文責・横井
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「芝生の上の黒いやつ、なんですか?」
パッと見破れたビニール袋に見えますが、手に取ってみると乾燥わかめにそっくりですよね・・・。これ、生物選択の方にはなじみ深い「ネンジュモ」が固まっているものです。
石水母(イシクラゲ)
学名 Nostoc commune シアノバクテリア門,ネンジュモ目・科・属
発生場所:芝生やコンクリートの上
@吉田キャンパス本部構内60 総合研究10号館
タイトルに野草と書きましたが、いきなり草どころか植物ですらないものが来てしまいましたね・・・。ただ、シアノバクテリアは葉緑体の祖先と言われている生物なので、植物との共通点は多いですよ!光合成をしているので、晴れた日の水たまりを見ると泡を出しているのが見られるかも?
へぇ☆「食べられる(らしい)」
見た目がわかめにそっくりなイシクラゲ、実際に海藻のような食べ方ができます!日本でも古くから食べられていましたし、中国ではスーパーで売っていることもあるそうです。食べた人のブログを見る限り、味がかなり薄いらしいので寒天に近いですかね・・・?
とはいえ、草や土の上に生えていることが多いので、いざ採集するとかなり枯草や土が着いてきてしまいます。食べやすいように私も栽培を試してみているのですが・・・意外と難しいです(笑)
へぇ☆☆「窒素固定ができる」[1]
生物基礎では窒素固定*と言えば根粒菌というイメージが強いですが、ネンジュモも窒素固定を行います。なので、パイオニア種としてコンクリートの上にも進出してきます。とはいえ、栄養塩類は必要です。私は水耕栽培のような形で育てていたのですが、水道水で洗った後急に元気がなくなりました。あわてて肥料を加えたところ再び泡をつけ始めました。
*窒素固定: 生物が大気中の窒素ガス(N2)をアンモニアに変えること[2]
へぇ☆☆☆「生命力が非常に強い」
晴れた日にはすぐに干からびて乾燥わかめのようになってしまいますが、しっかり生きています!水を含むとすぐに元に戻りまた光合成を再開します。古い報告ですが、87年前のものが再び活性化したという話もあります![3]また、大きな生物に見えますが単細胞生物がまとまっている生き物なので、手で粉々にしても生き続けます。見た目の気持ち悪さやコンクリートの上に生えていることから雑草扱いされることも多いです。その生命力の強さからかなり厄介らしく、専用の除草剤も通販で売られています。
見た目は気持ち悪いイシクラゲですが、食べることもでき肥料も少なくて済むなかなか優秀な生き物です。Google Scholarで論文を見てみると水素を生産したり、汚染物質を吸着させてみたりと有用な使い道が検討されています。私も栽培に挑戦してみているので、結果はまたこのコーナーでご報告します!
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参考文献
[1]シアノバクテリアによる水素生産 (kanagawa-u.ac.jp)
[2]旺文社 生物事典 五訂版
[3]https://doi.org/10.2307/2481755