- 皆さんこんにちは。
- 今回は、京都大学大学院地球環境学堂教授の松下和夫先生にお話を伺って参りました。本当に多くの経験を積まれている先生で、お話を聞いていて、私もとてもわくわくさせていただきました。
それでは、インタビューの方をどうぞ!
◆ 授業や研究室ではどのようなことを教えられていますか?
学部の講義では、全学共通科目の環境政策論Ⅰ・Ⅱ、それと地球環境政策特論というのを教えています。環境政策論Ⅰは毎年500名くらいの方が受講を希望されて、抽選科目になっていますね。前期には日本の戦後の環境問題やその対策・政策の話をして、後期は地球という範囲に広げて、国際的な環境問題や気候変動、温暖化問題などに焦点を当てて、条約や各国ごとの取り組みを見ていきます。その関係で、国と対比して地方や自治体の取り組み、市民やNGOの取り組みにも注目しています。
環境政策論Ⅱは、20名ちょっとくらいで、ゼミのような形式でやっています。簡単に講義をしてから、学生さんには4、5人のグループに別れてもらってグループ毎の報告と全体でのディスカッションをしてもらっています。前期は持続可能な社会作りやエネルギー問題などを題材にして、後期は原発問題や生物多様性について深く勉強をしています。
大学院の方では、地球環境学舎で、1回生の前期に地球環境法・政策論という科目を教えています。この講義は英語で行なっていて、『Global Environmental Governance』という参考書を用いています。学生は40人くらいで、地球規模での持続可能な発展を実現していくための仕組みを見ていくために、各国の政策やNGOの活動などの、地球環境に関する法・制度的な枠組について研究しています。
◆ 研究室の雰囲気はどんな感じでしょうか?
基本的には、学生の主体性を重んじた形式を取っているので、みなさんに自分の関心があるテーマにつき調査・研究したことを発表し議論する時間を積極的に取っています。また地球環境学舎(大学院)全体でカリキュラムとして、1回生の後期に必修で3ヶ月程度の企業や官公庁、国際機関などへのインターンシップがあります。今年は、東京都の排出量取引制度を研究している学生や、インドのNGOに所属して水問題について調査をしている学生がいますね。あ、ちなみに、合宿旅行にも行きます(笑)。フィールドワークや現地視察を兼ねて行きます。訪問先では卒業生が働いていたり、インターンをしている学生がいて、案内してもらったりします。去年は長野県の飯田市、今年は花背交流の森に行きました。大学での勉強や研究も大切ですが、実際に現場を見るということもとても大切だと思います。
◆ 学生時代のお話を伺ってもよろしいでしょうか?
私は1960年代末から1970年代初めにかけて東京大学の経済学部にいました。最初は環境問題が専門ではなかったのです。当時は高度経済成長時代で公害等の問題が深刻でした。経済学部で勉強していてふと、「経済の活性化だけでは人々は幸せを得られないな」と思ったのです。東京大学には公害自主講座というのがありました。そこに参加するようになって、環境問題に携わるようになっていきました。東京大学を卒業してからは、当時はまだできたばかりの環境庁に勤めました。その頃は自然保護の問題も注目されるようになり、その法律策定に関わっていました。
その後、アメリカや日本等で光化学スモッグが深刻化するということがありました。それを受けて、アメリカでは原因物質である窒素酸化物を10分の1に抑えようという規制(マスキー法)の動きがありました。当時の日本はアメリカに自動車を多く輸出していましたから、規制をクリアしないと自動車が輸出できないということで、日本でも排気ガス規制を実施することになりました。日本の自動車メーカーは大反対をしましたが、規制はなんとか実施されました。でも、この規制があったことによって、日本の自動車の燃焼技術は大幅に向上しました。今もなお日本が高い自動車技術を維持していることに、少なからず繋がっていると思います。このことからも、環境対策を先取りしていくことによって、環境と調和したよりよい経済発展ができるという考え方を持つようになりました。
1990年頃からは、地球サミットの開催に向けてジュネーブの事務局に勤めていました。そして、その後、2002年から京都大学にできたばかりの今の地球環境学堂に勤めることになりました。地球環境学堂は、今年で10周年になるんですよ。
◆ 今は、どんな活動をされているのですか?
環境首都創造ネットワークという組織ができ、環境に熱心な市長さんの集まりがあります。長野県飯田市や、熊本県水俣市、静岡県掛川市、山口県宇部市などの市長さんが集まります。それに関わらせていただいています。持続可能な町づくりを考えるといったような勉強会も行なっています。また、市と学生をつないで、学生をインターン生として送り出したりもしています。国際社会での取り決めや、国の政策も重要ですが、地域の現場から取り組むこともとても大事です。現在はそうした取り組みにも力を入れています。
インタビューは以上になります。
特に、学生時代、そして大学を卒業してからのお話は、本当にわくわくするようなお話でした。そして、自身の経験からも、やはり机上の勉強だけではなく、実際に現場を見ていくということが大切であるとおっしゃっていました。地球環境学堂では必ずインターンシップをするというのは僕も今回はじめて知りましたが、とても良い制度だと思います。
- それでは、短い記事ではありますが、今回はこれにて失礼します。
- 今回ご協力いただいた松下和夫先生、ありがとうございました!
- また次回の記事をお楽しみに!
文責:奥本隼也