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稲垣恭子先生:授業だけじゃない、 大学生活を通した豊かな「学び」

2022.04.01

学び 2022年新入生リーフレット

プロフィール

稲垣恭子先生:1978年教育学部卒。京大理事。副学長。

インタビュー

♦授業だけじゃない、 大学生活を通した豊かな「学び」

※文章によるインタビューでご協力いただきました。

1当時の学生生活について

――ひとことで表すとどんな大学生活でしたか?

文化の時間(と昼夜逆転)

――そうお答えになる理由は?

大学に入って一人暮らしになり、一日24時間好きに使える解放感は大きかった。当時まだ大学近辺にもたくさんあった古本屋や書店を回ってみつけた本を下宿で朝まで読んで過ごしたり、そのまま午前中の授業に行くことも。でもたいていは、夕方に起きて銭湯に行くところから1日が始まっていました。夕方から始まる喫茶店や居酒屋でのエンドレスな議論のなかで、面白いテーマや意外な切り口がみつかることもあって、そんな「百万遍談義」も熱心にやっていました。また、京都は大小いいお寺が多いので、お寺めぐりも趣味になりました。今も時間があったらお詣りをしています。

 

――稲垣先生が学生だった時と比べて今は変わったなと思うことはありますか?

当時は授業のやりかたも教授によってまちまちで、面白い講義もあれば全くわからない講義もありましたが、インフォーマルな学生文化が大学生活を支えている部分も大きかったと思います。今はフォーマルな部分での教育はずいぶん充実していると思います。一方、新型コロナウィルスの影響もあって学生間のインフォーマルな関係がつくりにくくなっている状況があると思います。オンライン・コミュニケーションの前提としても対面での日常の交流の中で文脈を共有する文化は大切だと思います。

――特にジェンダーに関しては何かありますか?

ジェンダーという点では、私が在籍していた教育学部は他の学部に比べて女子学生の割合は高い方でしたがそれでも10人前後で、教員には女性はいませんでした。大学院進学者も当然少なく先行き不透明でしたが、あまり先のことは考えずとりあえず研究生活を始めたという感じでした。ただ他の研究科の女子院生の人たちとも一緒に情報交換会や勉強会をしたのは楽しかった。現在も、特に理系では女子学生が少ない分野もありますが、若手世代のジェンダー意識は変わってきて、モチベーションを持って将来のキャリアを実現できる可能性も開かれつつあると思います。ジェンダーに関わらず自分らしく生きられるような風通しのいい関係が学生文化、学問文化の中に根付いていけばと期待しています。

 

――先生が学生の頃に感銘を受けた本で、今の学生にも是非読んでほしいものがあればご紹介いただけますか?

ホイジンガ『中世の秋(上・下)』中公クラシックス

大学に入って初めに読んだ本の一つで、これまで遠い世界と思っていた中世の人々の激しさと穏やかさ、貪欲さと慎み深さ、傲慢さと無邪気さの間を揺れ動くような感情や生活の描写に親近感と感動を覚えました。フランドル派の絵画を知ったのもこの本からです。既成の制度が揺らぐ状況の中で、時間のスパンを大きくとって今とは異なる社会のしくみや人間の生き方を参照することで自分自身を見直す上で薦めたい一冊です。

*青木保『タイの僧院にて』(新装版)青土社

文化人類学者の著者が、タイ・バンコクの僧院で、托鉢や食事、読経などの修行のなかで感じたこと、現地の人々との関係、仏教とタイの社会など、異文化を体験することや通過儀礼の意味を感受性豊かに描いています。自ら体験し考えることの力を感じさせてくれる一冊です。

 2.環境問題・社会問題について

――環境問題・社会問題に関連して先生が学生だったころ話題になっていたことで、印象に残っているものや、先生が「教育」を研究されるきっかけとなったものはありますか?

大学に入学した1974年頃は、大学進学率が上がっていくと同時に、学歴や格差問題、不登校やいじめ、ジェンダー問題など、教育問題が社会問題としてクローズアップされ、学校や教育への懐疑が高まっている時期でした。「子ども」という存在の自明性を問う文化史研究などにも接して、自分自身にとっての教育の意味を振り返ると同時に、日本の社会における教育の意味や問題について、広い視野から考えたいと思うようになりました。

 

――先生のご専門について教えていただけますか?

教育社会学という分野です。当時の教育社会学の主流は「学歴と社会移動」、わかりやすくいうと、教育によって仕事や人生がどう変わるかという問いにデータや歴史資料等を使って答えようとするものです。とくに女性にとっての「学問することの意味」について考えるとき、職業、経済の視点に加えて、文化の視点も入れた広い視野から考える必要を感じたこともあり、ジェンダーを含めた「文化の問題」として教養、師弟関係、ビルドゥングスロマン(成長物語)などのテーマに取り組んできました。

 

――「学校」や「教育」について研究されている稲垣先生からみて、学生にとっての学びの拠点となる大学は、どのような場であるべきだと思われますか?

大学は、アカデミアのもつ自由な研究・教育の場であると同時に、社会や世界と自分自身をつなげていく場でもあります。その両方を行き来しながら、それぞれの学生が知の力を感じとり、自らの創造性を育てていけるような場であってほしいと思います。

 

――SDGsでは、社会が持続していくためには解決しないといけない課題、例えば、ゴール5番では「ジェンダー平等を実現しよう」、17番では「パートナーシップで目標を達成しよう」が掲げられています。稲垣先生は、京大の「男女共同参画・国際・広報・渉外担当」理事・副学長をされていらっしゃいますが、ジェンダー平等や国際協力が不可欠な現代、学生にとって、大学でどのような「学び」をすることが大切だと思われますか?

ジェンダー平等とパートナーシップは、多様な視点の共存と相互の寛容性に基づく創造的で豊かな社会の実現と維持にとっての基盤になるものですが、国際的な視点からみても課題が多いのが現状です。京都大学でもジェンダー平等を実現するための具体的なアクションプランを作成して全学的に進めていくことにしています。学生の皆さんにとっても、自分自身の問題として考えていく上で、異なる経験を持つ他者との交流の中で、自身をリフレクトする感受性が「学び」にとって不可欠だと思います。SDGsに関する知識を深めると同時にそれを自分自身で吟味する経験を広げる、その相互作用が飛翔感を伴った新しい学びを生み出します。ボランティアや海外経験を持つことも、自身を鍛える上で大変大きいと思います。

 

――これから学生生活を始める新入生にメッセージをお願いします!

京都大学は、皆さんが面白いと思うこと、やりたいと思うことを受け止め、伸ばしていける知的伝統と文化を持った大学です。自分の中にあるちょっとした芽を大切にして育てていけるように、本を読み、先生や友人と語り合い、経験を広げて、存分に楽しんでください。

(担当)西道

 

概要

授業など大学生活におけるフォーマルな部分に加えて、学生同士のインフォーマルな関係の大切さ、多様な人が集まる大学で周りから刺激を受けながら学びを深めることの重要性についてお聞きしました。

取材を終えて一言

稲垣先生の大学生活は一言で表すと「文化の時間(と昼夜逆転)」。京大理事で教育がご専門というと正直お堅いイメージを持っていたので、その言葉に驚きつつ楽しくお話を伺いました。大学での学びは何をもって充実しているといえるのか、改めて考えさせられます。

学生時代

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