こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。
インタビュー日:2019年12月27日
回答者:駒ヶ嶺光(京都大学農学部2回生/エコ~るど京大)
Q:Goal04「質の高い教育をみんなに」の中で興味のあるテーマは何ですか?
主としてキャリア教育です。将来どんなことがやりたいとか、どんな職業に就きたいとか、キャリアについて考えることの教育です。
Q:なぜそこに興味を持ったのですか?
大学生の多くは、大学に行くことは当たり前だと思ってきたと思います。けれど本当にそうでしょうか。
多くの大学生は、授業を受けて、課題もたくさんこなしてそれだけでも大変に思えるのに、バイトもしてサークルで楽しいことをして…。本当にそれでいいのでしょうか。社会人になる際に大学を卒業していた方が有利かもしれない。だからとりあえず単位は取って卒業する。それでもいいのかもしれませんが、AI時代にはどんな仕事が残るのかもわからないし、大企業に勤めたからといって安定かもわからない。では世の大学生は、将来につながる本当にしたい勉強を大学でしているでしょうか。皆がそういうわけでもないように見えます。私は浪人したのですが、先に大学生になった友達が「大学つまらない」「大学に行く意味が分からない」とつぶやくのを見ていて、何とも言えない気持ちになりました。そしてきっと就職も、本当に自分のやりたいことができるわけではない企業、たまたま知っていた企業、説明会とかで偶然出会った企業などに入って、入社後最初は雑務とかから始まって楽しくないな、みたいな。そういう人が多いのではないでしょうか。それでみんな人生楽しいの?と私は思います。
私は浪人の時に自分のやりたいことを楽しく仕事にしている人たちに出会い、こういう生き方もできるのだと気づきました。そしてそういう世界をもっとみんなにも知ってもらいたいです。自由に生きて良い、何でもできる、ということにもっと早く気づいていたら、私がいろいろ悩んでいたときももうちょっと違っていたんじゃないかと思います。生きるために働く、お金がなければ生きていけない、だから良い就職先を…というのは違うと思っています。親や自分の周りの大人がやっていることはモデル像になるかもしれない。けれど、本当は大学に行かなくても、自分のやりたいことやり通してちゃんとその中でスキルを身につけたなら会社も採用してくれるはずで、むしろこれからはそうでないとやっていけなくなると思います。主体性を殺してやるような仕事はこの先AIとかに代わられるかもしれないし、自分のやりたいことや自分にしか見いだせないような価値を持つことが必要ではないでしょうか。
Q:「キャリア教育」について考えるにあたって主体はどこにあると思いますか?
日本の中高生。どの国のおいてもキャリア教育は必要だと思いますが、日本人は特に「周りに倣え」、という風潮があるのもあって、私が見える範囲ではキャリア教育は日本の中高生にとって一番大事だと思っています。
Q:上の質問で挙げていただいた「主体」と「自分」にはどのような関係があると思いますか?
自分も割と当事者ですね。私も「主体」。大学生になっても新しい世界は見るし、現実、大学生は自分のキャリアをより現実感を伴って考えています。大学生が「主体」なのは今ここに存在する事実だと思います。
一方で今の中高生の世界は狭い。中高生のうちからいろんな世界を知って、大学生の自由な時間の使い方を考えられたら、と思います。だから、自分では中高生のキャリア教育に焦点を当てているのかもしれません。
Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「キャリア教育」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?
よく聞く話ですが、アメリカの大学などは入るのは簡単だけど卒業するのは大変と言われています。その人自身がどういう学びをしたいと考えているかを重視しているようです。日本でもAO・推薦入試が増えてきているのは、そういうところに日本も課題意識をもっているからでしょう。どういう学びをしたいのか、どういうことを学んでどう生きていきたいか、自分がどういう人間として生きていくのかを考えないといけない時期にあるのではないでしょうか。AI等にとって替わられる仕事もあるなかで人間としての自分にしか作り出せない価値を作り出せることが求められるのではないかと思います。
5年後の解決は難しそうですが、10年たったら可能でしょうか。ひと世代くらいたったら世の中は確実に変わっていく気がします。皆が「自分という存在」を自覚できているような雰囲気が社会に浸透するまでにはひと世代くらいかかると思うので、10年後どうなっているのかは想像がつきません。
Q:あなたはこのことに対してどのように向き合っていこうと考えていますか?
地元東京で、学校でも塾でもない中高生の第3の学びの場というものを今創っています。私の課題意識や理想とする場、中高大学生にとって今あるべきと思う価値をもつ場を創りたいと思っています。その活動にちゃんと関わっていきたいですね。
Q:気づくとか考えるとかじゃなくて実践することが重要ということでしょうか?
私は京都にいるので、この学びの場を創る活動をメインにはできないし、大学で勉強していることはまた別のことです。キャリア教育をメインに活動していこうというつもりはないですが、多様な生き方があってこういう生き方もできる、ああいう働き方もできるみたいなモデルをみせることがキャリア教育の中心だと思っています。だからそういうモデルとなる大人が中高生や大学生の周りにたくさんいて彼らに面白いと思ってもらえることが一番だと思うし、自分もそういう大人のひとりになりたいです。教育に携わりながら自分の専門領域もちゃんと持って、その専門領域の中で面白いと思ってもらえるような人間。教育を自分の専門にするのもそれはそれで面白い人間になれるだろうけど、その他に興味もあるし多様な大人がいることを伝えたいので、私も多様な大人の一人でありたいです。
Q:Goal04の特徴は何だと思いますか?
教育はすべての根底にあります。だから教育を解決することで他のことにもつながっていきます。例えば、途上国支援でよくいわれることですが、サービスを提供するだけでは意味がなくて、その人たちがそれを使えるようになること、自分たちで生み出せるようになることが必要です。まずは教育から始めないといけないと思います。
キャリア教育で、皆の、若者の社会に対するモチベーションが変わるはずです。そういう若者たちが増えて自分のやりたいことをやれるような社会になったら、日本全体が幸せになると思うし、本当の意味で豊かな国になって、いろんな問題も解決していくのではないでしょうか。
Q:最後に、Goal04を一言でいうと何ですか?
「すべての道は教育から通ずる」
私たちが生きる社会は私たち一人ひとりが作り上げています。そしてその人々は「教育」を受けて、それぞれの価値観を形成していきます。その価値観が社会を動かす原動力です。「教育」が社会のすべての原動力の根本になっているといっても過言ではないと思います。
(以下白井よりコメント)
ありがとうございました。
自分がインタビューしながらもう「子ども」ではない自分を意識させられたように思いました。成人式も終え自分よりも後の世代、若い世代から大人とみられる立場にいる自分。しかし同時に私は自分が生きていく糧となる多様な「大人」を求めてしまう「若者」でもあります。そういう多様な大人の存在の認識はある意味では周りの大人への甘えであり、またある意味では周りの大人に対する敬意であり人生の終わることのない学びを自覚した姿勢ではないでしょうか。今この瞬間に社会で働くことを強いられないという特別に待遇されたような立場にある自分、社会やこの先おそらく長く続いていくはずの人生を前に生きるとはどういうことか、キャリア教育はそういうことを担っているように思いました。