こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。
インタビュー日:2019年12月23日
回答者:安藤悠太(京都大学工学研究科博士課程3回生/エコ~るど京大)
Q:Goal12「つくる責任つかう責任」の中で興味のあるテーマは何ですか?
生産と消費の目標ですが、SDGs的には消費の方が興味があります。皆何かの消費者だから17目標の中でかなり身近だと思います。一口に消費と言っても、いろんなレイヤー感のある消費があり、物を使うことだけではなく、廃棄物も含めた物のライフサイクルで語らないといけません。特定の物を消費するから身近というより、もう社会すべてが消費の連続なのではないでしょうか。例えば、このパソコンのパーツもいろいろな国から部品が集まってできていますよね。パソコンでなくても、いろいろなところで作られたさまざまな物が回ってきた結果として作られていますよね。そういう意識があった方が面白いと思います。自給自足をしようと思っても、一人だと何もできない。自分の力だけで作れる物を考えてみると、何もないのではないか?社会には誰かが作った物しかないとも言えるわけです。一人でも、その辺に生えている草を食べるくらいはできるかもしれないですが…。人新世(アントロポロセン)って有名な言葉ですよね。今の世の中は人がいることによってできている。今の生活は先人たちが作り上げてきたものを利用しているわけです。だから、その時点で他者とのつながりは排除できないですよね。
Q:「消費」について取り組むにあたって主体はどこにあると思いますか?
「主体」って難しいですね。SDGsそのものは、そもそも「国々の目標」のはずですよね。では、日本の問題として生産消費の問題をちゃんと考えようとすると、結局は物の流れを扱うわけですから、他国の話も必ず関わってきますよね。一方、物を作って売るような主体を考えると、だいたいは企業です。その意味では、最近のSDGsの使われ方にあるように、企業にとっても取り組みやすい目標なのではないでしょうか。企業が最近発表しているSustainabilityレポートについてもここで言われています。
Q:Goal12の特徴は何だと思いますか?
Goal12は比較的ポジティブですよね。「○○をなくそう」系(貧困をなくそう、飢餓をゼロに、など)ではない。もちろん、本文には「廃棄物を減らそう」とは書いてありますがやはりポジティブなものが多い気がします。「利用する」「奨励する」「促進する」「意識を持つ」「支援する」「開発・導入する」とか。「みんなちゃんとやろう!」と言っている目標に見えます。
また、生産消費の問題をエネルギー的な視点で見ると、物を使って何かすればごみが出ることは、自然なプロセスですよね。すると、それが持続可能になるというのは、そもそも無理な話ではないでしょうか?もし消費が持続可能だったら、一種の永久機関ができてしまいますよね(笑)。もちろん持続可能の定義の仕方にもよりますが…。人工物だけでなく、自然もエネルギーを投入して捨ててはじめて機能を果たしていくわけです。そう考えると、作って使って捨てる営みの中で無駄が生じないわけがないんです。無駄がなくては発達してこられなかったわけです。では、持続可能とは何だろう?と考えると、必ず出るのは認めて、無駄を減らすことが第一歩と思います。ロスるけれども必要な物は使わなければならない。
Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「消費」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?
少なくとも10年では、物の流れ自体は大して変わらないと思います。取り組む企業も増えているので、だいぶ達成に近づくとは思いますが、大量生産大量消費のスキームは変わらないのではないでしょうか。先進国は変われるかもしれないけれど、途上国は物が欲しいはずです。でも、これは仕方ないことです。とは言え、大量生産大量消費社会の是非はずっと問われているので、だんだん皆の意識が変わっていくと思います。日本企業だけを見ていても「サステイナブル」の価値を言うことが増えているので、かなり期待しています。
Q:安藤さんはGoal12についてどのように向き合っていこうと考えていますか?
生きていくためには物を消費していかなければいけないという前提で、自分の欲望には忠実に。ただ、同じ物を買うならば、良いものを買ったり長く使ったりした方が、結局メリットが多い気がします。「安物買いの銭失い」とはよく言ったものですよね!だから、「良いものを大事に」という発想がもっとあってもいいのではないかと思います。人がずっと使った物の方が味が出るし、それこそが愛着の源ではないでしょうか。持っていないのが残念ですが、例えば、革ジャンは修正しながら30年着るといわれています。そういうのって、シンプルにかっこいいなと思います。
Q:最後に、Goal12を一言でいうと何ですか?
「生きることは消費すること」
12番目のゴールは生産と消費に関わる目標です。私たちは常に、ものを作って使って捨てています。日々の食事一つ取っても、何人もの人たちが作り捨てていることは想像に難くありません。このような社会的な営みは、人間が培ってきた社会活動の本質でしょう。では、どうやって「責任ある生産消費」を目指せるのでしょうか?社会活動をなくすのが本質的ではないとするならば、結局は欲望には忠実でありながら、溢れる無駄を減らしていくことが第一歩なのではないでしょうか。そんな無駄を減らしていく中で重要になるのは、愛着を生むような社会活動なのかもしれません。
(以下白井よりコメント)
ありがとうございました。
「欲望には忠実に」という表現がとてもすてきだなと思いました。人によって程度はあれど欲望を抑え続けることは難しい。特にそう我慢する正当性を自分に偽ることなく説得できなければ、我慢することが苦痛となってしまうように思います。苦しいことはやはり続かないのではないでしょうか。では私は何をするのか。まずは無駄を意識することではないかと思います。時間と同じです。ぼーっとしていると空き時間に気づけない。けれども思い切って予定をキャンセルしてしまったりメリハリをつけて仕事をしたり勉強したりすると空き時間を作ることができる。無駄も同じではないでしょうか。もしもの時を考えたら無駄な物など無いように感じます。もしかしたら使うことがあるかもしれない、将来何が起こるかわかりませんし、その物がどういう風に使われるかもわかりません。その中でいくらかの「万が一」の想定を無視してそれが「無駄だ」と認識しなければならないと思います。無駄を減らすことは可能だと思いますが、個人個人の意識の問題に落とし込む必要があるのではないかと思います。そしてそれは空き時間を作るのと同じように結構難しいことだと認識する必要があるのではないでしょうか。