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Goal16「平和と公正をすべての人に」(久保文乃)

2020.04.16

学び 2020年新入生リーフレット

こんにちは、エコ~るど京大・白井亜美と申します。今回、このSDGsインタビューのテーマは「身近な多様性」です。幸か不幸か私たちは本当に一部しか世界を認識できません。だから考えも行動も「不十分ではないか?」という指摘から逃れることはできません。ですがそれでも「自分は一人前のひとりの人間だ」と思って、毎日生き、いろんなことを考えるのではないでしょうか。私たちもまだまだ未熟ですが、隣にいる人がどれくらい自分と異なる見方を持っているか、ここに少しでも触れていただけたら幸いです。

 

 

インタビュー日:2019年12月18日

回答者:久保文乃(京都大学農学部4回生/エコ~るど京大)

 

 

Q: Goal016「平和と公正をすべての人に」を見てどんな印象を受けましたか?

 

一回生の時にSDGsのターゲットを読み、これは法律についての話だと知って、「あ、やばい。法律全然わからない」と思ったのが最初の印象です。このGoalは暴力、テロ、戦争などで自分の命が脅かされないように司法をしっかり整備していくものだと思っています。私自身は日々「明日暴力で死ぬかもしれない」と怯えているわけではなく、実感として捉えづらいなと感じました。また、日本企業の「SDGs平和と公正について取り組んでいます」というものをみても、情報開示や相談機関を充実させていますといったものが多く、あまりぴったり当てはまるところが無いという印象を受けました。このターゲットの中にあらゆる形態の暴力という言葉もあり、先程のような企業の取り組みも、ハラスメント関連の課題も重要であると思いますが、Goal16 のメインのフォーカスからはちょっとずれている気がします。

 

 

Q:SDGsが2030年までの目標達成を掲げていますが、このGoal16は2030年へ向けてどうなっていくものだと想定していますか?

 

2030までといわれるとそこまでに達成できるのか、どうなのか、と思う気持ちが大きいです。しかし、一番は自分から変わっていくことが求められるのではないでしょうか。この目標があることによって、身の回りの現状を振り返るきっかけになり、「国がもっとクリアな機関にならなければならない」と思うことにつながると思います。最近、世界的に一般市民が集まって抗議活動をすることが結構ありますよね。私の中で抗議活動は少し過激な印象がありましたが、そういう障壁が薄れていっているように思います。センター入試についても、高校生や教員が集まって抗議活動して、最終的に(いくつかの新しい改革が)中止になりました。一般の市民が一人一人集まり、訴えていくことで最終的に上を変えることができるということを多くの人が実感したのではないかと思います。この目標に限りませんが、SDGsを達成しなければならないと思った時にはそう感じたひとりひとりが意見を発信していくことも有効ではないでしょうか。

 

 

Q:あまり実感として問題を捉えづらい「平和と公正」について私たちが取り組む意義はどこにあると思われますか?

 

SDGs自体が広がることは目的ではなく、SDGsを通じて世界にはこういう問題があるという視点を与えてくれるものです。自分の身の回りの小さな社会の中の課題を見つけ、解決するために動くきっかけを与えるものではないでしょうか。今は「平和と公正」という言葉だけが広まっているように見えます。「平和と公正」と言われると、日本は平和だから自分には関係がないように思えますが、ターゲットまで見ると「あらゆる」「すべての」といった表現があり、課題は外で起こっていることではなくて、実は身の回りにもあり、自分にもあてはまる領域が広いと気づきます。一人ひとりが自分の周りについて考え始める状況になることが良いのではないでしょうか。皆が一旦SDGsの視点から問題を見ることにより、この世界にGoalにあてはまるような問題があることが見えてくると思います。そしてターゲットを見るとその問題だけではなく、身の回りにも関連した問題があるかもしれないと気づけるのではないでしょうか。

 

 

Q:最後に、Goal16を一言でいうと何ですか?

 

「省察とバランス感覚」

 

省察について。「平和と公正」の第一印象は、身近に感じづらいというものです。個人的には、暴力によって命を落とすことに怯えて生きているわけではないですし、クリーンでない政府による実害を感じていないからです。でも、身の回りに課題がないとは言えません。この目標は、社会や自分の行動を振り返らせるものです。

バランス感覚について。まず、平和はもろいもので、絶妙なバランスの上に成り立っているものだと感じます。国の間での「報復」のし合いを見ていると、今の「平和」も綱の上にあるもののように思えます。先進国であり、成熟している印象のある国でも、他国民を殺害したり、核実験が行われたりしています。平和であるべき、戦争や核はあってはならないものと学んできましたが、平和でない世界は思ったより身近にあります。

また、他国や他人のことにどれだけ干渉できるのでしょうか。他国がある政府の善し悪しを評価できるのか疑問ですし、個人レベルで考えてみても、家族を殺されて、殺した相手を許せ、報復するなとは言えません。目標達成には他国への働きかけが必要だと思いますが、それにはバランス感覚が重要だと思います。こういったバランス感覚については、これから学びたいところです。

 

 

 

(以下白井よりコメント)

ありがとうございました。

私もGoal16「平和と公正をすべての人に」は普段あまり意識しない目標だと思っていました。そういった中で自分にどう大切か、どう関わるかを考える前に、まずSDGsを読んでみる、SDGsに近づいてみる。そうやって私たちの方が理解しようと努力して初めてSDGsを使える、そんな気がしました。SDGsは確かに幅広くて誰も取り残していないかもしれないでしょう。しかしその良さ、その強みは個人個人に引き出されなければ生かされないのではないでしょうか。実感ない、よくわからないと言ってしまうのはとても簡単です。私は海外旅行が好きでよく行くのですが、普段意識して情報収集する日本の話題(政治、経済、痛ましい事件、イベント情報など)も旅行中で海外にいると日本のニュースを全く気にかけなくても生きていけてしまう、不思議な気持ちになります。つまり海外にいるときは何か別のことに集中していて日本の状況に心を割く精神的余裕がないですし、その時は身近でないのかもしれません。「身近な問題に感じる」というと何か自然にそう思われるように思いますが、きっと自ら近づいていかなければならないのではないでしょうか。そして「身近」を広げるのにSDGsはターミナルのような存在となりうるのではないかと考えました。

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