文責・喜安
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「カラスが嫌いなのですが…何とかなりませんか?」
ハシブトガラス&ハシボソガラス
スズメ目カラス科
学名:ハシブトガラス:Corvus macrorhynchos ハシボソガラス:Corvus corone
全長:ハシブトガラス:56.5cm ハシボソガラス:50cm
分布:全国
季節:留鳥
環境:ハシブトガラス:平地の市街地、農耕地、海辺から山地の森林など ハシボソガラス:平地から山地の農耕地、草原、林など
吉田キャンパス北部構内附属農場
※北部構内の附属農場に限らず、京大構内の各地で見ることができます。
5月10日~16日は愛鳥週間です!今、日本では冬鳥が去り、夏鳥に入れ替わっています。筆者は先日夏鳥のキビタキの鳴き声を北部構内で耳にしたほか、同じく夏鳥のオオルリを比叡山の麓で観察しました。このように、季節によって様々な種類を楽しめるのが野鳥観察の魅力の一つ。愛鳥週間をきっかけに、バードウォッチングを楽しんでみてはいかがでしょうか。さて、今回取り上げるカラス。愛鳥どころか、ほとんどの人が嫌っている鳥ですね…。でも、この記事でカラスにまつわる色んなことを知れば、カラスが嫌いなあなたも、少しは好きになるかも…?
へぇ☆「よく見るカラスは大体2種類」
京大でよく見る、いわゆる「カラス」は、実は2種類に分けられます。一つはハシブトガラス、そしてもう一つがハシボソガラスです。「あの真っ黒な鳥、どうやって見分けるの?」と思った方、くちばしの太さに注目してください!種名から想像できるように、くちばしが太いほうがハシブトガラス、細いほうがハシボソガラスです。また、ハシボソガラスの方が額が滑らかであることからも見分けがつきます。大まかには、ハシブトガラスは都会、ハシボソガラスは田舎に分布していますが、京大ではどちらも見ることができます。身近にいる野鳥だからこそ、判別を楽しむ機会も多いですよ!ちなみに、京大ではめったに見ることはできませんが、比叡山など近くの山林にもいるカケス、農耕地に冬鳥として飛来するコクマルガラスやミヤマガラス、高山の針葉樹林にいるホシガラスなどもみんなカラス科に属する野鳥。カラスの仲間といっても、いろんな種類がいるんですね。
へぇ☆☆「お出かけが楽しくなる!?ハシブトガラスとハシボソガラスの判別法」
ハシブトガラスとハシボソガラスの違いはくちばしの太さにあると、前項で記しました。しかし、実際に野外に出た時に、くちばしの太さで見分けるのはなかなか難しいです。そこでここでは、くちばしの太さ以外の見分け方をご紹介したいと思います。判別法をマスターしたら、あなたのお出かけもきっともっと楽しくなる!?
その1 鳴き声
「カラスの鳴き声」ときいて思い浮かぶのは、「カーカー」と「ガーガー」のどちらでしょうか?『「カーカー」の方がなじみ深い』という方、『「ガーガー」も聞いたことがある』という方もいらっしゃるかもしれません。実は、どちらも正解。ハシブトガラスは「カーカー」と澄んだ声で鳴くのに対し、ハシボソガラスは「ガーガー」と濁った声で鳴く傾向にあります。厳密には、ハシブトガラスの鳴き声は多彩で、怒った時などに濁った声を出すこともありますが、基本的には「澄んだ声はハシブトガラス、濁った声はハシボソガラス」です。今度カラスの鳴き声を聞いたときは、澄んでいるか濁っているかに注目してみてください!
その2 鳴くときの姿勢
鳴くときの姿勢を見れば、確実に見分けることができます。ハシブトガラスは、体を水平に保ちながら、頭を前に出すような形で鳴きます。一方、ハシボソガラスはあごを引きうつむいた姿勢から、頭を振り上げる際に鳴き声を出します。頭を振って鳴くのはハシボソガラス特有なので、これが確認できれば間違いなしです!
その3 その他
ハシブトガラスとハシボソガラスには、他にも色々な部分に、若干の傾向の違いが見て取れます。例えば歩き方。ハシブトガラスは、ピョンピョンと飛び跳ねて移動することがあるのに対し、ハシボソガラスはスタスタと脚を交互に動かして歩く傾向にあります。また、ハシブトガラスは餌を高くて安全な場所に運んで食べる傾向にあるのに対し、ハシボソガラスはその場で食べる傾向にあります。ちなみに、両方とも雑食性ですが、一般的にはハシブトガラスが肉食傾向、ハシボソガラスが草食傾向にあると言われています。そんな微妙な違いも理解できるようになったら、もっとカラスを楽しく観察できるかもしれませんね!
へぇ☆☆☆「幼鳥も判別できる」
ハシブトガラス、ハシボソガラスという種の判別だけでなく、成鳥、幼鳥の違いも判別できます。カラスの繁殖は3月頃から始まり、4、5個の卵を産みます。その後、夏にかけて巣立ちの時期となります。幼鳥は、この夏の時期から見ることが出来ます。ちなみに、実際に巣立つのは2羽くらい。生まれてこなかったり、餌不足や事故で巣立つ前に死んでしまうカラスも多いです。さて、無事に巣立ちを迎えた幼鳥には、成鳥と違う点がいくつかあります。まず、羽毛が伸びきっておらず、尾が短いです。鳴き声は、なかなか文字で形容しがたいのですが、なんだか細く頼りない感じ。目の色も当初は青っぽく、その後褐色になりますが、成長と比べて色が薄いです。そして、最も分かりやすいのが口の色。成鳥の口の中は黒色ですが、幼鳥は赤いんです!この赤色が完全に黒になるのは、生まれた翌年以降までかかると言われています。是非、夏以降にカラスを見たときは、成長か幼鳥かという観点からも観察してみてください!
今回はカラスの種類や、成鳥と幼鳥の見分け方についてご紹介しました。身近な野鳥だからこそ、普段見過ごしていた、新しい発見も多いと思います。「今度カラスに目を向けてみよう」と少しでも思っていただけたら嬉しいです。
カラスって、観察してみたら意外と面白いかも。
参考文献
松原始. “カラスの教科書”. 雷鳥社. 2015, 399p.
蒲谷鶴彦. “日本野鳥大鑑 増補版 鳴き声420”. 小学館. 2001, 447p.
東京都環境局. “ハシブトガラスとハシボソガラスの違い”. https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/crow/difference.html(参照日:2023.05.08)
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