文責・横井
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回の特集は「エノコログサ(猫じゃらし)」です!普段からよく見かける野草ではありますが、なかなか面白い植物ですよ。
エノコログサ
学名 Setaria viridis イネ科エノコログサ属
@吉田キャンパス本部構内総合研究12号館南側他多数
エノコログサはイネ科なので穀物と同じ系統です。見た目も穀物に似てますよね。実は粟の祖先らしく、粟と交雑したりもするそうですよ。それでは、へぇポイントを見ていきましょう!
へぇ☆「種類が様々ある」
粟とすら交雑するエノコログサですから、様々に種内変異します(生息場所が様々なこともあるでしょうね)。例えば本部構内南側の群生地を見てみても・・・
一見するとなじみの深い長穂種(穂が長い)が目立ちますが・・・
地面に近いところに生えているこちらは短穂種です。
そしてこちらは穂が紫色になっているムラサキエノコロですね。(写真のピントが合っていなかったので翌週撮りなおそうと生えていた場所に来てみると草刈りされていました・・・。京大構内は結構頻繁に草刈りをやっていますので、観察したい野草を見つけたらすぐに写真を撮りましょう)
同一種内の違いを簡単に見つけられる植物なので、ぜひ皆さんもここで紹介しきれなかったエノコログサを見つけてお送りください!
へぇ☆☆「ギリ食用にできる」
粟の先祖であるエノコログサ。毒はなく穀物に近いためかつて飢饉のときに食べられた例があるとも言われていますが、剛毛や堅い殻により一般には食用とされていません。しかし、穂を茹でるとトウモロコシ茶のような穀物茶になりますよ!
このように穂の部分だけを集めてしばらく茹でます。あとは茹で汁をお茶としていただくだけです。
味は・・・穀物の甘みとお茶の渋みとが相まっておいしいです!ただ今回は青い穂を使いすぎたので若干青臭さが出てしまいましたね・・・。より成熟した穂を使うか、香ばしさを出す意味も含めて煎ってから茹でるとよりおいしいでしょう。ただ、成熟しきって実が落ちてしまった穂では意味がありません。
へぇ☆☆☆「C4植物である」
エノコログサは、光合成を行う際カルビン・ベンソン回路の前にCO2濃縮を行う過程を持つC4植物です。気孔が閉じた状態でも光合成ができるので高温・乾燥といった苛酷な環境に強い一方、快適な環境ではC3植物に劣ります。雑草として力強いエノコログサですが森の中ではあまり見かけない理由はこのあたりにありそうですね。
C4植物の中では一世代が8~10週間と短いためC4植物研究者の間ではモデル生物として利用されているようです(吉村 2016)(理化学研究所 2020)。
今でこそ雑草としか思われないエノコログサですが、その遺伝子はかつて粟を生み出し、現在でも研究に用いられています。
ところでエノコログサは俗称で「猫じゃらし」と言いますが、猫は本当に食いついてくれるんでしょうかね?京大でも猫と猫じゃらしで遊んでいる人はいるようですが・・・
せっかくなので試してみました。
えっ、なんかちょっかい掛けてくる子どもに渋々付き合ってあげる母親みたいな反応・・・。猫にとってはマンネリ化しているんですかね?
エノコログサの遺伝子は現在の我々の社会にまで流れていた。
参考文献
吉村泰幸(2016) 「C4植物のきほん」C4植物のきほん (affrc.go.jp) 2023/10/16アクセス
理化学研究所(2020)「エノコログサのゲノムを高精度解読」エノコログサのゲノムを高精度解読 | 理化学研究所 (riken.jp) 2023/10/16アクセス
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