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【京大!バイオスクープ file13】6月の植物 アジサイ

2023.06.26

学び 京大!バイオスクープ

文責・近藤

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「6月といえば梅雨!梅雨といえば紫陽花ですよね!」

 

アジサイ(紫陽花、別名シチヘンゲ、英名 Japanese hydrangea)
バラ目ユキノシタ科アジサイ属(APG 分類体系ではミズキ目アジサイ科アジサイ属)
学名:Hydrangea macrophylla
原産地:日本
開花時期:6〜7月

場所:その辺に咲いてます。この写真は理学研究科宇宙物理学分野事務室前のもの。




アジサイは日本原産で、外国で注目されて品種改良がすすんで再度日本に輸入されたという経緯をもつ花です。

道路わきや色んな公園などにもよく植えられており、多くの人がよく知っている植物だと思いますが、今日はそんなアジサイについてもっと知ってもらおうと思います!

 

へぇ☆「花びらに見えるのは“がく”、花びらではない」

なんか一度聞いたことがある話だなと思った方もいるのではないでしょうか。そう、4月に紹介したハナミズキも、花びらに見えるのは総苞であり、「花びら」ではないとお話しました。

アジサイもハナミズキと同様に、色のついた目立つ四角の部分が花びらだと思っていた方もいるのではないでしょうか。

実はそこは「がく」の部分。このように、一般に花のように見えるが実はそうではないもの(今回のアジサイではがく)を装飾花といいます。

花に見えて花じゃない、にも様々なパターンがあるんですね。

 

こちらは一見満開に見えますが、よく見ると本物の花の方はまだ咲いてませんね

 

こちらはほぼ満開!

がくの部分が枯れかかっていてもまだ開いてない花がたくさんなのはなんだか不思議ですね。

へぇ☆☆「毒をもっている」

アジサイの葉っぱってとても綺麗で、なかなか虫食いなんかを見かけないと思いませんか?…それと関係があるかどうかはともかく、アジサイには人にとって毒となる成分が含まれており、飾りとして提供されたアジサイの葉を食べた人に嘔吐やめまい、顔面紅潮などの症状が出たという事例があります。

この毒成分は今のところはっきりわかっておらず、それらしき成分がいくつか報告されたことはあるものの、京都産のアジサイには含まれていなかった、品種によって成分や含量が大きく異なる、などとも言われており、さらなる研究が待たれます。

まぁ、いずれにせよ、アジサイを食べたことによる被害は報告されているので、身近にアジサイを食べようとしている人や料理の飾りにしようとしている人がいたら止めてあげましょう。

 

へぇ☆☆☆「花の色は液胞中の色素とアルミニウムの量比によって決まる」

アジサイの花の色は、土が酸性だと青色、アルカリ性(塩基性)だと赤色になる、という話を聞いたことのある方もおられると思います。

これは間違いではないのですが、正確に言うと、アジサイの花の色は土のpHではなく、花の液胞中に含まれる色素とアルミニウムの量の比によって決まります。

まず、植物の細胞には液胞と呼ばれる大きな水袋のようなものがあることはご存知でしょうか。液胞は様々な役割を担っていますが、そのうちの一つが「要らないものを貯めておく」ことです。

元々土の中に含まれるアルミニウムは水に溶けず無毒ですが、土壌が酸性になるとアルミニウムイオンとして土中に溶け出します。このアルミニウムイオンは植物の根に結合することによって根の伸長を抑制する作用があり、一般的に植物にとっては有害です。

そのため、植物はアルミニウムが根に結合しないように様々な戦略をとっており、そのひとつが、アジサイも採用している、「アルミニウムを錯体として地上部に輸送し、液胞内に隔離する」というものです。

簡単にまとめると、アジサイは、毒であるアルミニウムを、害を及ぼさないようにとりあえず箱に閉じ込めて(錯体にして)根っこから離れたところに運び(地上部に輸送し)、袋に入れて(液胞に)隔離しておく、という性質を持っているということです。

そして、このような経緯で液胞に貯められたアルミニウムとアジサイの色素(色素を貯めるのも液胞の役割のひとつです)が作用し、その量の比によって人間の目にはアジサイの色が変わって見えるため、アルミニウムの溶け出しやすい酸性の土壌と溶け出しにくいアルカリ性の土壌とでアジサイの色が変わるのです。

さて、ここまで聞けば、「じゃあ白いアジサイって何なの?」という疑問にもおのずと答えが出るのではないでしょうか。(ちなみに小さいころの筆者は中性ドンピシャだと白いんだろうか、とかって思ってました。そんなわけないですね(笑))

いかがでしたか?普段よく知るアジサイの新たな一面はありましたか?

今後アジサイを見た時は、ぜひアルミニウムなんかのことも思い出して見てみてください!

参考文献

厚生労働省 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ(最終閲覧2023/6/18)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082116.html

厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長 アジサイの喫食による食中毒について(最終閲覧2023/6/18)
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/080818a.pdf

————以下お知らせ————–

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