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Goal03「すべての人に健康と福祉を」(谷合敬太)

2020.04.16

学び 2020年新入生リーフレット

こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。

 

 

インタビュー日:2019年12月26日

回答者:谷合敬太(京都大学法学部OB/エコ~るど京大OB)

 

 

Q:Goal03「すべての人に健康と福祉を」のなかで興味のあるテーマは何ですか?

 

健康寿命が延びていることについてです。これはある種のアンチテーゼみたいなものだと考えています。生命という観点から見たときにはいいことだと感じる一方、社会の整備が追い付いていないのではないかと思っています。例えば雇用に関して、昔は大学を卒業して会社に入ってリタイアという「学生、社会人、老後」という3分割の人生設計が一般的でした。しかしこれからはそうではなくなる可能性が高いのではないかと思います。このことは喫緊の課題なのではないでしょうか。若い人は自分が100歳まで生きる、60歳以降もシニアの人材として働いていくということを前提として、それに合うような生き方をしなければならない、と思います。三分割の人生設計にとらわれてしまった場合、会社リタイアするときに何もすることがない、お金もない、と路頭に迷う可能性が高いのではないでしょうか。死に至るところまではいかないとしても、お金がなく生活に苦しむ人が増えると社会不安につながると思います。すると社会不安を煽る右翼ポピュリズム政党が出てきたり、それによって国の方向性が経済以外の面でも歪んでしまったりしかねないと感じます。

 

 

Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「健康寿命」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?

 

先ほどは問題点を強調してきましたが、一方で意外と未来は明るいものになっていくのではないかと考えています。ミレニアル世代よりも上の世代の人は貯金が善であると考えてきたかもしれませんが、それでは限界があると気が付き始めていると思います。今までと違う動きをしなければいけない考える人が増える裏返しとして、そういった人々のニーズをうまくひろった事業がどんどん生まれていくと思います。

 

 

Q:今までのインタビューの中で度々登場していますがこの2000万円問題をどうみていますか?

 

2000万円という具体的な数字は抜きにして、老後、年金以外に資金が必要であることは当たり前だと僕は思ってしまいました。ですが僕らの親の世代などは典型的な3分割世代で、良い大学、良い会社、典型的な日本型雇用制度の下で、定年まで勤めるのがベストの選択肢であるといった考えの人が依然として多いと思います。でも実際に日本の企業がどうなっているかというと、役職のないシニア人材を早期退職させるなど、年功序列型雇用制度の限界の一端が見てとれます。3分割であったがゆえにそこに浸かってきた人、成長を重視してこなかった人が排除されうる環境になっている。年功序列型以外の雇用形態を採用する企業が増えてきたとはいえ、この危機的状況に気づいてさえいない人は依然として多いのではないでしょうか。ここまでは暗い話になってしまいましたが、実力がある人には多くの機会が与えられるようになるという意味では、大きなチャンスにもなると思います。そういう意味で、僕は将来にわくわくしています。自分が発揮している価値に対して、それが正当に評価されていると目に見える指標が整備されることが、大事だと思います。

 

Q:この「健康寿命」問題を考えるにあたって主体はどこにあると思いますか?

 

どこから生まれるものだという確固たる主体はありませんが、僕が考えた論点は健康寿命が伸びていることが前提となるので、日本や欧米諸国などを中心とする長寿国ではないかと思います。

 

 

Q:そのテーマに向き合ったときに「SDGs」はどのように関わりそうですか?

 

SDGsの理念は素晴らしいですし、僕はSDGsの「誰も取り残さない」とか結構好きなのですが、一方現実は競争社会で、少し遠いような気がしています。「誰も取り残さない」と言っていたら負けてしまう世の中で、勝たなきゃ富は生まれないし豊かに暮らせない。まずはそこを変えていく必要があるのではないでしょうか。

 

 

Q:谷合さんは今後どう関わっていくつもりですか?

 

僕はコンサルタントとして働きますが、SDGsを達成するために今仕事しているとは感じないのではないかと思います。ただ、クライアントの課題を解決し、プロジェクトを終えたときに、「僕が成し遂げたことが結果的にSDGsつながっている」と実感するのではないかなと思っています。要するに、SDGsは目的になるのではないでしょうか。クライアントの期待に応えることは絶対条件ですが、その先に、世の中をよくしたと感じられる結果を求めていきたいですね。

 

 

 

Q:最後に、Goal03を一言でいうと何ですか?

 

「Seeds of happiness」

 

仕事の幸福、人間関係の幸福、経済的な幸福、身体的な幸福、地域社会の幸福…幸せの要素には様々なものがありますが、人間にとって、健康は幸せの根源であると思われます。医療、保険など人は健康に伴う安心には特に高い対価を出します。生命体である以上、健康はないがしろにすることはできないですし、それは今後も変わることはないでしょう。これらの理由から、幸せの種(Seeds of happiness)と定義しました。

 

 

 

(以下白井のコメント)

ありがとうございました。

私たちは経験や情報が充分であるかどうかにかかわらず、勝手に判断したり評価したりしてしまうのではないでしょうか。どれだけたくさんの情報を集め、経験を積んでも考える時点ですべてのことを考慮して最善の方法を選択する、表明することはできません。経験や思慮に富んだ方が周りで傷つくひと、悲しむ人は少なくなるかもしれないですが、どこまで頑張っても「不十分」なわけです。これらの点で「若者は未熟だ」という意見には賛成します。しかし自分にはまだ触れられない領域があるのを自覚した上で、考えるものは考ますし、それはその時点での経験を最大限に活用した論理的なものであるわけです。つまりそういった考えはその人にとっては正当だと思えるようなものではないでしょうか。小学生だったころに自分のことを立派な一人前の人間だと思っていたために、大人が子供扱いすることに気づかなかったり、反発したりしたように、です。であれば大切なことは、こういうことを正しいと考える人間がいる、そう考えさせている何かしらの背景があるという事実を認識することではないでしょうか。そして相手の意見が異なると感じてもそう考えるもっともな理由があるかもしれないと立ち止まってみることで、一見受け入れられないような他人の考えの「目的」が共通していることに気が付けるのではないでしょうか。

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