京都市立京北小中学校の8年生(中学2年生に相当;2クラス、合計生徒数:39人)では、2020年9月から、『ふるさと未来科(※1)』において、『SDGsの視点を取り入れ、京北のための“withコロナ”イベントを企画、提案しよう』をテーマとした授業が行われている。そこで、SDGs関連学習プログラムの開発の一環として、京都大学及び京都超SDGsコンソーシアムにおいても、支援・連携を行っている。年度末までのプログラムが予定されているが、今回は、開始から約1カ月間の様子について報告する。
※1:『ふるさと未来科』は京都市立京北小中学校の総合的な学習の時間のことを言う。京北地域ならではの特色教育として、地域から未来を担いグローバル社会を切り拓く子供を育成するという教育理念を象徴するプログラムとして注目される。
◆2020年9月9日(水)5限(13:25-14:10)8年1組、6限(14:20-15:05)8年2組
この日から、京北小中一貫校8年生はSDGsについての学びを始めた。
まず、「部屋の四隅」というアクティビティから始めた。具体的には、部屋の四隅に「はい」、「いいえ」、「どちらかといえば、はい」、「どちらかといえば、いいえ」と書いた紙を貼っておき、「川より山が好きだ。」「SDGsについてよく知っている。」「環境や社会問題について自分で考え、何か実践したことがある。」「今日のふるさと未来科が楽しみだ。」の4つの質問に対して、生徒たちに自分の考えたところに移動してもらった。これを通して、生徒たちの考えの傾向やSDGsに関する理解度などを図ることも兼ねたアイスブレークである。
次に、生徒たちに、SDGsの基礎知識や世界における持続可能な社会の構築に向けた取組についてレクチャーを行った。具体的には、『SDGsノート(※2)』を配布し、ノートの書き方や活用方法を紹介して、生徒たちの身近な事について、SDGs17の目標のどれに関連しているかを書いてもらうなどの実践を行った。
最後に、京都大学から参加した3人(M2武田、M1増渕、研究生張)がSDGsに対する想いと研究事例の紹介を行った。
生徒たちにとっては、初めてSDGsについて学ぶこととなり、 内容的に難しいものもあったと思うが、それでも、大変積極的に考えている様子が伺えた。
※2:『SDGsノート』:京都大学大学院地球環境学堂准教授浅利美鈴先生が生徒に17の目標を理解してもらうために作成したものである。『SDGsノート』は、生徒が17の目標について詳しく学び、日々の生活の中で気づいたこと・実践したことを目標ごとに自由に書き込むノートである。なお、京都市内を中心に利用が広がっており、利用例については、びっくり!エコ新聞(http://beco-rep.org/?page_id=1775)などにて紹介されている。また、環境省のSDGs教育先進事例などとしても紹介されている。
【参照】京北小中学校WEB出の紹介URL(『8年生 ふるさと未来科』【8年生】 2020-09-09 19:30 up):https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=118101&no=8
◆2020年9月16日(水)6限(14:20 -15:05)8年1組、8年2組
この日は前回配布した『SDGsノート』の推進状況の確認とグループでの共有を行った。
具体的には、まず、たくさん書いてきた生徒も、ピンとこなくてあまり書いてこなかった生徒も、京都大学生がサポートを行いながら、内容の確認を行った。その結果、生徒たちはSDGsに対する理解が少し深まった様子が見られた。
次に、席の位置近くの生徒たち、4つのグループ(1班4~5人程度)にわかれてディスカッションし、身近に起きていること(例えば、「学校への通学を自転車や徒歩で→目標7、11、13」「ドラマ「私の家政婦ナギサさん」で、男性がお母さんになりたいという夢をか叶えるために家事で仕事忙し女性をサポートしていた→目標5」)がSDGsの何番に当てはまるかを付箋に書いて貼り付けた。
最後に、『SDGsの視点を取り入れ、京北のための“withコロナ”のイベントを企画、提案しよう』という最終目標について、生徒たちの参考にしてもらうため、京都大学生らが自分で考えた案を発表した。
前回以降の一週間で、一部の生徒たちはよく書いており、中に新聞記事を貼ったりしていた生徒もいた。しかし、多くの生徒たちは『SDGsノート』について、あまり書けていないようであった。やはりSDGsは、学生にとって抽象的で、理解しにくいところがあると感じた。そのため、私たち自分自身の例を取り上げ、SDGsとのつながりを、生徒たちに説明した結果、生徒たちは徐々に理解できるようになったと感じる。
一方、生徒たちが付箋に書いた内容のほとんどは京北との関連が見られないことから、今後SDGsと京北地域とを、どのように結び付ければいいかを考えるべきではないかと思った。
写真の説明:生徒たちが2階の廊下に掲示された成果物を見ながら、振り返って雑談している様子。
【参照】京北小中学校WEB出の紹介URL(『8年生 ふるさと未来科 2』【8年生】 2020-09-16 19:35 up):https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=118101&no=4
◆2020年9月24日(木)5限(13:25-14:10)8年1組、8年2組
この日は「京北らしさ」、「自分らしさ」について考えることとした。
京北のよさ・魅力、自分の育った環境との比較について、親族や身近な大人に聞き取りを行った結果に基づいて、生徒たちはグループで自分が思う「京北らしさ」につい意見交換を行った。「自然が豊か」「地域の人とのつながりがある」「地域の行事がある」「地産地消」といったプラスの面が上げられた。一方、「車がないと困る」「過疎化」「遊ぶところがない」といったマイナスな面もあげられた。
出し合った「京北らしさ」や「自分らしさ」をSDGと関連付けながら、今後、『SDGsの視点を取り入れ、京北のための“withコロナ”イベントを企画、提案しよう』という目標に向かって取り組んでいく予定である。
生徒たちは、担任の先生方の指導の下、京北のいいところと課題を考えた。多くの生徒たちは「京北の自然は豊か」だと発言した。ところが、自然のどこが豊かを尋ねると、答えられない生徒が多かったのが気になった。また、現在8年生はキャリア授業を受けている。生徒たちのキャリアレポート(例えば、将来したい職業の詳細、目標を達成するために今から何をすべきなのかなど)を見たことがきっかけで、キャリア授業と京北SDGsを結びつくことができないかといった考えも浮かんだ。
【参照】京北小中学校WEB出の紹介URL(『8年生 ふるさと未来科 3』【8年生】 2020-09-17 18:06 up、『8年生 ふるさと未来科 4』【8年生】 2020-09-24 16:59 up):https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=118101&no=3
◆2020年9月30日(水)6限(14:20-15:05)8年1組、8年2組
京都大学大学院地球環境学堂准教授浅利美鈴先生とzoomでオンライン授業を行った。
まず、浅利先生からは、先生が学生のときから取組んできたことや、エコ〜るど京大でのSDGsの取組、そして現在の京北SDGsでの取組などについて教えてもらった。
そこからヒントを得つつ、生徒たちに京北SDGsイベント(仮)を考えるトレーニングと称した個人ワークを行った。トレーニングは次の4つの部分から構成される。
(1)2030年頃、自分はどうなっている?
(2)このままいくと、2030年頃、京北地域はどうなっていく?
(3)2030年頃の京北は、一番避けたい状況と一番守りたい状況は?
(4)考えてみた感想やわからなかったこと、もっと知りたいと思ったこと。
生徒たちは、これらについて各自、順に紙に書いていってもらった。
最後に、数名の生徒たちが、これまでの授業で考えてきた身の回りのSDGSについて発表した。
生徒たちが書いた「京北SDGsイベント(仮)を考えるトレーニング」から見ると、自分のことや京北のことについて、多くの生徒たちが、しっかり考え、表現できていたと感じた。しかし、自分のことと京北の未来について結びつけて考えたり、京北の未来について、自分ができることを考えたりすることは、難しそうであった。つまり、SDGsの視点を用いて、「自分と京北の未来の結びつき」を導くことがこれからの重要な課題と考えられる。
写真の説明:京都大学大学院地球環境学堂准教授浅利美鈴先生とzoomでオンライン授業。
【参照】京北小中学校WEB出の紹介URL:(『8年生 ふるさと未来科 5』【8年生】 2020-10-01 08:15 up):
https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=118101&no=1
文責:張馨キ(京都大学大学院地球環境学堂・研究生)