文責・横井
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回の特集は「カタバミ」です!普段からよく見かける野草ではありますが、なかなか面白い植物ですよ。
カタバミ
学名 Oxalis corniculata L. カタバミ科カタバミ属
@吉田キャンパス本部構内物理系校舎北側他多数
カタバミはきれいなハート形の葉をしていますね。幼稚園の頃周りの子どもがよくクローバーと間違えていたのを覚えています(おぼろげながら)。
へぇ☆「大きな根を持つ」
カタバミは地下に球根を持ち、その下にさらに大きな根を持ちます。そのため、一度生えると駆除することが難しく、厄介な雑草と捉えられることが多いです。この「絶やすことが難しい」特徴から戦国大名などで家紋として用いられるケースが複数あります。(例:長宗我部氏)。昔から生命力が強い植物として知られていたのですね。
へぇ☆☆「食用にできる(らしい)が使いづらい」
カタバミは漢字で「酢漿草」と書く場合があることからも見て取れるように、噛むと酸味がします。熱湯に通して酸味を味わうことを食べ方として紹介している文献もありますが・・・この酸味、主成分はシュウ酸ですから結石の原因になります。ヤブガラシの記事でも書いた通り私はシュウ酸を徹底的に取り除きたい人なので、今回も数日間水に晒しシュウ酸を取り除いた後、茹でて食べてみました。
今回は若葉を採ってきました。量の少なさに私の警戒心が現れています。沸騰した湯に入れると・・・七草粥の匂いがしてきます。あの匂いは草に共通する匂いだったんですね。
茹でるとほんのわずかになってしまいました。恐る恐る口に運ぶと・・・
完全な無味です。苦味も、酸味も、甘みもありません。ただ水分を含んだ繊維があるだけです。
なので、味をつけて他の食材と混ぜることでかさましにはなるのかもしれません。しかし、それには重大な問題があります。それは・・・「収穫効率が悪すぎる」問題です。1株が非常に小さく、しかも地表近くに広がっているため苦労して手で採っても採集できる量はごくわずかです。ただのかさましとして使うには手間がかかりすぎます。あまり食用に向いている野草ではなさそうです。なお、生薬として用いられる場合もあるとのことで、薬用であれば少量でよいので使えそうですね。
へぇ☆☆☆「環境によって葉の色が変わった」
よくよくカタバミを見ていると、鮮やかな緑色の株もあれば赤い葉を持つ株もあることがわかると思います。これは、高温条件下では赤い葉の方が光合成の能力が低下せず成長できるため、都市の高温に適応して進化したと考えられるそうです(深野 2023)。
実際、京大構内を見ても物理系校舎の北側に生えている株は緑色ですが・・・
物理系校舎東側の株は赤味が強くなっていました。
少し場所が違うだけでずいぶんと変わりますね!カタバミは種を飛ばす距離が1mくらいと短めなので、生えている環境の違いが明確に出るのでしょう。
参考文献
深野 祐也(2023) 「都市の熱さで植物は赤く進化する ―ヒートアイランドへの急速な適応進化を初めて実証―」東京大学大学院農学生命科学研究科·農学部HP 研究成果 都市の熱さで植物は赤く進化する ―ヒートアイランドへの急速な適応進化を初めて実証― | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 (u-tokyo.ac.jp) 2023/11/19アクセス