文責・永田
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「京大構内で紅葉を楽しみたいです!」
12月も中旬に差し掛かり、紅葉シーズンも終盤ですね。
紅葉といえば、モミジやカエデが有名ですが、今回はメタセコイアをご紹介します。
メタセコイアは11月中旬から紅葉し始め、12月初旬には見頃を迎えます。
今年、紅葉を満喫できていないという方も、今ならまだ間に合います!
京大構内にも理学部2号館南側に立派なメタセコイアの木があるのですが、そもそも人通りが少なくあまり認知されていないように感じるので、この記事を読んで是非一度足を運んでみてください!
メタセコイア(別名:アケボノスギ)
ヒノキ科メタセコイア属
(かつてはスギ科とされていたが、最新の分類体系ではスギ科はヒノキ科に含められている)
学名:Metasequoia glyptostroboides
原産地:中国南西部
開花時期:2~3月
@吉田キャンパス 北部構内 理学部2号館南側
へぇ☆「珍しい!落葉針葉樹」
多くの針葉樹では、葉の表面積を小さくすることによって、光合成能力は下がるものの、気孔の数を減らすことが出来るために常緑性となっています。しかし、メタセコイアは針葉樹の中では珍しい落葉性となっています。
そして落葉性であるからこそ、秋に一斉に紅葉して美しい姿を見せてくれるのです。メタセコイアの紅葉の特徴は、モミジの赤ともイチョウの黄色とも違う、独特のオレンジ色になることです。実は、一口に紅葉といっても、赤色になるもの、黄色になるもの、オレンジ色になるものとそれぞれ仕組みが少しずつ違っており、これらをそれぞれ「紅葉・黄葉・褐葉」と呼んで区別することがあります。
メタセコイアでは、主に「褐葉」が起こります。
「褐葉」は、気温が低くなって緑色色素のクロロフィルが分解されると、蓄積していたタンニン系の物質やそれらが酸化重合したフロバフェンという褐色物質が目立つことによって起こります。
また「黄葉」についても「褐葉」と似たようなメカニズムでクロロフィルが分解されたときに、蓄積していたカロテノイドという黄色色素が目立つことによって起こります。一方、「紅葉」の場合は他二つとは違い、クロロフィルが分解されて、新しくアントシアニンという赤色色素が合成されることによって起こります。アントシアニンが合成されるのは、樹木を紫外線から守るためと言われていますが、詳しい理由はまだよく分かっていません。
ただ、こうした「紅葉・黄葉・褐葉」は明確に区別できるわけではなく、これらが複雑に起こることで美しい色を作り出していることが多いので、総称して「紅葉」と呼ばれているのです。
へぇ☆☆「単葉か複葉か」
植物の葉の付き方を見る場合、葉全体が1枚の葉身からなる(=単葉)か、2枚以上の葉身からなる(=複葉)かを判断する必要があります。メタセコイアの葉は、写真のような葉の付き方をしており、青で囲った細長い単位が1枚の葉(=単葉)なのか、赤で囲った単位が1枚の葉(=複葉)なのかが分かりづらいです。
メタセコイアは赤で囲った単位で落葉し、通常葉は1枚の単位で落葉するため、複葉であるように思われます。
仮にメタセコイアの葉が複葉であると仮定すると、各小葉(=青の単位)は平面に並ばなければならないという条件が生じます。
しかし、メタセコイアの葉の根元を見ると、細い軸に対生の葉のペアが90°ずれながら付いていることから、十字対生という立体構造になっていることが分かります。つまり、メタセコイアの葉が複葉であるとすると矛盾が生じるのです。ゆえに、メタセコイアは単葉であると判断できます。
メタセコイアが赤の単位で葉を落とすのは、落枝性というヒノキ科特有の性質で、枝ごと落としているためです。
メタセコイアの木の下には、赤の単位で落ちた枝をたくさん見ることができます。
へぇ☆☆☆「生きた化石」
メタセコイア属は、1941(昭和16)年に大阪市立大学教授の三木茂博士によって、化石をもとに新属として学会発表されました。メタセコイアは新生代第三紀(6500 万年前〜200 万年前)に栄えた植物であり、当時は化石しか見つかっていなかったため、既に絶滅したと考えられていました。しかし、その後1946(昭和21)年に中国で、生きたメタセコイアの樹木が発見され、「化石が生きていた!」ということで一躍有名となりました。
京大構内で紅葉を楽しむなら、メタセコイアを見るべき!
参考文献
佐伯 肇. 樹木の年金生活(冬を迎える樹木の知恵)について.「立山りんどう会」吉峰研修会 資料. 2020. https://saekitreedr.com/wp-content/uploads/2021/01/a2f46cb6dcc553c2a7d456dd8fab3c06.pdf
塚越 実, 岡野 浩. メタセコイアの本性を探る: 植物の多面的観察. 地学教育と科学運動. 2016, 76, p.33-42. https://doi.org/10.15080/chitoka.76.0_33
塚越 実. “メタセコイア 複葉それとも単葉? ~大阪動植物海洋専門学校~”.大阪動植物海洋専門学校.2019.http://www.oao.ac.jp/16997/,(参照 2023-11-19).
姫路科学館.生きた化石 メタセコイア. 科学の眼. 2007, 410, https://www.city.himeji.lg.jp/atom/research/manako/410_s.pdf
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