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【京大!バイオスクープ file18】ダンゴムシ

2023.07.31

学び 京大!バイオスクープ

文責・島田草太朗

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「ダンゴムシの魅力を教えてください!」

 

オカダンゴムシ 学名:Armadillidium vulgare 節足動物門 甲殻綱 等脚目 オカダンゴムシ科 日本全土に生息 「ムシ」と付いてもエビに近い仲間

京大を取り囲む垣など,少し湿っていて土と枯葉の有る所.

 

 捕まえられても”丸まる”という非暴力ぶり,平和的な私たち永遠のアイドル.寿命は3~5年ほど.脱皮を繰り返すことで体を大きくします.最近はイリドウィルスに感染して死が迫る「青いダンゴムシ」なんかもメディアで話題に成りました.話したいこと,気に成ること,調べたいことは尽きませんが,今回ここでは,筆者独断で多くの人に特に「へぇ」と言わせると思われる事柄を厳選して,書かせていただきました.

 ダンゴムシの一生 | NHK for Schoolを見れば3分でダンゴムシの基本情報がおさらい出来ます.お尻で水を飲むって知ってましたか?

オカダンゴムシ(京大総合博物館裏2023/4/6).恐らく雌.雌は黄色い斑点模様が出易いとされる.

 

へぇ☆「“オカ”ダンゴムシ?」

 先ず「オカダンゴムシ」と聞いて驚いた方も多いのではないでしょうか.普通日本で「ダンゴムシ」と呼ばれるのは「オカダンゴムシ」という種名のものなのです.更に,ダンゴムシには国内だけでも意外と多くの種類がいます.オカダンゴムシが圧倒的多数なのですが,日本各地の浜にはハマダンゴムシ,沖縄ではアリノスコシビロダンゴムシやヤンバルコシビロダンゴムシという種類も多くいます.ガッチっと丸まる種類も居れば,あまり丸まらず逃げるという生存戦略を重視する種も居ます.日本で生息するダンゴムシは主に,オカダンゴムシ科,コシビロダンゴムシ科,ハマダンゴムシ科の三つに大別されます.

 海外へ飛び出すと色鮮やかなのやトゲトゲなのやが居ます.「spiky woodlouse」等と是非画像検索してみて下さい.woodlouseはダンゴムシのことです.

 ワラジムシやフナムシ,グソクムシの仲間も近縁です.魚に寄生するウオノエの仲間やヤドリムシの仲間も.

オカダンゴムシとワラジムシ(2023/7/16京大本部構内東側の塀).

 

へぇ☆☆「Ciao!? Hola!? Bonjour!?」

([1],[2])

 最も身近な生き物の一つであるオカダンゴムシ.しかし実は外来種です.オカダンゴムシは明治期以降の貿易の間に地中海からやってきたものたちの子孫であるという説が有力とされています.残っている最古の日本でのオカダンゴムシ確認の記録は明治18年の横浜.一般に認知され始めるのが昭和以降なので,日本の子どもがダンゴムシと戯れる風景はかなり新しいものなのです.

 同じオカダンゴムシ科のハナダカダンゴムシも外来種.ハナダカダンゴムシもヨーロッパから帰化した種で,1990年頃に神奈川や神戸で認知される様になり,現在進行中で存在が確認される範囲が広がりつつある比較的新参者です.

 近縁種ですと,ワラジムシ,クマワラジムシ,ホソワラジムシが外来種とされています.どの種も起源はヨーロッパです.

 輸入された土に眠っていたのか,そもそも日本へ来た経緯もあまり定かではないのだとか.

オカダンゴムシと枝の下側には小さなチャコウラナメクジ(京大総合博物館裏2023/4/6).どちらも最も身近な幼馴染の「ダンゴムシ」「ナメクジ」であると同時にどちらもヨーロッパからの外来種.

 

へぇ☆☆☆「BALMと意思決定」

([3],[4],[5],[6],[7],[8],[9],[10],[11],[12],[13],[14],[16])

 交替性転向(こうたいせいてんこう,turn alternation)とは,動物が分岐に遭遇して右もしくは左へ曲がった後に続いて左右の分岐に遭遇した時に前回とは逆の方向へ曲がる傾向が強く現れる性質で,様々な動物(人間も含む)にみられます([3],[14],[17]).特にダンゴムシはこの性質を持つことで有名で,入手や飼育のし易さから,ダンゴムシの交替性転向に関する研究は数多くあります.

 ダンゴムシの交替性転向反応はBilaterally Asymmetrical Leg MovementsBALM)に沿うものであると言われています.BALMとは,左右の脚の運動量の非対称を解消しようという働きです.左右の脚の運動量が対称となる進行方向は平面上では(凹凸が有る場合は[15]参照)凡そ一定と直観的にも分かりますが,つまりBALMは障害物により直線的な軌道から逸らされた時にも進行方向は元通りにさせる性質と言えます.ダンゴムシの交替性転向反応は,障害物から次の障害物へと遭遇する間隔が短い程強く表れて長いほど弱まることがT字路を用いた実験により示唆されており([5]),つまり脚の運動量の左右差は短期記憶だということが言えそうです.

 BALMにはどういう生存戦略的意味が有るのでしょうか.何等かの刺激から遠ざかるには直線的に進行するのが最も効率的ですが,現実には障害物が有り難しいです.そこでBALMが進行を直線に近いものにする役割を果たすわけです.交替性転向に関して言えば,もし右への転向を連続して行えば,元居た場所の近くに戻る確率が高まってしまうというのが分かり易いでしょう.逃避行動に機能を果たすことは,びっくりさせて丸まった個体の方がその直後の交替性転向がより頻繁となることからも,指示されます.

 ダンゴムシはBALMという性質(本能行動)を仕掛けられた機械の様にも見えます.森山徹([9])はその仕掛の機能が不具合,エラーを起こす場合,交替性転向反応の研究ではそれまで対象のdataから除外されていたもの(変異行動)に注目し,そこに機械的でない「ダンゴムシの心」,BALMでは説明不可能な「ダンゴムシの意思決定」を見出そうとしました.この「ダンゴムシの心」の研究は筆者が個人的に大好きで感動した研究の一つです.詳細を話すと長くなるので日本語で且つ分かり易い文献[11],[12],[13]を是非お読み下さい.実験装置の中を一生懸命に歩くダンゴムシ,そして変異行動,いや~いちいちたまらなくかわいいです…

(2023/7/12京都大学熊野寮)夏の夜は活発.木を登って行く姿を多く見る.BALMを仮定すれば,鉛直な円柱は垂直に登り降りするか水平にくるくる周回するかの二択になり,傾いた円柱だと別の二択の登り降りになる(勾配ベクトルの方向だとか背斜軸と向斜軸との二択だとか言って伝わるか確信が持てない).実際大体そうして登り降りしている様に思う.手のひらに乗せた時の歩き方も或程度予測できるかも知れない.

 

 

 いかがだったでしょうか.ダンゴムシに多様な種類がいたこと,そこらに居るのは殆ど外来種であること,あんなに身近な幼馴染ですが,知らなくて驚いたことがありましたでしょうか.筆者も調べながらますますダンゴムシがかわいくなって仕方が有りません~…

 筆者個人的には,ダンゴムシが丸く成ることに関して仕組みや幾何が面白そうと何と無く思っておりましたが,それに関する文献を嗅ぎ当てられませんでした.それとBALMや交替性転向とLévy walk との関係も気になりました.何か情報が有れば是非是非教えて下さい!

 

ダンゴムシは面白くて仕方がない。

きのこを食べるオカダンゴムシ(京大本部構内東側の塀2023/7/16).こうやって食事する時や食べ物を探す際にBALMが破られるのかに関する言及はそういえば見つけられなかったな…夜に木に登る様子を見たり[15]を読んだりすると,単に日光を障害物として感知しているだけなのか(夜に照らしても逃げないが),昼にはBALM以外に高低なら低を選択的に歩く機構が有るのか,或は夜や暗闇でこそBALM以外の食物を探すための機構が有るのか,その他色々と想像が膨らむ.

参考文献

[1] 奥山 風太郎,みのじ『ダンゴムシの本 まるまる一冊だんごむしガイド~探し方、飼い方、生態まで』,DU BOOKS,2013.

[2] 「日本の外来種全種リスト 侵入者データベース」(2023/6/28アクセス)
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/resources/listja_miscarthropods.html 

[3] R.N. Hughes “Phylogenetic Comparisons” Spontaneous Alternation Behavior, Springer-Verlag, p. 39-57 (1989).https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4613-8879-1_3 

[4] R. N. Hughes “Mechanisms for turn alternation in woodlice (Porcellio scaber): The role of bilaterally asymmetrical leg movements” Animal Learning & Behavior volume 13, p. 253–260 (1985). https://link.springer.com/article/10.3758/bf03200018 

[5] Munetaka Watanabe, K. Iwata “Alternative Turning Response of Armadillidium vulgare”, The Annual of Animal Psychology 6, p.75-82  (1956). https://www.semanticscholar.org/paper/Alternative-Turning-Response-of-Armadillidium-Watanabe-Iwata/988d3d9cf228c359d59e4927714bb8a8ea99b879 

[6] 小野 知洋, 高木 百合香『オカダンゴムシの交替性転向反応とその逃避行動としての意味』日本応用動物昆虫学会誌(応動昆)第 50 巻,第 4 号,p. 325–330(2006).https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez/50/4/50_4_325/_article/-char/ja/ 

[7] 森山 徹, 右田 正夫『ダンゴムシの意思決定』人工知能学会全国大会論文集,第27回 (2013).https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2013/0/JSAI2013_2L4OS24d3/_article/-char/ja/ 

[8] 右田 正夫, 森山 徹『動物行動における擬合理性のモデル化: オカダンゴムシの交替性転向反応における認知的側面のシミュレーション』認知科学 12 巻 (2005) 3 号, p.207-220. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/12/3/12_3_207/_article/-char/ja/ 

[9] Moriyama,Tohru “Decision-making and Turn Alternation in Pill Bugs” International Journal of Comparative Psychology, Volume 12, p. 153-170, 1999. https://escholarship.org/uc/item/1wn9s57r 

[10] Toru Moriyama, Masao Migita, Meiji Mitsuishi “Self-corrective behavior for turn alternation in pill bugs (Armadillidium vulgare)”  Behavioural Processes 122 (2016) p.98–103. https://www.researchgate.net/publication/285542276_Self-corrective_behavior_for_turn_alternation_in_pill_bugs_Armadillidium_vulgare 

[11] 森山 徹『変異行動からの眺め』比較生理生化学 28巻 (2011) 3号, p. 273-277. https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/28/3/28_273/_article/-char/ja/ 

[12] 森山 徹『オカダンゴムシによる環境の自律的同定と行動の創発』生態心理学研究 1巻 (2004) 1号, p. 33-44. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jep/1/1/1_33/_article/-char/ja 

[13] 森山 徹『ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学』PHP研究所,2011. 

[14]  川合 隆嗣『無脊椎動物における交替性転向反応研究の展開と問題点について』動物心理学研究 61巻 (2011) 1号, p. 83-93. https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/61/1/61_61.1.12/_article/-char/ja/ 

[15] 山口 達也『生物の知性の探求と知能ロボットへの応用』2018. https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?lang=1&amode=MD823&opkey=b163064398988306&bibid=1931719 

[16] 岩原 信九郎, 鈴木 林子『ダンゴムシにおける試行間隔および照明条件の反応交替および走行時間におよぼす効果』動物心理学年報 14 巻 (1964) 1 号, p.11-19. https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip1944/14/1/14_1_11/_article/-char/ja/ 

[17] Pate, J.L., Bell, G.L., “Alternation behavior of children in a cross-maze” Psychon, Sci. 23, p. 431–432, 1971. https://link.springer.com/article/10.3758/BF03332653 

 

————–以下お知らせ————–

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