文責・喜安
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「ウグイスの鳴き声、”ホーホケキョ”だけじゃないって本当?」
ウグイス(鶯、報春鳥)
スズメ目ウグイス科
学名:Cettia diphone
全長:14~15.5cm
分布:全国
季節:漂鳥または留鳥
環境:平地から山地の森林
場所:吉田キャンパス北部構内旧演習林事務室の東側、理学部植物園
「ホーホケキョ」というウグイスのさえずりを聞くと、春の訪れを感じる方も多いと思います。ウグイスは「春告げ鳥」とも呼ばれ、日本三鳴鳥(鳴き声がきれいな鳥BEST3)の一つに選ばれるなど(他にはオオルリとコマドリ)、古来から日本人に親しまれてきました。そんなウグイス、実は「ホーホケキョ」だけでなく、色んな鳴き方があるみたいです…!
へぇ☆「実は冬でも鳴いている」
実は、ウグイスは冬でも鳴いています!確かに「ホーホケキョ」という声は春に聞かれます。でもこれはあくまでウグイスの鳴き声の一つで、繁殖期にオスが求愛や縄張りの維持のために鳴く「さえずり」です。ウグイスに限らず、多くの鳥にはさえずりの他に「地鳴き」という鳴き方があります。ウグイスの地鳴きは「チャッチャッ」という地味な声。冬によく聞かれ、京大でも盛んに鳴いていますよ!他にも繁殖期のオスが「ピロロロロ…」と鳴く、谷渡りと呼ばれる鳴き方もあります。
へぇ☆☆「さえずりの練習期間がある」
春先のウグイスの鳴き声は「ホーホケキョ」という完全なさえずりではなく、「ホー」や「ホーホケ」など、中途半端なことがあります。これは「ぐぜり」という鳴き声で、若鳥がさえずりを学習する過程で鳴く不完全なさえずり(サブソング subsong) のことです。ウグイスも自慢の美声を披露するために、一生懸命練習しているのです。
へぇ☆☆☆「方言がある」
ウグイスのさえずりには地域差があります。一種の「方言」というものでしょうか。一般的に島しょ部では「ホーホケ」という単純な声になることがあります。これは、本州では冬になると個体が移動し、毎年新しい相手を見つける一方、島しょ部には一年中同じウグイスがいる傾向にあることが原因です。つまり、本州では毎年相手を見つけるため、頑張ってさえずる必要がある一方、島しょ部では頑張ってさえずらなくても相手が見つかるため、単純なさえずりでも十分であるということなのです。
ウグイスの鳴き声といっても、様々なパターンがあることがお分かりいただけたと思います。今度ウグイスが鳴いていたら、是非鳴き声に耳を傾けてみてください!ちなみに、ウグイスは警戒心が強く、薮の中で鳴いていることが多いです。そのため、見つけるのはなかなか難しい!筆者も、「声はするけど姿は…」という経験を何度もしております。美しいさえずりなのに、姿が見られないことが、よりウグイスの魅力を引き立てているのかもしれませんね。
ウグイスの鳴き声は、「ホーホケキョ」だけではなかった。
参考文献
国立科学博物館. “鳥類音声データベース”. https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/birdsong/bird.php?name=%E3%82%A6%E3%82%B0%E3%82%A4%E3%82%B9
千葉の県立博物館. “用語解説”
https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/sound_sample_box/html/glossary.html
蒲谷鶴彦. “日本野鳥大鑑 増補版 鳴き声420”. 小学館. 2001, 447p.
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