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Goal11「住み続けられるまちづくり」(横井晴紀)

2020.04.16

学び 2020年新入生リーフレット

こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。

 

 

インタビュー日:12月19日

回答者:横井晴紀(京都大学経済学部3回生/エコ~るど京大)

 

 

Q:Goal11「住み続けられるまちづくりを」の中で興味のあるテーマは何ですか?

 

興味があるのは消滅可能性都市に関する諸問題です。もう一番やばいというか消えていくことが確定しているところにいって話を聞く院ゼミが最近ありました。そこで住民の人が「消えていくのはしょうがないけど、今の暮らしは自分にとっては結構満足している。だからV字回復させるよりはこのまま暮らし続けたい」というのを聴きました。住み続けられるということに反対するのは難しく、直感的に賛成してしまいそうになります。けれどもその住民の方は無理やり(街を)続けていくことに必ずしも賛成しているわけではありません。そこに消滅可能性都市を持続させるのか、それとも持続させないのか、その場合どういう線引きがあるのか、といった問題があります。結局「住み続けられる街づくり」はセンシティブな問題であって、いわゆる大都市でも農村でも2030年まで、あるいはもっと先まで続かせることが暗黙の前提になっています。しかし特に日本とか先進国においてはそういう何もしなければ消えていくところがあります。では、そういうところを住み続けられるというのはどういう意味なのかと思いました。あくまでも住みたい人が住めればいいのか、それとも何が何でもつぶさないことなのか、その時それは果たして正義なのかっていといった話になります。(SDGsに対して)大筋には反対ではないが例外があるのではないかと思います。

 

 

Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「消滅可能性都市」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?

 

10年で完全に問題が消えることは絶対にないと思っています。どんなところにしてもそこに住み続けたい人はなくならないと思います。もちろん既に廃村になっている集落もあるけれどもあくまでもなだらかに人が減っていくっていう状況があるからより一層問題が深刻化していくのではないでしょうか。例えば災害、水害に強いということがターゲットで言及されていますが、そもそも達成するという状況が想定できなくないですか?どれだけ対策したところで、1万年に一度といった想定していないことが起こったら絶対水害が起こります。そうなるとこのGoalはあくまでも努力目標、方向付けで完成形がどうもないような気がします。

 

 

Q:「消滅可能性都市」問題に取り組むにあたって主体はどこにあると思いますか?

 

それ結構大事だと思います。というのもこれはSDGsがいろんな人に適用しようとしていることから生まれてくる問題だと思いますが、多分行政側と住民側とで全然見方が違っています。住民個人個人にとって一番のかたちが何かということが最も大事、街に住み続けるかどうかは住民次第です。去年の授業で「あなたは今ちっちゃい太平洋の島国の政府のトップで、その島国は海面が上がってきて沈みかけている。あなたは政府としてどうしますか」という質問がありました。自分は「沈むことは止めようがないことだから住民が国外へ移住することも仕方のない」と言うと、他の人が住民が、移住したい住民に対して政府は積極的に支援していいけれども一人でもそこに残りたいっていう人がいるのであればあくまでも島に残れるように体制を維持できるような支援をし続けるべきだ。なぜならばそれが政府の役割だからだ」と言いました。それを聞いてなるほどと思いました。あくまでも行政はその地域でその地域の住民のために何かをするものではないでしょうか。だからそこの地域でずっと住み続けたいという住民が一人でもいるのであればその希望に寄り添うことは当然であり、それが行政の意義に合うのではないでしょうか。こうやって消滅可能性都市を考えると住民側と行政側で受け止めるべきことが結構明確に違うのだと思いました。

 

 

Q:上の質問で挙げていただいた「主体」と「自分」にはどのような関係があると思いますか?

 

自分はやっぱり住民でないことは明らかで、やっぱりその地域は住んでいる人たちのもので、住んでいる人たちが一番重要でしかるべきです。「(街の持続は)もう無理だから引っ越しなさい」と外野から言われるのは違うのではないでしょうか。残る人が数人しかいなくても済み続けるための支援をすべきとする考え方は結構経済的に効率悪いですよね。広く国民の理解がないとうまくいかないでしょう。「何故わずか数十人しかいない地域のために毎年毎年こんなに税金つぎこまなければいけないのか」という考え方が支配的になってしまったら、結局満たされないですよね。個人としてはあくまでも小さい一人としてこういう視点を伝えていくしかないと思っています。

 

 

Q:10年ってどれくらいの長さに感じますか?

 

持続可能性を考える上では短すぎるのではないでしょうか。ただ気候変動とかそういったところに関してはすでに緊急の対策が必要っていう状況になっていて、そういった意味ではとりあえずの目標としてはアリだと思います。しかし事の他Goal11に関しては10年しかかからない変化がそんなに長く続くのでしょうか。結局人がいるから街になり、人って大体人生60年あるわけで、それを10年で何とかしろという方が無理ですよね。

 

 

Q:ではSDGsはその中でどういう意義があると思われますか?

 

あくまでも方向付けではないでしょうか。街づくりは長期ですが、それは逆にいえば短期の積み重ねです。そういった意味で10年後までにこの方向にはちゃんと向けるようにするという意義はあると思います。それが課題だと認識した上でそれが長い間うまくいくようにいろいろと政策を進めていく、当然進めていくためには合意が必要です。すぐ方針転換しては意味がなくて、そういったものをこう幅広く行政もそうだし住民も他の国民も含めてある程度納得して、実行していける体制を整える。10年だと体制を整えるのが限界ではないでしょうか。例えば水害に強い街づくりは10年では絶対完成しないと思います。まず構想に数年かかる。いくつか案が出て、それを一番費用対効果がいいのはどれかと考え、それからもし何か移転しなければならないならまた移転先探して、うまくいけば10年後に建設確定ではないでしょうか。そう考えると街づくりを10年で実現するっていうのは多分無理で、あくまでも方向付けになると思います。

 

 

Q:最後に、Goal10を一言でいうと何ですか?

 

「誰のための『街』なのだろうか」

 

その街の住人、近隣の住人、他の地域の住人、行政・・・立場によって「街」に求めるものは異なってきます。どの視点から「街」を考えるのかはっきりさせないと的外れな対応をしてしまうと思います。

 

 

 

(以下白井よりコメント)

ありがとうございました。

持続可能な街づくりの体制を整える10年、やはり考えるというのはたくさんの時間が費やされる大変な作業なのだと思い知らされてしまったように思います。日本で暮らしていると「災害に強い街をつくろう」というスローガンはとても身近に思えます。しかし10年でどう達成されるのか、と一度考えだすと10年で何がどう達成されるのか、現在の災害に対する弱さがどれくらい改善されるのか、無意識に達成できないと思ってしまっていたことに気づかされました。つまりSDGsは当たり前のことですが、すべての目標について期限が2030年とされています。しかし「何がどれくらい達成されるのか」については目標ごとに大きく異なっている、ものによっては10年、5年で達成できることもあるかもしれないでしょう。しかし100年以上かかりそうだと直感するような目標についてもあるはずです。だから10年では達成できないと信じてしまっているのに「SDGsを達成しよう」などと何も考えずに唱えてしまうような気がします。また、街づくりを考えるとき、多くの都市については非住民、外部の立場の人間になってしまうことにもまた難しさがあるように思います。自分はたった一人の意見、主張を本当に尊重できるでしょうか。毎回毎回尊重できるとはさすがに思いませんが「お互い様だから譲り合おう」などと求めてしまうのではないでしょうか。その「譲り合い」という言葉が持つ一種の暴力に少し身の引き締まる思いがしました。

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