●エネルギー等使用量把握・公開の道のり
桂キャンパスでは、「キャンパス全体」「建物群(クラスター)毎」「棟毎」さらに、「(おおよそ)研究室毎」の電力・ガス・上水使用量を計測している。計測値は工学部・工学研究科のWEBページ上で公開しており、学内からであれば「キャンパス全体」「建物群毎(クラスター)」「棟毎」の使用量を確認する事ができる。また、工学研究科の教職員であれば、工学研究科附属情報センターが教職員に発行しているKEIDを入力することで、所属研究室等の電力・ガス・上水使用量を見ることが可能である。
昨年度(平成20年度)からは、所属している研究室の電力使用量を目にする機会を増やすために、紙媒体の電力使用量通知表を作成し、配布をしている。また、学生でも所属する研究室の電力・ガス・上水の使用量を確認できるように、各研究室にKEIDを発行した。
●使用量削減のための調査
昨年(平成20年)の秋に各研究室(112研究室)に省エネルギーに対する取り組みについてのアンケート調査を行った。
調査方法は、「照明」や「空調」「待機電力等(の削減)」「(学生への)啓発」「その他」の5項目を設け、それぞれの項目に対応する省エネ行動に関して「実施しているか」「今は実施していないが、今後実施する(実施してもよい)」「実施しない(できない)」について回答を得た。
(回収率:78/112 69.6%)
○現在実施できている省エネルギー行動(実施している、という回答が多かった項目と割合)
・退室時の消灯 97%
・空調停止 92%
・ブラインド等による日照遮断 70%
・こまめな消灯 68%
・少人数時の部分消灯 61%
○今後実施を促したい活動 (今は実施していないが今度実施する(実施してもよい)、という回答が多かった項目と割合)
・WEB検針システムの省エネ活動促進への利用 58%
・ベース電力の把握による節電 47%
・機器等の待機電力カット(スイッチ付タップ利用含む) ? 39%
・シーズンオフにエアコンコンセントを抜く ? 39%
・パソコン・ディスプレイの省エネモード設定 36%
このアンケートの結果、照明や空調機等の消し忘れ防止についてはほとんどの研究室で取り組んでおり、省エネに対する基本的な意識は高いことが確認できた。また、今後実施する意欲のある取り組みとして、教育研究等の活動時間外の電力カットも確認できた。この部分についての取り組みは実施の協力が得られやすいことが表れていると考えられることから、重点的に進めていきたい。
●使用量削減のための取組
桂キャンパスのWEB検針によるデータは、分電盤毎(盤内に単相と三相が混在すればそれぞれ)に設置されたメータからのデータを研究室を最小単位として集約したものである。集約前のメータ毎の記録も残るが、教員室や実験室などの部屋単位ではない。メータによっては、結果として一部屋を計測している場合もあるが、複数の部屋をまとめて一つのメータで計測している場合や、実験室内の特定の機器を計測している場合もある。
電力使用量の結果を省エネ対策として活用するという観点から言えば、電力使用量が飛び抜けて大きい装置や、特定の分電盤から給電している機器数が少ない場合には原因となる機器を特定しやすい。従って、運用時間の短縮、設定変更、より電力使用量の少ない機器への買い換え等の対策が立てやすく、また効果を検証しやすい。ところが、一つの分電盤から電力使用量の小さな多数の機器に給電している場合には、総量が多くても計測結果を基に対策を練るのは困難であると言える。
この問題に対して、昨年度、電化製品毎の電力使用量を計測できる計測器(ワットアワーメータ)を購入し、各専攻に配布した。この計測器は1500Wまでの電気容量(通常のコンセント)に対して使用可能であり、実験室にある機器であっても多くの機器を計測することが可能である。また、これには累積時間を計測する機能もあり、ある機器の設定変更などを行った場合の前後でどの程度省エネ出来たか等を検証することができる。
一方、WEB検針システムから比較的簡単に把握出来る数百kWhオーダーの実験設備として、恒温恒湿型の空調機がある。昨年は使用している研究室に対して、実験に差し支えのない範囲での設定変更を呼びかけ、何台かは停止することも可能であった。
以上のように、桂キャンパスでは電力・ガス・上水の使用量を計測しており、その結果を構成員がいつでも見られる状態にあるが、残念ながらそれだけでエネルギー消費量を削減できるわけではない。今後も、削減行動に結びつくデータの提供と活用方法を検討していきたい。
特殊空調(恒温恒湿室)の設定変更による電力使用量の削減
恒温恒湿室についての省エネ方針
1.恒湿が本当に必要か検討する。(恒湿機能を稼働させると恒温のみ(湿度成り行き)に比べ格段に電力使用量が増える。単に結露を防ぐだけなら恒湿機能を使わなくても設定温度を変えるだけで回避できる場合が多い。)
2.恒湿運転する場合、冬季はもちろん夏期も設定温度を低めにした方が良い。(恒湿運転している場合、一般的には外気温によらず設定温度を上げると電力使用量が増える。どの程度に設定すべきかは、状況次第なので試行錯誤が必要。)
3.設定範囲を可能な限り緩くする。(設定温度1℃以内を2℃以内とするなど)
2に関しては、昨年10月初旬に設定温度を25℃から26℃に変更しただけで電力使用量が30 %程度増加した実例がある。この時期の外気の平均気温は17~18℃、 最高気温の平均は23℃で、居室であれば空調は不要であるが、恒温室では内部の熱負荷のため幾分冷房気味であったと推定される。
設定相対湿度を一定に保ったまま設定温度を高くすると、高温ほど絶対湿度が高いため、より多くの水蒸気を注入しなければならず、より多くのエネルギーが必要となる。露点飽和方式(除湿のみで水蒸気を追加しない場合)であっても、水の蒸気圧曲線は高温ほど立ち上がるので、設定温度が高いほど除湿のための冷却時の温度差を大きくしなければならない。また、絶対湿度が高いほど空気の含む熱量は大きくなる。いずれの理由によっても設定温度が高いほど電力使用量は増える方向となる (ただし、これらの理由だけで以下の例の1℃で電力使用量30 %増は多すぎるように思われる。おそらく、この空調機の特性による)。
工学研究科附属環境安全衛生センター 大岡(2009年9月29日、2010年1月26日改訂)