文責:西本早希
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「ヒガンバナって触ったら死んじゃうの?」
ヒガンバナ
ヒガンバナ科
Lycoris radiata Herb.
草丈:20~40cm
分布:全国
季節:初秋
場所:北部の附属農場
北部の農場周辺に赤い花を咲かせているヒガンバナ。全国的にも夏が終わって涼しくなる季節に、田んぼや畑の周辺で咲いているのをよく見かけますが、毒があることでも有名。触っただけでも死んでしまうんでしょうか…?
へぇ☆「花や茎は触っても大丈夫!だけど…」
ヒガンバナの毒は球根(鱗茎)に多く含まれています。そのため、花や茎は触っても問題ないと考えられています。が、植物から出た汁が手についた場合は念のため洗った方が良いそう。というのも、ニラと間違えてヒガンバナの葉を食べて食中毒症状を起こした例も…
ヒガンバナに含まれているのは、有毒成分のリコリン、ガランタミンなどのアルカロイド。食べると30分以内に、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などの食中毒成分が見られます。ヒトだけでなく、動物にも毒性があるので、ペットが誤って食べてしまわないように注意も必要です。
へぇ☆☆「もともとは害虫対策で植えられた」
なぜ毒を持つ植物が田んぼや畑の近くに生えているの?と思った方もいるでしょう。もともとはネズミやモグラなどの害獣が畑に近づかないように植えられたようです。また、毒成分は、他の植物の生育を阻害する働きもあるため、雑草対策の意味合いもあったそうです。
へぇ☆☆☆「実は食べられる!?」
食べたら危ない!とここまで言ってきましたが、実はヒガンバナを食べていたこともあるんです。飢饉の食べ物がない時、球根を非常食として食べていたそうです。毒が入っているけど大丈夫!?と思ってしまいますが、アルカロイドは水溶性なので、水にしばらくさらせば毒抜きができるそう。球根はデンプン成分が豊富なため、団子にしたり、雑穀と混ぜて食べられたそうです。
だからといって食べるのは危険なのでまねしないでください!
また、球根は「石蒜(せきさん)」という生薬としても利用されています。鎮咳去痰や沈痛、降圧、催吐などの薬理作用が知られており、抽出エキスは市販の鎮咳薬に配合されています。また、ガランタミンは、アルツハイマー型認知症治療薬としても利用されています。
毒があるヒガンバナも、実は私達の生活に役立っていたんですね。
参考文献
ウェザーニュース(2022). 「実は非常食だった?ヒガンバナ3つの秘密」
https://weathernews.jp/s/topics/202209/130165/
(2023/9/29アクセス)
滋賀県立琵琶湖博物館(2021). 「ヒガンバナについて」
https://www.biwahaku.jp/uploads/6ec1a0c0cea7c8152d644d404a53ea7ee4bbbc06.pdf
(2023/09/29アクセス)
公益社団法人日本薬学会「生薬の花 ヒガンバナ」
https://www.pharm.or.jp/flowers/post_4.html
(2023/09/29アクセス)