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【京大!バイオスクープ file39】11月の木 イチョウ

2024.11.13

学び 京大!バイオスクープ

文責・笹井

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「知ってるようであまりよく知らない銀杏について知りたい!

秋に街に咲く花といえばイチョウですよね。

北部構内の銀杏並木は私のお気に入りスポットの1つでもあります。

イチョウ
学名Ginkgo biloba
原産地:中国
開花時期:4月ー5月頃

 

へえ☆「栄養満点のパワーフード」

実は銀杏は、「生命力のある食べ物」と呼ばれるほど栄養に優れた木の実と言われています。食べられるということは知っていても、実際に食べたことない人も多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人。ということで実際に大学構内の銀杏を食べてみることにしました。

水につけた銀杏の外種皮を剥いて数日置くと、お店でもみるようなあの姿になります。そこからハンマーでひびを入れて電子レンジで温めると、綺麗な緑色の実が姿を表します。

私は炊き込みご飯にしていただきました。鮮やかな緑色が映えますよね!塩昆布と相性がよく、かなり美味しい。銀杏にはβ-カロテンが豊富にあり、紫外線による老化防止やシミ予備軍の減少が期待できるほか、キノコ以上の含有量を持つカリウムは、高血圧やむくみ、脱水症状を緩和する働きがあるとのこと。美味しく、健康にもなれるなんて一石二鳥ですね。ただし、食べ過ぎには注意してください。銀杏の種子にはビタミンB6の働きを阻害する「メチルピロドキシン」が含まれており、過剰摂取は最悪の場合、痙攣を引き起こす可能性があります。ついついたくさん食べたくなりますが、10粒程度を目安に食欲を抑えましょう!

 

へえ☆☆「お父さんの靴下と使用済み天ぷら油」

イチョウといえば独特のあの匂いですよね。銀杏のあの匂いは、おもに​​「酪酸(ラクサン)」と「エナント酸」の2つです。そして酪酸は「蒸れた足から発せられる悪臭の原因物質」だそうです。これって誰もが経験のある「お父さんの靴下のあれ」ですよね。そして「エナント酸」は「腐った油の匂い成分の一部」。これは「油回収ボックスから漂うあの匂い」ですね。これらのコラボレーションとは、臭いはずですね、、しかし、この臭さもただの嫌がらせではなく、立派な生存戦略です。一説にはぎんなんから悪臭がするのは、根こそぎ食べ尽くされないようにするためと言われています。たしかに、もしぎんなんがいい香りだったら・・・サル達が集団でやってきてかぶりつき、種はその辺に捨てられて広がらなかったかも。繁殖するためにターゲットを絞ることで食べてもらう「臭い作戦」の成功ですね。

 

へえ☆☆☆「長寿の秘密が解明」

 

イチョウにも花はあります。花があれば当然花言葉もあるわけですが、最も代表的なのは「長寿」です。この花言葉はイチョウが非常に長生きすることから生まれたものです。中には、1000年以上生き続けることもあるのだとか。中国西安の古観音禅寺では、樹齢1400年と言われるイチョウが有名な観光スポットとして、人々を賑わしています。

画像はhttps://tabi-labo.com/213927/chinese-ginkgoよりお借りしている。

“黄金色の絨毯”と呼ばれているそう。行きたい。

 

なぜこんなにもイチョウは長生きなのか、中国の研究チームが数年前にこの謎の一端に迫る研究結果を発表しました。揚州大学銀杏研究チーム、北京林業大学林金星氏のチーム、林木分子設計育種先端センターの協力で、年輪測定技術とDBHs(樹木の胸高直径)※1 を結びつけて、老木と成年の木を比較分析したところ、老年の木は、新たに生まれる年輪の幅が狭くなるとはいえ、幹の横断面積の増加水準が高いままだったことがわかったそうです。幹の横断面積とは、木を輪切りにした時の断面の面積。つまりどういうことかというと、本来徐々にゆっくりになるはずの幹の細胞分裂が、他の樹木に比べて圧倒的に活発であるということです。

さらに同研究は、​​銀杏の老木の維管束形成層の細胞の中で、リグニンモノマーの代謝ルートの遺伝子の数と発現が減少していないことも発見しました。リグニンとは、幹の細胞同士を接着し、幹の強度をあげる働きを有しています。つまり、老いても細胞分裂し、成長し続ける幹を支えるように、リグニンも生成され続けていることがわかります。これらの研究から、様々な物質や細胞がイチョウの持続的な成長を支えていることがわかりますね。

画像は「木材の成分(農林水産省広報誌aff 2022年9月)」よりお借りしている。

イチョウは生存のために数多くの工夫が凝らされた、たくましい植物だった!

 

※1樹木の胸高直径とは、地面から1.2、3mの高さの直径のこと。

 

参考文献

「銀杏は栄養豊富のパワーフード!知られざる栄養と食べ過ぎの中毒について解説」PREZO
https://prezo.jp/column/4458

「イチョウ葉エキスの効果と副作用」教えて!慎太郎先生
https://www.rakuten.ne.jp/gold/pycno/special/ginkgo_biloba.html

「1400齢のイチョウの木。「黄金色の絨毯」に圧倒される」TABIRABO
https://tabi-labo.com/213927/chinese-ginkgo

「ぎんなんが臭い!ちょっと謎なその理由とは?美味しいけれど毒があるって本当?」
Tenki.jp うさぎだ りすえ https://tenki.jp/suppl/usagida/2020/11/17/30068.html

「中国の科学者が銀杏の長寿の秘密を解明」science portal china
https://spc.jst.go.jp/news/200102/topic_5_04.html

「長寿の木イチョウの花言葉は?由来は?」FLOWER
https://flowr.is/articles/116#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%81%AE%E8%8A%B1%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E9%95%B7%E5%AF%BF%E3%80%8D%E3%80%81%E3%80%8C%E9%8E%AE%E9%AD%82,%E3%82%92%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

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