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【京大!バイオスクープ file40】クモ ジョロウグモ

2024.12.08

学び 京大!バイオスクープ

文責・永田

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「街中でよく見る縞模様の大きなクモって毒グモですか?」

図1 ジョロウグモのメス

ジョロウグモ(女郎蜘蛛)
クモ目コガネグモ科
学名:Nephila clavata
分布:全国
時期:5~10月

 

@吉田キャンパス 本部構内 人文科学研究所本館前(その他多数)

※クモの巣は人為的要因や風雨によって壊れやすいため、ずっと同じ場所にあるとは限りません。皆さんの身近な場所で探してみてください。

黄色と水色の縦縞と赤色の斑紋という派手な見た目が特徴的なジョロウグモ。最も身近なクモといっても過言ではないほどよく見かけるクモですが、実は面白い生態がたくさんあるんです。「クモの巣なんて気持ち悪い!」と壊してしまう前に、ぜひ一度観察してみてください!

 

へぇ☆「二重人格ならぬ二重クモ格…?」

 派手な体色で毒々しい見た目通り、ジョロウグモは毒を持つハンターです。大きな巣に獲物がかかると、まずは噛みついて毒で弱らせ、さらに糸でぐるぐる巻きにするというなんとも残酷な方法で捕食します。時には、自分よりも大きいセミやトンボも捕食してしまうことも…。しかし、この恐ろしい捕食方法とは裏腹に、実はかなりの臆病者。めったに攻撃してくることはなく、毒も人間に対してはほとんど害がないため、図1のように手に載せても全く問題ありません(※触ってみる場合は、自己責任でお願いします)。それどころか、少し巣に近づいただけで逃げられてしまい、捕まえるのは至難の業です。

 

へぇ☆☆「尻に敷かれてます…」

 ジョロウグモの巣をよく観察してみると、派手な体色の大きな個体の近くに地味な体色で体の小さい個体が見られることがあります。実は、体の大きい個体は全てメスで、この体の小さい個体はオスなんです。オスは、交尾のためにメスの巣に同居しているのですが、交尾後(時には前)にメスに食べられてしまうこともしばしば…。オスは子孫を残すために、文字通り命懸けでメスと同棲生活を送っているようです。

 しかし、オスは決してメスの尻に敷かれすぎて体が小さくなった訳ではありません。体が小さいオスの方が生き残りやすいために、結果的に体が小さくなる方向に進化してきたのです。体が小さいオスの方が生き残りやすい理由については諸説ありますが、最近では「メスからの攻撃をかわすのに、体が小さい方が俊敏に動けて有利」とする説が提唱されています。

このように、自然界では夫婦さえも互いに生存を争うライバルとなってしまうことがよくあるんです!

 

へぇ☆☆☆「クモの糸は鉄よりも強い!?」

 ジョロウグモはクモの中でも大きく円形の巣を作ります。巣が大きすぎるあまり、図2のように何もない空間に浮かんでいるように見えることもあるほどです(実際は、遠く離れた木の枝や草から巣を張っています)。写真ではわかりにくいですが、巣を近くで観察してみると、非常に精巧な作りになっていることが分かります(図3)。

 

 ジョロウグモの巣は単純に表すと、図4のようなつくりになっており、複数の異なる種類の糸から構成されています。

⚪︎縦糸(図の赤色)…巣の中心部から放射状に伸びている。強度に優れている。

⚪︎横糸(図の青色)…巣の中心部から渦巻き状に広がる。粘着性があり、伸びやすいため獲物の捕獲のための機能を果たす。

→クモは粘着性のない縦糸のみを歩くため、捕獲されることはありませんが、獲物は横糸にぶつかることで捕らえられます。

⚪︎枠糸(図の緑色)…巣を囲む。

⚪︎こしき(図の水色)…クモの住居となる。

⚪︎牽引糸(図の黄色)…クモの命綱となる。

 

 上記の中でも、獲物を捕まえる際やとっさに逃げる際の命綱となる「牽引糸」は、実は鉄よりも強く、ナイロンよりも弾性が高く、さらに生分解も可能であるという優れもので「夢の繊維」と言われることもあります。この「夢の繊維」の大量生産を可能にするべく、クモの糸のタンパク質構造からそれを再現するという人工合成プロジェクトも行われているそうです!

図2 人文科学研究所前のジョロウグモの巣

図3 人文科学研究所前のジョロウグモの巣(別角度)

図4 ジョロウグモの巣の構造

 

ジョロウグモの産卵時期は10月中旬から11月のため、今ならお腹の大きなメスを見ることができます。ぜひ、一度ジョロウグモの巣を探して、観察してみてください!

 

参考文献

観音崎自然博物館. 親子で観察する身近な生きもの図鑑. ナツメ社, 2023.

馬場友希. クモの奇妙な世界ーその姿・行動・能力のすべてー. 家の光協会, 2019.

大﨑茂芳. クモの糸の秘密. SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業). 2006, Vol.62, No.2, p.42-47.

島田祥輔. ”クモの糸の構造を再現、人工合成の糸口に”. 理化学研究所.2021年4月12日. https://www.riken.jp/pr/closeup/2021/20210412_4/index.html, (参照 2024‐11‐20)

 

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