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【京大!バイオスクープ file1】4月の木 楠、樟 -クスノキ、クス

2023.04.05

学び 京大!バイオスクープ

新しい企画、「京大!バイオスクープ」をスタートします!
京大!バイオスクープとは、京都大学構内で見られるいきものについての情報を発信する企画です。
紹介するいきものは、木、鳥、昆虫、野草などなど…様々な生き物を紹介していきます。
毎日目にするけど、実は知らないいきもののあれこれについて、ちょっと詳しくなってみませんか?身近な自然に目を向けてみると、新たな発見があるかも..?!
毎週ほぼ月曜日にひとつのいきものについて紹介します。HPをチェックしてください!

文責・清水

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら京大時計台前の木ってなんですか?」
そのお答えは「クスノキです」ただそれだけですが、このクスノキ、ちょっとおもしろいことがあるんです。見ていきましょう!

2023/03/19撮影

楠、樟 -クスノキ、クス
学名 Cinnamomum camphora クスノキ科
開花時期 5~6月
@吉田キャンパス本部構内時計台前

 

クスノキは暖かい地域に生息する常緑 (=冬も含めて1年中葉をつける) 広葉 (=広く平べったい葉をしている) 樹です。日本では西南部、特に九州に生えています。
クスノキを御神木とする神社は多く、古くから日本人と関わりがある木です。日本人の苗字に使われることもあります。例えば後醍醐天皇の忠誠な臣下として名高い楠木正成がいます。
日本人の生活と文化に深くかかわるクスノキについて、少し詳しくなってみましょう!!

へえ☆「京大のクスノキは実は2代目」

 

京都大学の時計台の前に生え、のびのびと枝を伸ばし、我々に木陰を与えてくれているあの木はクスノキです。このクスノキは京大の校章のデザインにも採用されています。昼休みには多くの人が訪れ、その下でご飯を食べたり、お喋りをしたりしています。
実はこのクスノキ、2代目なのです。1934年の台風で初代の木が折れ、その後に植えられました。現在の物は1935年に植えられたと推測されています。2023年には樹齢88年になるのです!

また、クスノキの広場にあるカフェレストラン カンフォーラはクスノキの学名「Cinnamomum camphora」の camphora にちなんでいます。お得なお値段でおいしいランチを食べることができるので、ぜひ訪れてみてください!

 

へえ☆☆「昆虫を寄せ付けない香り」

樟脳の構造式

 

クスノキは樟脳と呼ばれる成分を含みます。この分子式はC10H16O。特有の香りを持つ半透明白色の有機物です。クスノキの幹や根、葉を蒸留することで手に入れることができます。今では化学合成技術を用いて人工的に作られる樟脳が天然の物より主流です。

そんなことはさておき、昆虫は樟脳の香りを嫌います。よって樟脳は防虫剤として有名で、衣服や書画の虫食い防止に使われていました。防虫剤とは殺虫剤と異なります。服や紙などを守るためには、虫を殺すことではなく、そのものに触れさせないことが重要なのです。樟脳が防虫剤として用いられる理由の一つに、適度に揮発して、ガスが空間の中で漂うおかげで、保存品に虫を寄せ付けないことがあります。また、無臭ではなく特有な香りがあることも、樟脳がよく充満していることを知ることができるため、一つのメリットです。

 

へえ☆☆☆「史上初のプラスチック」

 

セルロイドをご存じでしょうか。セルロイドは硝化綿 (ニトロセルロース) に樟脳を25~35 % 混ぜた史上最初の人工樹脂です。常温で強い弾力があり、85 ℃以上で軟化し、冷やすと固まります (=熱可塑性)。印刷や転写がしやすく、また加工や扱いが容易なことから、写真のフィルムやおもちゃの人形、洋服のボタン、万年筆の筒など幅広く用いられました。現在はその可燃性の高さが危険であることと、他のプラスチックの発展によりセルロイドは衰退していきました。加工のしやすさはプラスチックよりも優れていますが、現代で 使用されている製品はギターのピックなどごくわずかです。

セルロイドの燃えやすさは火災事故の主要原因となったこともありました。消防法では第5類危険物として規制対象物にしていされています。
しかし、植物由来の樟脳を含んでいるからこそ、プラスチックとは異なる風合いや光沢を持ちます。今では生活の中で関わることが少ないセルロイドですが、ギターピックを見たときには、クスノキがもたらしてくれる独特の美しさを感じ取りたいものです。

 

 

京大生ならほぼ毎日といってもいいほど目にするクスノキですが、知らないこともたくさんあったのではないでしょうか?今度クスノキを見たときには、防虫剤であることと史上初のプラスチックであることを思い出してくれると嬉しいです!

 

クスノキは生活を便利にしてくれた。

 

参考文献

・京都大学概要 (2008), p1 https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/static/ja/issue/ku_profile/documents/gaiyo2008-285d1bd9623138b45038c94201a97d45.pdf
・矢野憲一, 矢野高陽. ものと人間の文化史 151・楠 (2010). 法政大学出版局.
・i-MAKER. セルロイドの特性と用途 歴史上最初のプラスチック (2016/1/14). 2023/2/28アクセス. https://i-maker.jp/blog/celluloid-8946.html
・BIOTIC. クスノキと樟脳 (n.d.) 2023/2/28アクセス. https://biotic.co.jp/column179/

 

———–以下お知らせ————–

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また、京大!バイオスクープでは、京大内にあるいきものの疑問や気になることの調査依頼をお待ちしております。こちらも同様にご連絡ください。SNSのコメントやこちらのお問い合わせにお送りください。

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