文責・横井
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回はXにてこんなツイートを見かけました。
私の見た限りでは京大構内でシソは確認できず、よく似た別の野草が多く生えています。今回はそちらを紹介しますが、もしシソを見かけられた方はご一報ください。
カラムシ (苧)
Boehmeria nivea var. nipononivea
バラ目イラクサ科カラムシ属
総合研究11号館北側など
シソによく似た葉をした植物はたくさんあり、亜種が混じってくると正直見分けるのは至難の業になります。ただ、シソはシソ目シソ科なので全く別の植物です。シソかどうかが気になったら、葉っぱをちぎって匂いを嗅いでみると確実に判別できますのでお試しあれ。香りがしなければシソではありません。
へぇ☆「もともとは栽培目的で日本に入ってきた?」
道端で見かけるカラムシですが、茎の皮を剥ぐと良質な繊維が取れることから有史以来作物として栽培されてきました。今でも福島県昭和村にて小千谷縮・越後上布の材料として栽培されています。そんな日本の民俗に根付いたカラムシですが、もともとは栽培目的で日本に持ち込まれたものとの説があるようです。リンク切れが多くつかみきれなかったのですが、朝鮮半島から九州を経由して伝播したルートが検証されています(滝沢 1995)。
へぇ☆☆「葉が互生していることで見分ける」
シソに似ているカラムシですが、似たような植物は他にもあって、代表的な種が「エゴマ」です。エゴマは油が利用されるほか、韓国料理に使われるのでスーパーでも見かけますね。ちなみに、よく見てみるとアジサイもかなり似た葉の形をしています。以前のバイオスクープ(【京大!バイオスクープ file13】6月の植物 アジサイ – エコ~るど京大|京都大学 環境エネルギー管理情報サイト (kyoto-u.ac.jp))で取り上げた通りアジサイには毒があるので注意が必要です。自分でアジサイを採って食べることはないと思いますが、採取後の葉を提供されるとシソなのかエゴマなのかカラムシなのかアジサイなのかを素人目に判断することは困難です。
実際にアジサイの中毒事例は飲食店で提供された際に発生しています(自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ (mhlw.go.jp))。アジサイの葉が食用の葉と混同されないよう徹底した分別管理が必要です。
ちなみに、シソ科のシソ・エゴマやカラムシには産毛が生えているがアジサイには生えていないという見分け方はあります。
アジサイの葉の裏です。つるつるです。
カラムシです。葉の裏から茎に至るまで産毛がびっしり生えています。
カラムシの特徴ですが、写真のように茎から葉が互い違いに出ていること(互生)で見分けられます。
へぇ☆☆☆「めっちゃおいしい」
半ば食レポと化している私の記事ですが、今月のカラムシも例にもれず食用になります。食べ方としては柔らかい若葉を採ってそのまま湯がくだけです。先月のヤブガラシ(【京大!バイオスクープ file16】7月の野草 ヤブガラシ – エコ~るど京大|京都大学 環境エネルギー管理情報サイト (kyoto-u.ac.jp))と違いあく抜きの必要はありません。
味はというと、きわめてヤブガラシやモロヘイヤに近い味がします。苦味は全くなく、ほのかな甘みととろみがあります。
カラムシは現在でも昭和村で織物材料として使われているほか、一部で食用として用いる動きもあります。カラムシが雑草扱いされるのはごく最近に限ってのことなのかもしれません。
カラムシはかつて野草ではなかった。
参考文献
滝沢 洋之 (1995) 「<研究ノート>カラムシ紀行 : 壱岐・対馬・北九州にその伝播ルートを求めて」福大史学 59 47-53, 1995-03
厚生労働省 「自然毒のリスクプロファイル:高等植物 アジサイ」自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ (mhlw.go.jp) 2023/08/18アクセス
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