文責・清水
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「京大に藤棚ってありますか?」
藤-フジ
学名 Wisteria floribunda マメ科フジ属
開花時期 5月
@吉田キャンパス本部構内総合研究4号館の庭
公園などでみかける藤棚は、この季節の名物ですね。たしかに、京大構内にあってもよさそう、なのに、紫色の花をあんまり見かけない…いったいどこにあるんでしょう?
筆者が吉田キャンパス探してみたところ、本部構内と吉田南で確認することができました!どうやら今年の京大の藤はあまり花が咲かないみたいです。唯一花を見つけたのが先の地図の場所!ほかにも、本部構内文学部の建物の横のピロティや、吉田南総合館(共北、共西とかのところ)の中庭にも藤はありました!藤棚っぽいのはだいたい藤棚でした。
町中でも見られる藤棚ですが、藤にはどんな「へぇ」があるのでしょうか?
へぇ☆「源氏物語」
源氏物語には藤壺という女性が3人が登場します。これは本名ではありません。そもそも、藤壺の名前の由来は、平安京内裏の住居の一つ、飛香舎にあります。飛香舎の中庭には藤が植えられており、ここに住まわれていた妃の呼称となることがありました。源氏物語の3人のなかでは、桐壺帝の中宮となり、光源氏の継母で、光源氏慕われ、その2人について苦悩することになった藤壺の宮が有名でしょう。また藤壺以外にも、源氏物語には「紫の上」という紫にゆかりのある人物が登場します。
他にも源氏物語と藤は深い関係があります。まず、光源氏のモデルとなったとされている藤原道長の名に藤がありますね。その娘の中宮彰子は飛香舎に住まい、藤壺とよばれていました。源氏物語の作者である紫式部はその中宮彰子に仕えていました。そして、平安時代は紫色は最も高貴な色とされていました。冠位十二階の最高位は紫色です。また、源氏物語には藤の記述が20回以上登場します。
源氏物語は、物語の内容にもそのバックグラウンドにも藤が深くかかわっているのです。
へぇ☆☆「鞍馬の火祭」
京都三大奇祭のひとつに、毎年10月22日に行われる鞍馬の火祭があります。街道沿いにかがり火が焚かれ、人々が松明や神輿を担ぎ、かがり火の間を練り歩きます。その起源は平安時代にまでさかのぼります。
この祭りで使う松明をつくるのに、藤を使います。使うのは藤の根です。根の状態によって、表面が滑らかなものはシロフジ、ざらざらしているものはオニフジとよびわけられています。また、藤を一番探しやすい季節はこの花が咲く時期ですから、今のうちに藤のある場所を探しておいて、9月になったら探しておいた場所に藤を採取しに行くそうです。
文字通りの熱狂をいつか見に行きたいですね。
へぇ☆☆☆「藤衣」
藤衣とは、藤の茎(幹)の樹皮を糸に加工して布に織った物のことです。いや、そもそも、藤衣なんて聞いたことがないぞ!そうですよね。そこで、藤にまつわる歌が多数見られる万葉集にはこんな歌があります、
大網公人主、宴に吟える歌一首
須磨の海人の塩焼衣の藤衣 間遠にしあればいまだ着なれず
昔、藤が服に利用されていたことがわかります。藤はつる性なので、糸にする場合はまっすぐに伸びたものでなければありませんでした。それを林から探し出し、表皮と芯の間の柔らかい部分をつかって細く長い繊維を取り出して、糸を作っていました。藤衣はごわごわして肌ざわりはよくなかったようです。
昔は盛んに行われていた藤織りですが、現在では数少ない地域でしか行われていません。京都の宮津市には藤織り保存会が存在して藤織の製品を作っています。公式ホームページ:丹後藤織り保存会 |公式ホームページ (fujiori.jp)。行きたい。
見て楽しむだけの藤棚の藤は、物語の要素となり、祭りを彩り、生活の一部でもあったのですね。今度藤はを見たときにはその趣と素材としての特徴に目を向けてみませんか。
藤は日本文化の一部だった。
参考文献
有岡利幸(2021) : 藤と日本人, 八坂書房
Re : in(2021/5/12) : 藤の生命力と人々の思いが宿る、澄んだ自然布「丹後の藤織り」https://www.city.miyazu.kyoto.jp/site/citypro/9212.html (2023/04/27アクセス)
山田隆彦(2021) : 葉っぱ・花・樹皮で見分ける樹木図鑑, 池田書店
鞍馬の里山ガイドブック(2023)
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