- プラスチック削減「みんなのプラ・イド革命」
【京大FRaU共創企画 報告(2020年夏)】みんなのプラ・イド革命 超SDGsリーダーの大編集会議『かばんの中から世界を変える、はじめかた。今日、京からできる10のこと』 - SDGs KYOTO TIMES
京都から世界にSDGsを発信する情報プラットフォーム《SDGs KYOTO TIMES》。1,300年の歴史を持つ京都は、町や暮らしを持続させる知恵の宝庫です。各所で始まっている「次の千年に向けた京都のSDGsの取り組み」を発信しています。
2021.01.07
プラスチック製品や廃棄物の適切な管理、マイクロプラスチック問題が国内外で大きな課題となっています。様々な政策が検討され、導入が進められていますが、プラスチックの持続可能な利活用システムの構築に向けては、多様なステークホルダーが情報共有し、理解を進め、様々な行動変容を進めねばなりません。
そこで、身近な取り組みから始められ、かつ今後につながる方法はないかと考え、2020年の夏に、オンラインでの学習・討論プログラムを企画・実施しました。大学と女性雑誌(講談社発行FRaU)という異例のコラボレーションということもあり、注目を集め、公募により、中学生から80歳以上のシニアまで、多様な立場の方々(特に、職場・コミュニティでリーダーとして取り組みを牽引することが期待される方々)が200人以上参加してくださり、テーマ別に約20のグループに分かれて、議論や検証を行ってくださりました。
ここでは、2カ月以上に渡る共創企画の成果をご紹介したいと思います。なお、本取り組みは、全国日本学士会「ACADEMIA No.178(2020.10)プラスチックと持続可能性 ~多様なステークホルダーによる共創の試み~」としてまとめ、発行して頂きました。
・提案『かばんの中から世界を変える、はじめかた。今日、京からできること』
【提案『かばんの中から世界を変える、はじめかた。今日、京からできること』】
約20のグループから「世界を変えるための提案」がなされました。1分プレゼンテーション動画をこちら(https://www.youtube.com/watch?v=oGnCuoHRZ5s&t=11s)からご覧いただけます。スライドには、次からアクセス頂けます。
★提案リスト★
③京都らしいお土産包みはどこにある?
⑨Less Plastic, More Tasty.お弁当をエコにおいしく楽しもう!!
⑫#lady_action> 女性だから世界を変えることができる。
⑮「attraction→attachment→action」
2020年7月4日のオンラインイベントでは、zoom参加者がブレイクアウトルームにて、グループに分かれて討議している間、編集リーダー(パネリスト)によるトークセッションを、YouTube視聴者向けに実施しました。テーマ及び登壇者は、3つに分け、プラスチックのみならず、広く環境配慮やSDGs・持続可能性に関連したものや、職場やコミュニティでどのように広げるかといった組織・リーダー論にまで及びました。
当日の様子はこちらからご覧いただけます。https://www.youtube.com/watch?v=N6cWfCBJTlQ
◆現場の対話からの変革
- 趣旨:プラとの持続可能な関係性構築には、一人ひとりの理解と協力が欠かせない。社会全体としての最適解を見出すことは簡単ではないが、コロナ禍においてもフル稼働してきた、医療や小売、行政の現場においても、変革は進んできた。逆に、一致団結して、取組が進んだ事例もある。今こそ、弛まず知恵を絞り、努力を重ねる…変革に向けた想いを新たにできるセッションとする。
- 登壇者:
〇矢野阿壽加(洛和会ヘルスケアシステム専務理事・医師)
〇釣流まゆみ(セブン&アイ・ホールディングス執行役員)
〇齋藤久也(京都市総合企画局総合政策室 SDGs・レジリエンス戦略課長)
〇聞き手:酒井伸一(京都大学教授)
◆海・暮らし・京都からの変革@京町家「杉本家」
- 趣旨:プラは、海洋プラ問題から大きく認知され、世界的なムーブメントを起こしている。他方、海から遠い街や暮らしからは、どんな貢献ができるのだろう。天然素材を使いこなしてきた京都からの発信は、世界を変えることができるのだろうか。今日、京から始める変革について語らうセッションとする。
- 登壇者:
〇井植美奈子(セイラーズフォーザシー日本支局理事長)
〇杉本節子(京町家「杉本家」)
〇聞き手:関龍彦(講談社「FRaU」編集長)
◆リーダーによる変革
- 趣旨:変革には、正しい情報の共有と、様々な形での推進が必要であり、それを確かにするリーダーの存在が重要である。それぞれの形で、SDGsを牽引するリーダーの方々による、元気と勇気をもらえるセッションとする。
- 登壇者:
〇太田康子(リコージャパン)CSR女子コミュニティ「CSR48」総監督。
〇小谷美樹(積水ハウス)活躍する女性をたたえる「大阪サクヤヒメ」のSDGs研究会の代表。
〇岩井正人(日本マクドナルドCSR部マネージャー)
〇聞き手:石川淳哉(social good producer)
そもそも京都大学とFRaU等との企画を検討し始めたのは、2019年12月ごろであり、2020年3月14日に、京都大学にて実施する参加型シンポジウム「500人の大編集会議 ~かしこくプラスチックと付き合うために~」として準備を進めていました。ところが、コロナ禍で、オンサイト企画の実施は断念せざるを得なくなりました。しかし、イベント開催予定日(2020年3月14日)に集まった登壇者及び関係者の議論の中で、入念に準備してきた企画であり、オンライン等の形で実施すべきとの話になり、一部企画を練り直して、実施することが決定しました。実施時期は準備や参加者募集なども考えて、7月とすることになりました。再企画にあたって苦労・工夫したのは、やはり、オンラインの課題を克服し、利点を活かすことです。まだオンラインイベント・活用に慣れていない時期から企画を始めたこともあり、まずは小さなオンライン企画を実施してみたり、自分たちで積極的に活用してみたりするところから始め、徐々に使いこなせるようになっていきました。オンラインとなると、特定の日時に京都まで足を運ぶことが難しい方々にも幅広く参加を呼びかけることが可能となり、また若い世代の参加も見込まれるようになったのは利点だったと思います。実際に、参加者は九州から北海道まで、また世代は、中学生からシニア層まで、多岐に渡りました。予期せぬ企画変更(進化)として一番大きかったのは、1度きりのシンポジウムで終わるのではなく、1回目にテーマ設定とグループ討議を行なった後、一定の活動期間を置いて、再び集まって検証を行い、提案につなげてもらうような2回シリーズのプログラムにした点です。これも、オンラインでのコミュニケーションを基本としたこともありますが、準備期間が延びて、主催者と編集リーダー(パネリスト)が活発に議論を重ねたことによる進化の側面も大きかったと思います。
内容についても、インパクトがあり、具体的で、定量的な評価にもつながる提案にするための工夫が必要との助言を受け、次のような事前準備を追加(改善)することとしました。
- 参加者には、事前にプラスチック問題の基本(FRaU掲載記事、京都大学プラ・イド チャートや「かばんの中のプラ」の動画解説等)を学んでおいて頂くと同時に、自分のかばんの中に入っているプラスチック製品について写真撮影及び記録・カウント(所定のエクセルシートを活用)しておいてもらう。なお「かばんの中のプラ」については、終了後にも、記録・カウントを依頼する。
- あらかじめ、主催者(エコ~るど京大の学生ら)が、かばんの中のプラスチックと対策について検討し、討議テーマに相応しいものを抽出しておく。
- 第一回目のグループ討議時に、具体的な議論が進むように、あらかじめ、主催者(エコ~るど京大や浅利研究室学生ら)が、討議テーマに関する基礎情報(課題や対策の実態や関連するデータ等)を取りまとめておく。
- グループには、社会人ファシリテーターと学生ファシリテーターを置き、ブレイクアウトルームでの討議やその後の連絡等がスムーズに進むようにする。
このような準備や議論を進めながら、6月中旬より、参加者の募集を始め、応募者には順次、事前学習の依頼を進めました。募集時に、ファシリテーターの募集も行いましたが、予想外に多くの方が立候補してくださり、一同大変感激しました。
テーマについては、エコ~るど京大の担当メンバーらが、自分たちや編集リーダーの「かばんの中のプラ」(後述)や各種プラ対策の発信例などを参考に、下表に示す14を設定しました。ファシリテーターや参加者には、事前に希望するテーマを確認し、できるだけ関心にあったグループに配置させて頂きました。
最終的には、約200人が参加し、22のグループで(14のうちいくつかは2グループに分かれて)グループ討議を進めることとなりました。なお、第1回目のオンライン全体会合までの間、編集リーダーとの議論やオンライン動作確認はもちろんのこと、ファシリテーターや一般参加者とも、複数回にわたって説明会やオンライン動作確認を行いました。
オンラインの全体会合は7月4日と8月1日の2回で、それぞれ、全体討議・発表と、テーマ(かばんの中のプラ製品別の対策など)に分かれてのグループ討議を行って頂きました。この2回の間に、同じグループ内で活発に情報交換や活動を行ったところもありました。また、一連の取り組みの前後には、各自、かばんの中のプラの記録・カウントを行って頂き、Before Afterについて検証しました。
「かばんの中プラ」について設定したテーマ
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ターゲットとなるプラ製品と代替品 その現状や課題 |
【1】プラの代わりに「京都」をつめこもう! |
• ターゲットプラ:小物類 • 代替品:天然素材の京もの(組紐、京扇子、風呂敷、手ぬぐい・・) • 現状や課題:高い/存在を知らない/日常的に使いこなせない |
【2】京都らしいお土産包みやお土産を探そう! |
• ターゲットプラ:お土産の(過剰)容器包装、レジ袋/プラ製のお土産 • 代替品:ミニマムな容器包装、リユースできる容器包装/天然素材のお土産 • 現状や課題:あまり選択肢がなさそう/個包装の利点(衛生面、持ち運び、保存性、魅力、丁寧) |
【3】カード類をオンライン化しよう! |
• ターゲットプラ:キャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード、会員カード、免許証 • 代替品:カードレス、紙製?漆? • 現状や課題:セキュリティ/邪魔臭い/そもそも使っていないものも多い?/発行者の差別化 |
【4】財布をサステイナブルに変えてみよう! |
• ターゲットプラ:化繊財布 • 代替品:天然由来(ビーガンレザー、革、紙、コルク)の財布、お札クリップ、小銭用巾着袋 • 現状や課題:どんな素材のものがあるか?強度、使い勝手、認知 |
【5】マイバックをもっと活用しよう! |
• ターゲットプラ:レジ袋 • 代替品:マイバック、エコバック、ふろしき、バイオマスプラ製レジ袋 • 現状や課題:わかっているようで、まだ謎もある!推進は進んでいるはずだが、利用率や枚数は?地域差は?マイバックも眠っていない?忘れる。エコバックは流通しているのか?風呂敷はどこまで使える? |
【6】お弁当箱を利用して、食事をエコに楽しもう |
• ターゲットプラ:プラ容器包装の中食/プラ製のマイ弁当箱 • 代替品:紙、木、革、パルプ等でできた中食の容器包装/天然素材のマイ弁当箱 • 現状や課題:コンビニなどで買うとプラだらけになりがちだがお弁当を作るのは面倒/弁当箱もプラ製が便利。保存性、利便性、衛生面。 |
【7】マイボトルをもっと普及させよう! |
• ターゲットプラ:PETボトル • 代替品:マイボトル • 現状や課題:利用率低い、準備が面倒。マイボトルの廃棄、循環。 |
【8】生理をサステイナブルに楽しもう |
• ターゲットプラ:生理用ナプキン • 代替品:月経カップやショーツ等 • 現状や課題:ナプキンが主流であり、代替品はあまり広がっていない/使うのが怖い/そもそも知らない |
【9】化粧品をエコに代替させよう! |
• ターゲットプラ:化粧品容器 • 代替品:エコ容器(詰め替え等) • 現状や課題:個数が多くなるがプラ容器が多い/ほかに選択肢はあるのか?量り売りは? |
【10】こだわり文具を見つけよう! |
• ターゲットプラ:プラ製文具 • 代替品:天然素材の文具や詰め替え式のもの • 現状や課題:ボールペン等の便利さを凌駕するものがないか?認知、安価 |
【11】今日からあなたのお供(お菓子)はこれだ! |
• ターゲットプラ:お菓子の過剰な/個別のプラ製容器包装類 • 代替品:ミニマムなプラ容器包装、リユースできる容器包装、天然素材の容器包装 • 現状や課題:個包装の利点(衛生面、持ち運び、保存性、見栄え) |
【12】バイオマスプラのこと、知って適材適所を探そう! |
• ターゲットプラ:バイオマスプラ • 現状や課題:バイオマスプラの正しい理解が進んでいない。生物由来?生分解性?最適な使途やロードマップは? |
【13】世界を驚かそう! |
• とにかくユニークな代替品を発掘する! |
【14】広げよう! |
• 「かばんの中プラ」運動を広げる • 現状や課題:ここに集まったのは、とても熱心な層。広げることが重要! |
グループワークや、そこから派生した活動、個人の行動変容などについてもご紹介します。
第1回目のオンライン全体会議(7月4日)では、zoomのブレイクアウト機能を用いてグループに分かれ、13:30-15:45の間、自己紹介やテーマ確認の後、討議が行われました。その後の報告では、議論の様子が楽しそうに報告され、その後につながる手応えを感じました。
第1回オンライン全体会議の終了後、第2回までの約1カ月間は、第1回目の議論に基づいて、グループや個人での活動が展開されました。グループや個人によって関与や取組レベルは異なっていたようですが、熱心な取り組みや、所属する組織(職場や学校など)に持ち帰って活動を広げる例(福岡県立三池工業高校との取り組み「文具からプラスチックを削減するには?!」 https://eco.kyoto-u.ac.jp/?p=7177 )も見られました。主催者としては、ファシリテーター等を通じて、各グループの進捗の把握に努め、適宜、活動支援も行いました。
第2回のオンライン全体会議(8月1日)は、13:00-14:00にzoomブレイクアウトルームでのグループ討議、14:00-15:00に大編集会議(各グループからの発表及び投票)、15:00-16:00に投票結果や取組の講評(14:00-16:00はzoomに加えYouTubeでもライブ配信)を行いました。グループ討議では、この間の取り組みの共有や、それらを踏まえて1分間のCM風にまとめるための準備が行われました。その後のグループ発表は、ユニークで魅力的な提案が、テンポよく展開され、合間に入る編集リーダーからのコメントもアクセントとなり、YouTube視聴者からも、高い評価の声が寄せられました。その発表の中から、『もっとも世界を変えられそうなもの』として3つを選ぶこととなりました。1つ目は、参加者全員の投票により選ぶ総合第1位であり、200人以上のネット投票により、「Plastic-minimalistな日本人になろう!(24班)」に決まりました。2つ目は京都大学賞であり、酒井教授が代表して「SDGsで明日を見上げる京土産(2班)」と「プラ削減!風呂敷から風呂敷を広げよう!(21班)」を選ばれました。最後はFRaU賞であり、関氏と石川氏が「マイボトルでダイエット!!(11班)」を選ばれました。
投票結果を待つ間には、個々人で取り組んで頂いた「かばんの中のプラ」のBefore&Afterの変化に関する結果として、個数の変化や取組内容等が、速報的に紹介されました。Beforeでは平均約50点あったプラ製品が、Afterでは平均約40点となり、取り組みを通じて、見直しが行われたことがわかりました。
年代も立場も超えた多様な方々と、「かばんの中のプラ」という一つのテーマを通じて、情報・意見交換することができ、プラスチックに関する情報・知見の周知レベルや生活者の意識・行動の実態など、主催者としても、多くを学ぶことができました。また、グループ発表の内容は、すぐさま社会に発信して行動に移せるようなものから、将来的にじっくり取り組むべき課題が浮き彫りになるものまで、甲乙つけがたいものばかりでした。今後、これらを拡大し、社会実装につなげるべく、成果物の整理と検証を進めているところです。
オンラインによる今回のような展開にも手応えを感じました。参加者がリーダー的な立場にある人であり、そもそも意識・行動レベルが高い層であったこともさることながら、事前の学習素材の共有や、ファシリテーターによる円滑な運営も功を奏し、短時間ながら密度の濃いプログラムになったと考えられます。
コロナ禍にあっても、むしろコロナ禍だからこそ、グリーンリカバリーを念頭に、プラスチックとの持続可能な関係性構築についても、取り組みを加速しなければなりません。今回得られたヒントやネットワークも活用し、一助となるような取り組みを継続・発展させたいと考えています。
なお、本企画は当初、2020年3月に京都大学にてシンポジウムとして実施予定であったものを、企画内容から大きく進化させて展開したものです。登壇予定であった約10名のパネリストの方々には、編集リーダーと称して、企画立案からトークセッション、オンラインイベント当日の進行、各グループへのご助言まで、多大なるご支援・ご協力を頂きました。また、本企画は、東京大学FSI-日本財団海洋プラスチックごみ対策プロジェクト及びヒューリック㈱支援SDGsプロジェクトの一環としても実施したものです。これらの皆様を始め、お世話になった多くの方々、スタッフ及びメンバーに、この場をお借りして、厚く御礼申し上げたいと思います。
※下記タイトルをクリックしていただくと資料がご覧いただけます。
京都から世界にSDGsを発信する情報プラットフォーム《SDGs KYOTO TIMES》。1,300年の歴史を持つ京都は、町や暮らしを持続させる知恵の宝庫です。各所で始まっている「次の千年に向けた京都のSDGsの取り組み」を発信しています。