基礎データ(2008-2009)
イエール大学はニューヨークから北東120キロ,ボストンから南西240キロのコネチカット州ニューヘブン市に位置している.アメリカで3番目に古い大学として知られており(創立1701年),キャンパス内は中世のゴシック様式の歴史ある建物が立ち並んでいる.またアメリカ東部を代表する名門私立大学として人文科学,社会科学,自然科学などの多く研究分野で高い評価を受けている.13000人の学部生,大学院生は米国50州及び110カ国以上の国から構成され,ニューヘブン市一画で寮生活を営み,寝食をともにしている.
●イエール大学の環境面での取組
イエール大学は2004年,再生可能エネルギーの導入,温室効果ガス排出量の削減を目的として学生,教職員から構成される「エネルギー委員会」を組織した.2005年には「温室効果ガス排出量削減戦略」を策定し,2020年までにCO2排出量を1990年比10%削減(2005年比で43%低減)という長期目標を定めた.
近年,CO2排出量は減少し続けており,2008年には2005年比で延床面積が3.2%増大したにも関わらずCO2排出量7%削減を達成した.
●CO2排出量削減のための取組
イエール大学では化石燃料の使用を控え,太陽光パネルの導入,風力発電による再生可能エネルギーの利用,また発電所の排熱を冷暖房に有効活用したコジェネレーションなどハード面における取組が積極的に行われている.
一方で学生,教職員の環境意識を向上させるためにソフト面において,日本の大学には見られないユニークな取組が数多く行われている.ここでは(1)WEBサイト利用した環境配慮行動の促進,(2)寮生の環境教育の2点について紹介する.
(1) WEBサイトを利用した環境配慮行動の促進
☆ Sustainability Pledge(サスティナビリティ宣言)
「Sustainability Pledge」とは学生,教職員が環境配慮行動の実施を自主的に「宣言」するホームページであり,京都大学が取り組む「エコ宣言」のモデルでもある.
「宣言」の際,学生,教職員はハンドルネーム,メールアドレス等を登録し,環境配慮行動のチェックリストに「これから実施する」を3つ以上チェックする.
宣言者はアクセスの度,前回のチェックリストの記入状況を確認し,達成度を自己申告する.また宣言者には定期的に環境情報を載せたニュースレターが届く.
このように「Sustainability Pledge」では「環境コミュニティ」を形成し,組織による環境配慮行動の実施を促している.
☆ モニタリング
イエール大学では2005年度から寮全体の毎年のCO2排出削減量に応じて寮生の電気代を大学が負担する「グリーン証書制度」を導入している.「Energy Conservation」はこの制度を基に毎年の寮全体のCO2排出量を2005年度からの削減量の形で公表している.カレッジごとのCO2排出量をランキング形式で表示し,寮生に環境配慮行動の実践を指南している.
URL????http://java.facilities.yale.edu/cmp/energy.jsp
(2) 寮生の環境教育
☆ STEP(The Student Taskforce for Environmental Partnership)
STEPとは,寮生に環境教育を行っていくための組織である.STEP?のメンバーはすべて学生であり,ディレクター2人,コーディネーター24人で構成される.コーディネーターは12のカレッジに2人ずつ派遣され,それぞれのカレッジでヒーター,OA機器への環境配慮行動,またごみの減量化,リサイクル活動を推進する.またコーディネーターが大学から仕事を有償で引き受けているのも特徴である.
●参考文献
- イエール大学??Office of Sustainability
- http://www.yale.edu/sustainability/index.html
文責:小松 三久(工学研究科修士課程)