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【8】真の経済成長は伸びではなくバランス(水野 広祐 教授)

2019.04.13

学び 2019年新入生企画

Goal8「働き甲斐も経済成長も」

水野 広祐 教授(東南アジア地域研究研究所

 

働き甲斐のある社会と持続的な経済成長を実現するために、我々は何を考え、どのように行動すべきなのでしょうか。インドネシアを中心に環境問題や経済発展の研究を行っている、東南アジア地域研究研究所の水野広祐教授にお話を伺ってきました。

 

【Q 水野教授の研究内容を教えてください。】

インドネシアのコンテンポラリーな問題について、土地・労働・資本といった古典派経済的なアプローチを用いて研究しています。

学生時代は京都大学の経済学部にて、東南アジアなどの発展途上国の開発発展論を主に専攻していました。その頃からインドネシアの社会や南北問題などに興味があり、友人とゼミを開いたりしていました。学部卒業後も研究を深めるためにアジア経済研究所に進学し、農村や農業を知らずにインドネシア全体のことを考えることはできないという理由から、インドネシアの農村を研究の中心にしました。

今までの研究によって、インドネシア社会には、慣習法や相互扶助が強いということや全員一致になるまで話し合いを続ける文化があることが分かっています。それらの文化を踏まえつつ、よりよい社会を創っていくにはどうすればいいのか考えています。例えば今、スマトラの泥炭問題についてのあるプロジェクトのリーダーをしているのですが、アブラヤシの生産をどう考えるかとか、それらがもたらす泥炭破壊はどうか、日本との関係はどうなるかとかを中心に見ています。

今後もインドネシア経済の研究を続けていきますが、土地・労働・資本そして環境という問題について、学問的に可能な貢献を行っていくと同時に、解決へ向けた提言やアクションリサーチを行っています。

 

【Q 水野教授の考える持続可能性とはどのようなものですか。】

インドネシア社会の発展の研究を通して見えてきたものがあって、資源がない日本は加工貿易に特化してきたのに対し、インドネシアはメダルの裏側のように資源輸出に特化してきました。

日本は加工貿易の名のもとに、資源を輸入し工業製品を輸出しました。工業製品の輸出競争力は大変強く、貿易黒字がかさみました。その過度な貿易黒字をバランスさせるため農産物を輸入し、さらに超円高にして過度な貿易黒字を減らしました。その結果、日本の農業が衰退し、地方の地場産業も衰退しています。日本には本当は豊かな農林漁業も地方の産業もそれを支える資源もあるのに、現在は利用できなくなってしまっています。

それに対してインドネシアでは、資源を輸出しているため非工業化現象が進んでいます。

この状況は2か国とも持続的とは言えません。しかし、インドネシアは日本ほど徹底的に工業に特化していないから、インドネシアの方が持続的なんですよね。なぜなら、人の消費が多く、輸入できないものは自国で作っていて、それなりに産業の発展があるからです。一方日本は、人口で見ても再生産が難しく、かなり非持続的な社会です。

サウジアラビアは資源国として有名ですが、産業が何もないでしょう。製造も農業もありません。同じようにパプアニューギニアでもオーストラリアの援助があるから外貨的には問題ないけれど、国内産業が全く育ちません。

だから、持続可能とは、国内の産業全体がバランスを取り合っている状態だと考えています。日本の自動車などが輸出ばかりした結果、農業や地方の産業が犠牲になっているのです。一部の大資本の産業は輸出、農業や地方の雑貨産業は輸入という偏重の結果、農業も地方経済もさびれています。それらの産業の衰退の結果、地方に職が少なく人口減少を促進しています。このようなアンバランスの結果、日本の農業や地方経済は今や危機的です。このようなアンバランスを是正するためには、工業も農業もその他の産業も、輸出もするが輸入もする、というバランスを回復すべきです。農業も工業も生産して、輸出して、輸入もする。そうして、農業は農業で、工業は工業で輸出と輸入が釣り合い、過度な円高を是正することにより持続可能性が見えてくるのではないでしょうか。日本の農業も本当は競争力があるのですよ。世界中にある日本食レストランに日本のコメを輸出するなどの方法で農業を発展させ農村に人々がもどってくるようにすべきです。

 

【Q 8番目のゴール「働きがいも、経済成長も」についての考えを教えてください。】

経済成長を考えるなら、持続的なことを大きな視点で考えていかないといけません。日本でいうと、この先若者がどんどん減っていくのに、どうやってこれからの社会を維持していくのでしょうか。成長の在り方自体を考えていく必要があるかと思います。

また、インドネシアでは、民族が様々で考え方がばらばらだから、日本ほど一つのシステムに統一していくことができません。そういったことも考慮しながら労働や成長について再考していく必要があるのではないでしょうか。

 

【新入生に一言お願いします。】

京都大学に来たからには、大きなことを考えないといけません。京大に来たってことは、世界を考える、活躍する入り口に来たということです。

英語がうまくなるのは当たり前だし、英語以外の言語も習得してみてください。グローバリゼーションの世の中、外国の人々と世界のことを考え議論ができるように、京大の学生も発展していくべきだと思います。

京大に入ったことは良かったね、と思えばいいと思います。でも、それが目標で終わってしまうのではなくて、入学できたのは一つのチャンスだと思って、次のステップを考えないといけません。外国には賢い人がごまんといるから、国際社会で世界の人々と同レベルの議論ができるような学生になってください。皆さんが日本の企業に勤めたとしても、同期で入ってくる新入社員は、東大、早稲田慶応、一橋に東工大卒等です。それにシンガポール大とか香港大学・ソウル大さらに清華大学卒も入っていることでしょう。会社に入るや、それらの新入社員との間で熾烈な競争が始まります。その競争に打ち勝つためには(少なくとも脱落しないためには、あるいは「競争」などとは次元の異なった生き方をするためには)、皆さんの知力、体力、語学力、構想力などなどが頼りです。せっかく京大卒なのだから東大、早稲田慶応、一橋卒のようなおりこうさんの常識人とは違ったことを言いましょう。本当な彼ら彼女の中にも面白い人間がいるのですが、それらの人と共鳴するためには皆さんが面白い人間になる必要があります。知にたけ義に奮い立ち、弱い立場の人の気持ちがわかり、、、そして世界の流れを見通し、、。

英語力は入試合格時が最高で後は下がるばかり、、、などとういう情けないことにならないでくださいね。

京大はたくさんチャンスを与えてくれるから、これからが始まりだと思って、あらゆる可能性に対して頑張ってやってみてください。

 

《インタビューを行って》

「働き甲斐と経済成長」というテーマで取材を行いましたが、予想とは全く異なるお答えをいただきました。私はてっきり、途上国の経済を持続させるためには先進国の配慮が必要だとか、そのような話になると思っていました。それが、途上国(今回はインドネシアに限った話ではありますが)よりも日本の方が持続的な経済成長は危ぶまれているという見方があるとは、考えてもいませんでした。

今回のインタビューを通して、経済成長とは何なのか、常識と思っているものを根幹からもう一度考え直す貴重な機会をいただくことができました。日本の軸で世界を見ると、その国々の事情や文化、考え方を見落としてしまう恐れがあります。働き甲斐も経済成長も、答えが一つあるわけではなく、それぞれの地域が自分たちの持続性を考えていかなければいけないと思いました。

貴重な時間をインタビューのために割いていただき、また熱く語ってくださった水野教授に感謝申し上げます。(高田咲)

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