文責・喜安
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「甲高い声で鳴くあの鳥は?」
ヒヨドリ
スズメ目ヒヨドリ科
Hypsipetes amaurotis
全長:27.5cm
分布:全国
季節:留鳥または漂鳥
演習林事務室の北の林
「ヒーヨ」「ピーヨ」という、甲高くけたたましい鳥の鳴き声。あの正体は一体何でしょう?答えはヒヨドリです!今月は、ヒヨドリについて解説します!
へぇ☆「最も身近な野鳥?」
突然ですが、皆さんにとって、最も身近な野鳥は何でしょうか?環境や地域によって「最も身近な野鳥」は変わるかもしれませんが、ヒヨドリは多くの人にとって身近な野鳥といえるでしょう。ヒヨドリは、灰色の体、茶色の頬、ぼさぼさ頭、そして甲高くけたたましい「ヒーヨ」という鳴き声が特徴的な野鳥です。京大を歩いていても、大体の確率で姿や鳴き声を確認できます。2016年から2021年にかけて行われた全国鳥類繁殖分布調査(主催:バードリサーチ、(公財)日本野鳥の会、(公財)日本自然保護協会、日本鳥類標識協会、(公財)山階鳥類研究所、環境省 生物多様性センター)でも、ヒヨドリは「数の多い鳥」で堂々の第一位、「分布の広い鳥」でウグイスに次ぐ第二位となりました。そんなヒヨドリですが、実は分布はほぼ日本国内に限られています。日本では当たり前に見られますが、世界的に見ると珍しい野鳥なんですね。また、ヒヨドリは元々山林や里山といった、樹木のある環境に生息する野鳥です。市街地の街路樹や公園の木に営巣するようになったのは1970年以降のことで、都市化への適応の例として注目されています。
へぇ☆☆「鳴き声のヒミツ」
前の項で記した通り、ヒヨドリは「ヒーヨ」という鳴き声が特徴的です。「ヒヨドリ」という名前も鳴き声に由来すると言われています。ところで、ヒヨドリは季節によって鳴き声が変化します。ヒヨドリは春から夏は単独で、秋から冬は群れで生活しますが、春から夏はバラエティーにとんだ複雑な鳴き方、秋から冬は単調な鳴き声になるんです!是非、外出の際はヒヨドリの鳴き声に注目してみてはいかがでしょうか。また、ヒヨドリが鳴き始める時間は日の出の時間とほぼ一致するそうです。夏は早い傾向があるものの、年平均で日の出の約11分前に鳴き始めるという報告があります(山寺亮、山寺恵美子・1991)。早起きが得意な方、確認してみてください。他にも、沖縄や石垣島、伊豆諸島など、南に行くほど鳴き声が高くなるという分析もあります(蒲谷鶴彦・1990)。どこにでもいる野鳥でも、興味深い事実がたくさんあるんだなと、改めて感じました。
へぇ☆☆☆「嫌われ者?」
残念ながら、ヒヨドリはあまり人気がありません。どこにでもいる、体が地味、鳴き声がやかましいなど、不人気な要素を兼ね備えてしまいました(個人の意見です)。そんなヒヨドリは食性が広く、昆虫やクモの他、木の実や果実、ツバキなどの花の蜜、餌台のジュースも飲みます。さらに、キャベツや白菜、果実などの農作物も食べるため、農家からも害鳥として嫌われています…。ただ、その食性の広さが、実は多くの植物に役立っているんです!ヒヨドリが実を食べて移動し、種を含んだフンをすることで、植物は分布域を広げることができます(※全ての植物で当てはまるわけではありません。カキなど、実を食べる一方で種は食べないという場合もあります)。また、密を吸う際にくちばしに花粉がつくことで、花粉を媒介する役割もヒヨドリは果たしています。ヒヨドリは植物にとって大切な存在なんですね。ちなみに、植物も鳥を活用しようと頑張っています。例えば、鳥の色覚をくすぐる赤色の実をつけるほか、ナンテンやセンダンは、実に苦みや渋み、毒を含ませ、鳥が少し食べただけで飛び立たせるような工夫をしています。鳥と植物の駆け引き、面白いですね!
身近な野鳥・ヒヨドリには魅力がいっぱい
参考文献
中山雄三. “ひと目でわかる野鳥”. 成美堂出版. 2010, 239p.
蒲谷鶴彦. “日本野鳥大鑑 増補版 鳴き声420”. 小学館. 2001, 447p.
全国鳥類繁殖分布調査. “現時点までにわかっている今回の調査結果”. https://bird-atlas.jp/result.html (参照日:2023年8月7日)
“BIRDER 2023年1月号 特集 木の実と鳥の深すぎる関係”. 文一総合出版. 2023, 79p
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