文責・清水
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「かわいい花をつける木、ありませんか?」
トウネズミモチ
学名 Ligustrum lucidum Ait. モクセイ科イボタノキ属
開花時期 6~7月
@北部構内 農学部総合館南側
トウネズミモチ、そんな名前の木なんか聞いたことないって。そんな人がほとんどなのではないでしょうか?名前は聞いたことないけど、でも、意外に身近にたくさん植わってるかわいいトウネズミモチ、ぜひ見つけてみてください!お花についてはへぇ☆☆で解答しています!
ちなみに、トウネズミモチとネズミモチは、「常緑樹」ではめずらしく、葉っぱが2個対になって生えている木です。結構見つけやすいので、葉っぱも見てみてください!(ふつうは互い違いに葉っぱがつくことが多いです)
へぇ☆「めちゃめちゃいる外来種!」
トウネズミモチの名前の由来は「トウ」+「ネズミモチ」です。
「トウ」の漢字は唐、昔の中国を指します。トウネズミモチは明治初期に中国から渡来しました。ネズミモチ、はこれはまた別の種類の木です。へぇ☆☆で説明しています。外国からやってきた木、ということで、日本の生態系を脅かすおそれがあり、総合的に対策が必要な外来種の重点対策外来種リストにあげられています。
全国の高速道路に植わってる木の本数では、トウネズミモチは低木のうち第4位、一般道路では低木のうち第14位にランクインするほどの人気さ。道路に植えられるということは粉塵などにも耐えられる強い木ということです。きっとあなたの街にもあることでしょう。
へぇ☆☆「ねずみの糞みたいな実、スケスケの葉っぱ」
トウネズミモチの仲間の木、ネズミモチ(Ligustrum japonicum モクセイ科イボタノキ属)の名前は、葉がモチノキ(Ilex integra モチノキ科モチノキ属)という木に似ていて、黒っぽく小さい果実がネズミの糞のように見える、というのが由来です。同じように、トウネズミモチの実も黒く、ネズミの糞のよう。街中で見れば一目で見分けがつきますね。
花が咲いているのはこんな様子で、名前の由来の実にくらべるととてもかわいらしくありませんか?梅雨の時期にちょうど咲く花、雨の中を彩ってくれる花です。
トウネズミモチとネズミモチの見分けは、次の2つのポイントがあります。
①トウネズミモチの葉っぱは透け透け
葉を光に透かすと(透かさなくてもわかりますが)、トウネズミモチは真ん中だけでなく横に広がる葉脈(側脈)まで透けて白く見えますが、ネズミモチは真ん中の葉脈(主脈)とちょっとしか透けません。
トウネズミモチは透けるけど、
ネズミモチは透けない
②トウネズミモチの実は小さい
トウネズミモチは6cmほどの少しだけ楕円形の実をつけるのに対し、ネズミモチは長いほうの直径が10cm、短い方が6cmのかなり縦長な楕円形の実をつけます。そのサイズも、トウネズミモチのほうがずっと小さいです。
へぇ☆☆☆「古参勢より人気者」
トウネズミモチはネズミモチよりも、いろいろな種類の多くの鳥に実を食べられている、という研究結果があります。50m程離れたトウネズミモチとネズミモチの木にやってくる鳥を観察する、という方法で行われました。結果として、トウネズミモチにはヒヨドリ、メジロ、シジュウカラ、キジバト、ウグイスの5種205羽が観察されました。それに対しネズミモチはヒヨドリ、キジバト、シジュウカラの3種19羽と、圧倒的に少なかったのです。
へぇ☆☆で述べたようにトウネズミモチの実が小さいことが、その理由だと考えられています。鳥類は歯がないため、食べる果実が口よりも大きいか小さいかは、採食の際に重要です。小さい実は、メジロやシジュウカラなどネズミモチでは見られなかった鳥でも食べられる大きさなのが理由かもしれません。
あんまり有名ではないけれど、実は身近にたくさんいるトウネズミモチ、ぜひ探してみてください!6月のかわいらしい花、12月の黒い実が特徴的です。
トウネズミモチはかわいくて人気者だった。
参考文献
山田隆彦(2021) : 葉っぱ・花・樹皮で見分ける樹木図鑑, 池田書店
細木大輔. (2008). トウネズミモチ (Ligustrum lucidum Ait.). 日本緑化工学会誌= Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology, 34(2), 411.
環境省. 我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト<植物>
伊藤千恵, & 藤原一繪. (2007). 都市域森林群落における外来種トウネズミモチ Ligustrum lucidum Ait. の分布と生態的特性: 在来種ネズミモチ Ligustrum japonicum Thunb. と比較して. 保全生態学研究, 12(2), 143-150.
唐沢孝一. (1978). 都市における果実食鳥の食性と種子散布に関する研究. 鳥, 27(1), 1-20.
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