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Goal01「貧困をなくそう」(田中千尋)

2020.04.16

学び 2020年新入生リーフレット

こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。

 

 

インタビュー日:2019年12月20日

回答者:田中千尋(京都大学農学部3回生/エコ~るど京大)

 

 

Q:Goal01「貧困をなくそう」の中で興味のあるテーマは何ですか?

 

人の貧困エピソードを聞いたとき相談を受けたとき「わかる」とか「自分も人と比べて裕福じゃなくて少し寂しい思いをしたことがあったけど乗り越えてきたよ」といったように、なぜかわからないけど自分の持っている経験を一種自慢のように言い返してしまうということがあります。しかしそれには何の意味も無いのではないでしょうか。ここには他人の苦しみを自分の中の尺度で捉えてしまうという問題があると思います。

 

 

Q:どうしてそのことを「問題」だと思うのですか?改善の余地があるようなネガティブなニュアンスを含む言葉で表現したのですか?

 

途上国では絶対的貧困が一番にありますが、日本のような先進国では絶対的貧困より相対的貧困が今、課題としてあります。相対的貧困では、その人の環境が他の人と比べて経済的に劣っているとその人自身が感じているかどうかが貧困の基準になるのではないでしょうか。その相対的貧困っていうものをこれから社会の中で解決していかなければならないというときに、他人の貧困問題を自分の尺度で捉えて簡単に返事をしてしまうことは、その人たち、貧困を感じている人たちを理解していないということではないでしょうか。相対的貧困を解決するには社会制度もあると思いますが、やはり人と人の間のコミュニケーション、理解が重要なのではないかと思います。そういう中でどういう意識をもって相対的貧困を持っている人たちに向き合うか、このことについてこれから考えていかないといけないと思っています。

 

 

Q:そのテーマに興味を持つきっかけは何でしたか?

 

1回生の時に友達とルネ(大学生協のカフェテリア)で貧困について話していたのですが、その子が社会的にどれくらいの経済状況なのかはわからないけれどその子は自分が他人より経済的に劣っていると感じていました。「自分が自身の経済的劣等感を打ち明けるとそれに対して大半の人はあたかも『私もあなたの気持ちを理解しているよ』と自分の貧困エピソードを話してくることにすごくイラっとする」とその子が言ったのを聞いてなるほどと思ったのがきっかけです。

また、NHKで取り上げられていた貧困女子高生の話もきっかけの一つです。相対的貧困がテーマとされた番組内で、相対的貧困に悩む家庭への訪問映像に子供部屋にあるアニメのフィギュアなどが映り込んでいた。その後視聴者によってその子が1000円のランチに何回も行っていた、同じ映画を何回も見ていたといった情報が掘り出され、「全然貧困じゃない」と炎上してしまいました。1000円ランチがその子にとっては必要だったのかもしれないし、同じ映画を何回も見ることもその子にとっては必要なことなのかもしれない。そういう貧困の尺度は人によって違うのだ、と意識したこともきっかけの一つかもしれないです。

 

 

Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「貧困自慢」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?

 

解決はしないと思います。まず、相対的貧困っていうものはなくなりそうにないと思います。そして人のつらいエピソードを聞いたときに自分のつらかった経験を重ね合わせ自分の経験を言うことで他人を励まそうとすることは人間の本質ではないでしょうか。だからそこはなかなか変えられないと思うけれど、もうちょっとちゃんと(主観的な尺度ではなくて)その人自身の思いや考えを理解していくようになってもいいのではないかと思います。

 

 

Q:達成に向けて2030年までって長いですか?短いですか?

 

私が望んでいることに対して明確なゴールがなく、ゴールが存在するものでもないのでそもそも達成しているかどうかわからないです。だから理想とする2030年の状態が明確でなく、達成に必要な期間も同様に想像できないです。

 

 

Q:「貧困自慢」問題に取り組むにあたって主体はどこにあると思いますか?

 

相対的貧困が存在している社会。途上国とか全体的貧困が問題となっている国というよりかは先進国や私たちみたいな国の問題ではないか思います。主体となるのはそういう国の人全員ではないでしょうか。

 

 

Q:上の質問で挙げていただいた「主体」と「自分」にはどのような関係があると思いますか?

 

私は経済的劣等感を感じていないのでどちらかといえば真剣に考えなければいけない立場ではあると思います。「貧困自慢」問題の被害者となる人は相対的貧困に喘ぐ人たちなので気づかない間に加害者になっているのは実際そんなに劣等感を感じていない人やシリアスに感じてない人、だから他人から相対的貧困の相談をもちかけられたときに軽率な言葉を良かれと思ってかけてしまう。その人自身は自分のことを貧困だと思っていても、ちょっとでも他人の貧困の基準から外れていると他人の尺度ではその人は貧困ではないために簡単にバッシングされてしまう。

 

 

Q:そのテーマに向き合ったときに「SDGs」はどのように関わりそうですか?

 

SDGsは関係なくはないけれど、皆が今言ったことを意識することで貧困がなくなるかというとそうではないですね。だけど何が貧困かっていうのがわからないと「貧困をなくそう」の「貧困」が何なのかわからないし、何に対して取り組むべき問題かがわからないのではないでしょうか。だからそもそも貧困とは何かを考えるためにみんなの貧困尺度が違うことを意識するのかなと思います。貧困をなくそうと取り組んでいるけれど、もしかしたら貧困をなくそうって言っている側の人が気づいていない貧困っていうものが存在しているかもしれない。「貧困自慢」問題について考えることがゴール達成に直接寄与するかはわからないけれど、これはSDGsの前提(Prerequisite)として知っておくべきではないかと思います。

 

 

Q:最後に、Goal01を一言でいうと何ですか?

 

「Prerequisite―貧困は他人に判断できない」

 

他人が貧困かどうかはこちらが判断する問題ではありません。一人ひとりの生きづらさを尊重し向き合うことが大切です。そのため、Goal01「貧困をなくそう」を考えるにあたっては、まず「貧困は他人には判断できない」ということを前提条件(prerequisite)として認識しておくべきではないでしょうか。

 

 

(以下白井よりコメント)

ありがとうございました。

インタビューさせていただきながら私自身経済的に不自由のあまりない恵まれた身分であるのに、なんとなくお金持ちだと思われるのが嫌で、日々節約生活を送っているとお金がないと嘆く友人に語ってしまったような気がして、心がざわざわと少し緊張しました。「解決すべき『貧困』とは何か」。確かに家を持てなくなってしまった人、明日食べるものにも困っている人、こういった多くの人が貧困状況だと直感できる事例は数多く存在する。それは事実であり、誠実に向き合い解決していこうと志向している人がたくさんいるだろう。しかしお金をかけずに生活することだけを重視するのであれば、田舎の安い土地で遠出せず外食せず娯楽もなく…、食べ物を作ってそれを食べる、こういったことにだけ集中した自給自足の生活をすることではないだろうか。しかしその人は何のためにそういった節約生活を送るのか、生きるのに使うお金はどこから得られたもので、その人はどんな目的をもってどういうことを考えながら生きるのか。これはまさに自然権や生存権といった類の議論ですね。貧困を解決するというのは所得やお金の話だけではなくて、人間が生きるのにどういうことが望ましいとされてしまっているか、普段はわかりきっているかのように見えるけれどもいざふたを開けたら中身は空っぽで自分で詰めていかなければならない、そういった領域に存在しているのだと強く実感させられました。

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