エコ~るど京大

全員参加型で環境負荷を低減する「持続可能なキャンパス」の実現を目指します

 » 【京大!バイオスクープ file 29】11月の野鳥 ジョウビタキ

【京大!バイオスクープ file 29】11月の野鳥 ジョウビタキ

2023.11.13

学び 京大!バイオスクープ

文責・喜安

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「冬になるとよく見かける、オレンジと銀色の小鳥は?」

冬になると「ヒッ、ヒッ」、「カッカッ」という声で鳴く、頭が銀色で腹がオレンジ色の小鳥を見たことはありませんか?それは冬の小鳥の代表ともいえるジョウビタキです!今日はそんなジョウビタキについてご紹介します。

ジョウビタキ
スズメ目ヒタキ科
学名  Phoenicurus auroreus
全長 14-15cm
分布:全国
季節:冬鳥(局地的に繁殖例あり)

農学部グラウンドの北の道

 

 

へぇ☆「冬にやってくる小鳥」

 ジョウビタキは、ロシア等の北方で繁殖し(近年、北海道や本州の高地などでの繁殖例も増加中)、冬を越すために日本にやってくる冬鳥です。10月ごろに渡来し、3月末から4月中旬に北方へ帰ります。公園や人家の庭など、比較的開けた場所でよく見られるため、観察の機会は多い鳥です。警戒心が少なく、見晴らしの良い杭や枝などに止まります。尾を細かく振る動作が特徴的です。渡来初期はなわばり意識が強く、ジョウビタキ同士の闘争がしばしば発生するほか、鏡に映った自分を、敵と思い込んで攻撃することもあります。身近な鳥で冬になわばりを構えるのはジョウビタキかモズくらいなので、珍しいタイプと言えます。よく聞かれる鳴き声は「ヒッ、ヒッ」、「カッカッ」という地鳴き。なわばりの見回りや採食を頻繁に行う朝に、比較的聞くことが多いです。僕の家の近くもジョウビタキのなわばりの範囲内のようで、最近は毎朝鳴き声が聞こえてきます。綺麗なオレンジ色のジョウビタキは、バードウォッチャーの中でも人気の野鳥です。以前、野鳥専門誌『BIRDER』が行った「新春見たい鳥総選挙」でも、ルリビタキと並び一位に輝きました。余談ですが、僕の帽子についているバッジもジョウビタキです。

 

へぇ☆☆「名前の由来」

 ジョウビタキの古い呼び名は単純に「ヒタキ」でした。文献上は、枕草子に登場するのが初とされています。「カッカッ」という鳴き声が、火打ち石を叩いている音と聞いて「火叩き」と呼び、ヒタキの語源になったそうです。また、「ジョウビタキ」が初めて登場するのは、1604年の「日葡辞書」だそうです。オスの頭部の銀色が、人間の白髪を連想させることから、昔の高齢の男性を呼ぶときに使っていた「尉(ジョウ)」を合わせたという説が有力となっています。ところで、最近バードウォッチャーの間では、ジョウビタキの雄には「ジョビオ」、雌には「ジョビコ」というニックネームがつけられています。

ジョビコ(ジョウビタキの雌)

 

へぇ☆☆☆「渡りの時期について」

 僕はジョウビタキのシーズン初の鳴き声を、直近の3年間では10月20日前後に確認してきました。しかし今年は、10月上旬(正確な日にちは忘れてしまいました)に鳴き声を聞きました。あまりに早いので「空耳かな?」と思っていましたが、10月15日には姿も確認しました。「バードリサーチ」が行っている各種鳥類の初認調査「季節前線ウォッチ」でも、「今年はこの10年では早い年の1つのようである」との分析が出されています。冬鳥の渡りのタイミングは年によって異なることが多い一方、ジョウビタキは毎年規則正しく、同じ時期に渡ってくる傾向が高いです。そのため、今年の傾向は意外だなと感じています。渡りが早くなった理由は謎ですが…。

 ちなみに、ジョウビタキが毎年同じ時期に渡ってくる理由としては、ジョウビタキは日本で縄張りを構えるため、越冬地に早く着くことを重視しているからという仮説があります。一般的な冬鳥は縄張りを持たず、南下のタイミングは北方の木の実の豊凶や積雪の多少によって判断しているため、年によって変動するそうです。あくまで仮説ですが、面白いですね。

 現在、ジオロケーターやGPSといった機器を装着し、渡りの謎を解明しようとする研究が進んでいます。ジョウビタキの渡りについても、今後明らかになっていくかもしれませんね。来年以降の渡りの時期にも注目していきたいです。ところで、ジョウビタキの他にも、ツバメやホトトギス、キビタキやカモの仲間など、渡りを行う野鳥はたくさんいます。そのような野鳥に注目しておくと、季節の移ろいを感じることができて楽しいですよ!

ジョウビタキは人気の冬鳥です!

 

参考文献

蒲谷鶴彦. “日本野鳥大鑑 増補版 鳴き声420”. 小学館. 2001, 447p.

永井真人. “♪鳥くんの比べて識別!野鳥図鑑670 第4版”. 文一総合出版. 2023, 399p.

“BIRDER 2022年1月号 新春 見たい鳥総選挙”. 文一総合出版. 2023, 36(01), 80p.

“BIRDER SPECIAL ジョウビタキ・ルリビタキ・オジロビタキ”. 文一総合出版. 2021, 80p.

バードリサーチ. “バードリサーチ 季節前線ウォッチ2023”. https://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/kisetsu_kekka.html
(2023年11月5日閲覧)

日本野鳥の会東京. “ジョウビタキの名前の歴史と謎”. https://wbsjt.jimdo.com/contents/column25/
(2023年11月5日閲覧)

ネイチャーランド能勢. “野鳥図鑑~小柄な冬鳥『ジョウビタキ』~”.
https://natureland-nose.com/bird/news_bird/3520/#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%80%81%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%80%8D,%E9%96%93%E8%BF%91%E3%81%A7%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%80%82
(2023年11月5日閲覧)

 

————以下お知らせ————–

へえ☆4つ以上の情報をご存じの方は、是非SNSでコメントの投稿をお願いします。みなさんの「へぇ」知識の共有をお待ちしております!

また、京大!バイオスクープでは、京大内にあるいきものの疑問や気になることの調査依頼をお待ちしております。こちらも同様にご連絡ください。SNSのコメントやこちらにお送りください。

新着情報

【京大!バイオスクープ file39】11月の木 イチョウ

文責・笹井 複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「知ってるようであまりよく知らない銀杏について知りたい!」 秋に街に咲く花といえばイチョウですよね。 […]

学び 京大!バイオスクープ

2024.11.13

【京大!バイオスクープ file 38】 陸貝(カタツムリとかナメクジとか)【前編:陸貝の身体】

文責・島田草太朗 複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「カタツムリはどうやって歩いているの?」 陸貝 陸生の軟体動物(貝類;Molluscs)のこと。 […]

学び 京大!バイオスクープ

2024.11.05

【京大!バイオスクープ file 37】10月の木 モクセイ

文責・清水 複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「キンモクセイとギンモクセイって何が違うの?」 モクセイ 学名Osmanthus fragrans モ […]

学び 京大!バイオスクープ

2024.10.19

NO PHOTO

【イベント出展】オリジナルエコバッグづくり体験 @洛北阪急スクエア

9月7日(土)に洛北阪急スクエアにエコ〜るど京大が出展します! 洛北阪急スクエア地下1階のコミュニティルームにて実施します。端切れやクレヨンなどを使って自分だけのオリジナルエコバッグを作りましょう! 事前予約をグーグルフ […]

お知らせ

2024年9月7日~2024年9月7日

2024.08.19

終了しました

ページの先頭へ