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問う!

原発事故被災地支援とリスクコミュニケーション【解説追加】

角山 雄一/環境安全保健機構放射性同位元素総合センター・助教

原発事故被災地の住民における最大の健康不安は主として発がんと遺伝影響である。しかしこういった不安を持つ方々に対して明瞭に答えられるような科学的知見は得られていない。この問題を解決することができる唯一の方法は、十分なコミュニケーションに基づいた放射線リスクについての情報交換と、放射線についての基礎科学知識の普及である。コミュニケーションがなされるべき対象は、市民と政府との間、市民と専門家との間、それに分野の異なる専門家間など多岐にわたる。またこのようなコミュニケーションが成立する前提として、科学的データに基づいた放射線リスクの認知が重要である。しかしその実現のためには課題が山積している。

 


 

人体への放射線影響を評価する際には、原爆被爆のような一度に大量の放射線を被ばくする場合と、長期に低い線量の放射線を慢性的に被ばくしつづける場合とは、明確に区別すべきという前提がある。しかしその違いを確かな数値や理論で明示することは容易ではない。
◆自然環境中の放射線量をご存知ですか?

自然環境中の放射線による年間の被ばく量は、世界平均でひとりあたり2.4ミリシーベルト。日本国内では平均2.11ミリシーベルト。ところが人間には放射線を感知するセンサーが全くないので、自分の身の回りには放射線なんて全くないものと思い込みがちである。たとえば線量率計を携行して京都市内を歩いてみると、だいたい1時間あたり0.04~0.09マイクロシーベルトの間を示す。こういった自然放射線の半分は宇宙由来、もう半分は大地由来なのだが、さてこの自然放射線は人体に悪影響を及ぼすのだろうか?このような低い放射線が遺伝子に突然変異を起こす確率は科学的にわかっているのだろうか?こういった突然変異は遺伝病などの原因にもなり得るのだろうか?あるいは、長い目で見れば生物の進化のきっかけにもなるはずなのだが、生物進化に対する自然放射線の寄与率はどのくらいなのだろうか?実はそんな基本的なことすら未解明なのである。

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京都市内、緑は毎時0.1マイクロシーベルト以下だがけっしてゼロではない(HORIBA社Radi PA-1100で測定)

 

◆原発事故被災地の人々はだいじょうぶなのだろうか?

一度に大量の被ばくをした場合に何が起こるのかについては、原爆被爆という悲しい過去の記録から相当なことが明らかになっている。人は7000ミリシーベルトの放射線を一度に被ばくすると1カ月以内に死亡する。またその半分くらいでは5割の人は亡くなり、たとえ生き延びたとしても脱毛や不妊など様々な症状に襲われる。また、100ミリシーベルトを超えると数年~数十年後にがんで死亡するリスクが被ばく線量に応じて高まっていく。

事故から5年たった現在、福島市内を前述と同じ線量率計を持って散歩すると毎時0.1~0.5マイクロシーベルトである。事故直後はもっと高い数値であった。また、第一原発に近づけば年間20ミリシーベルトを超える区域もある。この数値は国際的な基準に基づいて判断された帰還の判断基準値(福島県庁復興情報ポータルサイト「避難指示区域の状況」(http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list271-840.html)なのだが、年間20ミリシーベルト以下ならぜったい安心だと考える市民はほとんどいない。

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福島市内(2015年3月15日にHORIBA社Radi PA-1100で測定)

 

◆低線量の放射線、どこまでなら被ばくしてもだいじょうぶなのだろうか?

東京電力福島第一原発事故をきっかけに、我が国の物理・生物・医学・疫学などの研究者が分野をこえて協力しあい、低線量の放射線を被ばくし続けた場合の人体への影響について科学的に明確にしようという取り組みがはじまっている(低線量放射線研究会http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~manabe/project.html)。その成果のひとつとして、最新の数理モデルの提案もなされている。現在も長期低線量率被ばく影響の真相を究明しようという努力が続けられている。ただしその答えが出るまでにはまだまだ時間を要するであろう。

こういった科学的な挑戦を続ける一方で、現実的に着実に進めていかなければならないこともある。すなわち放射線教育とリスクコミュニケーションの拡充である。我が国では長い間、小中学校や高等学校の学習指導要領において理科分野で放射線をとりあげることは不要であった。その結果、放射線は自分たちの生活空間には存在していないもの、放射線は特別に汚い危険なものという誤解が広まってしまった。いわゆるゼロシーベルト、ゼロベクレル幻想である。こういった状況で原発事故が起きた結果、過度の不安や無用な風評被害が広まり、今もこれらへの対策のために膨大な国家予算や人員が割かれている。現在、放射線のリスクについて多角的に考えることができる人材を育成するためのカリキュラムの作成や教材開発などが進められている。たとえば我々の研究グループの活動の一部を紹介すると、福島の小学校で全学年を対象とした放射線基礎学習講座(NPO法人ハートフルハート未来を育む会「活動の記録」http://heartfulheart.com/福島市立庭坂小学校にて、ふくしまの子ども希望/)を開催した。また最近、京都市の小中高理科教諭やゲームデザイナーと連携して子供を対象とした放射線カードゲーム(Tansan&Co.「ラドラボ」http://www.tansan.co/radlab/)を開発した。今後もこういった取り組みは継続していきたいと考えている。

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子供たちが楽しみながら放射線の基礎が学習できる全国初の科学教材「ラドラボ」

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「ラドラボ」で学ぶ原発被災地(富岡町)の子供たち

原発事故から我々が学ぶべきことは何だろう?今回の惨事の前に欠落していたことがきっとあったはず。少なくともそのような反省にまずは立つべきであろう。

 


 

【一押し情報】

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「放射線必須データ32 被ばく影響の根拠」 創元社

田中司朗、角山雄一、中島裕夫、坂東昌子、一瀬昌嗣、宇野賀津子、口羽文、田栗正隆、竹内文乃、中村清一、樋口敏広、廣田誠子、松田尚樹、真鍋勇一郎著