こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。
インタビュー日:2019年12月19日
回答者:後鳥友里(京都大学農学部3回生/エコ~るど京大)
Q:Goal14「海の資源を守ろう」の中で興味のあるテーマは何ですか?
海洋プラについてです。最近エコ~るどでプラスチック問題に注目していて、その縁でGBEFコンクールに出させてもらいました。そのときに(プレゼンの)動画の切り口として最近海の動物がプラスチックを食べて傷つけられているよねというところを切り口にしたくて、ちょっと調べたことがありました。だから海って言われたらそれ、その映像が最初に思い浮かびます。
Q:海洋プラスチックにはどういう問題があるのでしょうか?
今本当に研究や調査が進んでいて、「1年間にこんなにたくさん(の海洋プラごみが)ある」、「将来は海の魚の数を超える」、「魚を傷つけているごみのうち92%はプラスチック」など具体的な数字も出ていて、調査が進んでいます。けれども何故海洋プラが多いかというと、他のところで捨てられた、例えば水道で捨てられた洗剤などが海にいきついてしまうからです。だから海だけ注目していても解決しないところが難しいのかなと思います。川や用水路などが影響して集まってしまうわけなので、そういうところが難しいなと感じます。
Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、この「海洋プラスチック」問題は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?
難しいですね。あと10年ですよね。あと10年で何が変わるかと考えたら、自分のこれがそれに影響しているということを知る人が増えると思います。行動を起こすのも行動を強要するのも難しいので、まず知ることは大事だと思います。
Q:なぜそう考えるのでしょうか?
こういう(取り組みをしている)立場である私ですら自分から動くか(週末に海にプラスチックを拾いに行くなど)と聞かれるとちょっと答えるのに時間をおいてしまいます。自分から人を集める、プログラムを立ち上げる、そういった大きなことは私でも迷ってしまいます。だから今知らない人、関心のない人はもっとやらないと思います。ですがこのテーマが17項目の中でも身近で考えやすいほうなのではないかと思っています。漁業が盛んで魚がよく獲れる日本にいる人限定の視点なのかもしれませんが、日本人にとっては日本人だからこそ「このまま問題が進んでほしくない」、「(今のままでは)ダメだ」、身近な問題として考えやすいのではないでしょうか。それと自分がどう関係あるのかという視点で、あなたもプラスチックをたくさん持っているよと喚起することは大きな意味があると思います。たくさん持っていることに気づかないとこれからも知らずに使い続ける、新たに買い続けるでしょう。これもプラスチックだと気づかなかったら、知らなかったらプラスチックとして分別しないし、プラと知らずに買うし使いまわさずに捨ててしまうと思います。皆が減らしていったら…。甘いですね。
Q:「甘い」とはどういう意味ですか?
たくさんあるから減らしましょうと言うだけであれば小学生でも思いつくことですよね。「ごみがたくさんだ、うん減らそう」というだけなら簡単ですよね。
Q:「海洋プラスチック」問題に取り組むにあたって主体はどこにあると思いますか?
どっちかなと迷っています。被害者か解決者か。海の生き物かわれわれ人間か。現時点で影響を受けているのも我々が守りたい主体も生き物を含む海ですよね。でもそれを守りたいと思うのもこのままじゃだめだって気づくのも人間です。だから海視点で擬人化することもできるけれど実際海が助けてくれって言っているわけではないですよね。海は自らはどうしようも変えられない。変えられないというよりそもそも変わってしまったのも人間の影響ですよね。全部抽象的ですね。
Q:後鳥さん自身はどのようにこの問題に向き合いたいと思っていますか?
今自分が注目しているのが海洋プラスチック問題で直接かかわらせてもらっているのがSNSを使った企画なのでそこを頑張っていくことではないかなと思います。
Q:10年ってどういう時間ですか?
SDGsが提唱されて5年はたったわけですよね。私がそもそも知ったのがおととしでそれまでの3年は知らなかったわけです。でもまだ知らない人は5年があっという間に過ぎてしまっていますよね。だから知らなかったら何でもない10年になってしまいます。「(SDGsの目標期限まで)あと10年」と考える人が増えると嬉しいです。別に問題があと10年で解決するとは正直思ってないですが(たら素晴らしいですけど)、あと10年以上は生きていく人がいますよね。SDGsは(その人たちが)その先ももっと生きたいと思えるような環境づくりではないでしょうか。感覚的には10年すぐに来てしまうような気がしています。(SDGsに関して)まだ他人事の人が多いからこのままでは変わらないと思います。でも仮に解決してもしなくてももっとこの先も生きていきたいですよね。でもこのままじゃ生き続けられない、幸せな暮らしは人によって違うかもしれないけど続けていくのは難しいと思います。SDGsというものが具体的に、それだけで足りるかは別にして、言葉を出してくれていると気づいて、自分のこととして、自分も当事者だと考える10年間は仮に解決したとしてもしなかったとしても意味があると思います。
Q:最後に、Goal14を一言でいうと何ですか?
「皆が生き続けたいと思えるような環境づくり」
今まで言ってきたことと被りますが、そもそもここでこの環境に生き続けたいと思わなければ、持続的な社会を作ろうという意識も生まれないですよね。SDGsの目標とは、その一歩ではないかと思います。
(以下白井よりコメント)
ありがとうございました。
海が変わってしまったと気づくのも人間。その原因が自分たちにあると責任を感じるのも人間。海の生き物を守りたいと思うのも、そう志向して行動するのもすべて人間主体。でも生き物が中心にいるべきと考える。一見矛盾しているように見えますが、このままではよくない、プラスチックを減らしていこう、など具体的な行動方法などについてはわかっているような気がします。そこがこの問題における身近さ、わかりやすさなのではないかと思いました。
また知らなかったら何でもない10年、知ったらその間生きていろんなことに気づける10年。だから知ることには意味がある。知ることは活動することに比べて地味で目立たない活動に見えます。ですが知るという行為はその人の生き方を変えうるのだと実感しました。海洋プラスチックについて、少なくとも彼女の中では知を、気づきを広げる10年が始まっているのだと感じました。