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「行動科学」に基づく環境問題のための処方箋研究/藤井 聡【京都大学工学研究科】 (No.8)

2011.01.20

暮らし 学び

あらゆる環境問題には、二つの原因がある。
一つは「構造的原因」であり、もう一つは、「心理的原因」である。
構造的原因とは、「人間の行動環境」に内在する原因を意味する。例えば地球温暖化問題で言うなら、「クルマの性能が悪く、たくさんのCO2が出てしまう」「法律的にクルマ利用が認められているため、人々がクルマをたくさん利用し、その結果、CO2が大量にでてしまう」といった 原因が、構造的原因である。
もう一方の心理的原因とは、「人間の心理」に内在する原因を意味する。例えば、再び地球温暖化問題で言うなら「皆がクルマを使おうと考える心理を持つが故に、皆がクルマを使い、CO2が大量に発生してしまう」「皆がクルマを運転する時に、省エネ運転・エコドライブをしようとは考えないような心理を持つが故に、CO2がたくさんでてしまう」というのが、心理的原因である。

環境問題の解消のためには構造的原因と心理的原因の双方に配慮し続けていくことが不可欠であるが、これまでの環境に関する研究においては、前者の構造的原因に着目した様々な技術開発や環境政策研究が中心的な位置を占めてきた。しかし、後者の心理的原因に着目した政策研究は十分に進められていないのが現状である。
ついてはこうした現状認識の下、本研究室では、とりわけ後者の「心理的原因」に着目した環境政策についての研究を進めている。つまり心理学を中心とする様々な行動科学を基本として、人々の意識や態度の変容を期し、それを通じて環境に配慮した行動への変容を促そうとする様々な「説得的なコミュニケーション政策」の開発を行っている。

その中でもとりわけ本研究室では、交通問題とそれに付随する種々の社会問題の解消を目指して、「過度な自動車利用」を控えるためのコミュニケーション型交通政策「モビリティ・マネジメント」のプログラム開発と実務展開を推進している。この交通政策は、大規模、かつ個別的に、図のようなデータを用いながら人々とコミュニケーションを図ることで、一人一人の交通行動の転換を促すものである。これまで本研究室では、札幌市、和泉市、川西市、猪名川町、帯広市、三木市、明石市、神戸市、富士市等の様々な地域の居住世帯、事業所、そして小学校において、それぞれの現場の交通行政や交通事業所と連携しつつ実務政策を推進してきている。その中で参加者における自動車利用率の平均減少率は12%、平均CO2排出量削減量は19%という実績が上げられている。

  • 図1 クルマからの転換を促すための説得情報例
  • (1)それぞれの「環境に優しい行動」を1年間続けた場合に削減できるCO2。クルマ利用の削減が圧倒的に高い。
  • (2)通勤手段別の肥満者の割合。クルマが他の手段の1.4~1.5倍ほど肥満リスクが高い。

( 『京都大学環境報告書2010』 より )


著書: なぜ正直者は得をするのか(幻冬舎新書)、 公共事業が日本を救う(文春新書)、 社会的ジレンマの処方箋(ナカニシヤ出版)、 モビリティ・マネジメント入門(学芸出版)

受け持たれている講義: 人間行動学

趣味: 磯釣り

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