで、一番投票された企業の概要を紹介したいと思います。その企業は、高齢者人口の増加と大手工場が撤退した地方自治体を想定し、そこで高齢者エンターテイナーの育成を行うというものでした。高齢者が若者から、ゾンビメイクの仕方を学んだ後に、メイクをして廃工場ツアーを行ったり、廃工場を改装してホールとなった空間で高齢者エンターテイナーによるショーやコンサートを行ったりすることで地域の活性化も実現できるとのことでした。その他の班からも自由な発想で地域に適応し、持続可能である企業のアイデアが出され、大変面白く、有意義なワークショップであったと感じています。

 

※参考:参加企業・団体の方々の情報は、こちらで発信しています。https://eco.kyoto-u.ac.jp/?p=4954

 

【全体を通して】

一部・二部で約60名の方に参加していただきました。

この企画は、短い時間の中で、先生・社会人・学生がいろいろな形で深く交流することができたのが良かったと思います。

第一部では、学生が本のエッセンスをまとめて発表し、先生と議論する機会となり、自身の経験から生じた疑問をぶつけて本に書かれていることから一つ踏み込んだ内容に触れることができました。第二部では、社会人と学生が同じ課題について「議論して」発表する形式の中で、単なる自己紹介をする交流会よりも深く交流し、学生は様々なものを吸収できたと思います。学生と社会人が交流することは様々な場面でありますが、ともに議論する場面は少ないので実りある場になったと思います。交流会では先生に積極的に質問をしたり、社会人と学生が発表を踏まえて交流したりしている姿が見られました。

 

企画の反省点としては、全体的に時間が短く、急がす場面が多かった点があげられます。第一部では、参加者からも好評だった学生と先生方の議論の時間の終了を促すことが多くなりました。第二部では時間を意識して濃い議論でうまく進めている班もあった一方で、なかなか本題の議論に移れずに課題の完成に移れなかった班もありました。企画を練る際にもともとの予定を少し絞り、進行の際にうまく調整していく形にしたほうが時間の都合も付きやすかったのではないかと思いました。

多くの方に参加してもらうには時間は短いほうが良いですが、その中で中身を濃いものにするには形式について事前に十分に議論する必要があると思いました。今回は先生のアイデアで形にすることができましたが、少し間違えると時間が短いだけで薄い内容になるので注意が必要だと感じました。

また、終了後のアンケートで参加者からの指摘も多くありましたが、食事が多かったという指摘もありました。今回は、夜まで企画を行うために食事をとることは必須であり、議論する形式の中でも食べやすいように各席に食べ物を準備しましたが、それによって食事時間が伸びて満腹感が出て、食事が余ったように思います。また、男子学生以外が多く参加する会では、一人当たりの食事量をもっと低く見積もるべきだと思いました。なお、残った食事は、全て持ち帰り、以降のミーティング等で全て食べることができました。

企画の進行と食事(フードロス0)の両立については次回開催時により練るべきポイントだと感じました。

 

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京大生協時計台ショップにて、小型家電を回収しています!

3月いっぱい、時計台ショップにて、小型家電を回収します! 壊れた携帯扇風機・イヤホン・モバイルバッテリーなどの身の回りの家電を、家にためていませんか? 試験的な取り組みとして、部屋の整理や引越しで出た小型家電を、 ①時計 […]

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2024年3月1日~2024年3月31日

2024.02.26

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