文責・永田
複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「京大構内に梅の木ってありますか?」
2月が近づき、徐々に梅の花が咲き始める季節ですね。
数は少ないですが、京大構内にも梅の木はあります!
ウメ
バラ科サクラ属(以前はアンズ属とされていた)
学名:Prunus mume
原産地:中国
開花時期:1月下旬~4月上旬(品種や天候による)
@吉田キャンパス 本部構内 教育推進・学生支援部棟北側 (1月26日撮影)
遠くから見るとまだあまり咲いているようには見えませんが、近づいてみると、かなりつぼみが膨らんでおり、一部はすでに咲き始めています!
@吉田キャンパス 薬学部構内 医薬系総合研究棟東側 (1月25日撮影)
こちらは小さな木ではありますが、ほとんど満開です!
今回は、そんな梅の魅力をご紹介します!
へぇ☆「300以上の品種がある」
梅は江戸時代後期から盛んに品種改良が行われ、今では300以上の品種があるとされています。梅の中にも、花を見るために育成・選抜されてきた「花梅」と果実を食用とするための「実梅」があります。
花梅はさらに、中国から渡来した原種に近い野梅系と、野梅系から変化して枝や幹の内部が紅い緋梅系、梅と杏の雑種である豊後系に分けられます。
よく耳にする南高梅は、実梅の一種で種が小さく果肉がやわらかい梅の最高級品種となっています。
へぇ☆☆「梅の実には機能性成分がたくさん!」
梅の実には様々な効能があるということは、古くから経験的に知られていました。
戦国時代になると梅の効用がますます認識され、兵糧食としても利用されていたそうです。
実際に梅の果実には、ミネラル、ビタミン、有機酸が豊富に含まれており、様々な生理活性を示す食品として評価されています。
梅果肉の酸味は、4~5%含まれるクエン酸、リンゴ酸や酢酸などの有機酸によるものです。クエン酸には疲労抑制効果があるほか、酢酸は高い抗菌作用を示します。
また、梅果肉には高い抗酸化力で知られるポリフェノールが豊富に含まれています。
へぇ☆☆☆「万葉集の時代から愛されている」
梅の原産地は中国ですが、奈良時代には日本に伝来し、梅干しや梅酒など食用としてだけでなく、その花の愛らしい見た目から多くの工芸品や着物の文様として使用されており、日本の風土や文化にしっかりと根づいています。
万葉集には、梅を詠んだ句が120首もあり、これは桜を詠んだ句(42首)よりもはるかに多いそうです。ご存じの方も多いと思いますが、「令和」という元号も、万葉集の大伴旅人による序文「初春の令月にして気淑く風和らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす」に由来するものです。
また、多くの京大生が一度は訪れたことがあるであろう北野天満宮にも梅と深いつながりがあります。主祭神である菅原道真公は、生涯こよなく梅を愛していたといい、北野天満宮の境内で育った梅干しは、古くより学業成就・入試合格・災難厄除祈願などの縁起物として知られています。
ちょうど立春を迎える頃に、境内で梅の花も見られるということで、ぜひこれからの季節に訪れてみてはいかがでしょうか。
北野天満宮で新年の縁起物として授与している「思いのまま」
咲くのは稀だそうです。(写真・情報提供 近藤さん)
ウメは古くから日本人にとって欠かせない存在であった。
参考文献
月向農園. “いろいろな梅の花”. なんでも梅学. https://minabe.net/gaku/hana/hinsyu.html(2024-01-21閲覧)
岩崎啓子, 野村秀一. “梅干し中の有機酸及びアミグダリン関連物質の抗菌作用”. 『長崎国際大学論叢』. 2016. 第16巻, p147-p158.
一般財団法人 梅研究会. “梅を知る”. https://www.umekenkyuukai.org/(2024-01-21閲覧)
全国天満宮総本社 北野天満宮. “大福梅と思いのまま”. https://kitanotenmangu.or.jp/amulet/ofukuume/(2024-01-21閲覧)
日本三名園 偕楽園. “梅図鑑”. https://ibaraki-kairakuen.jp/zukan/(2024-01-21閲覧)
重留妙子. 万葉集における梅の歌考. 熊本女子大学国文談話会. 1980.
http://rp-kumakendai.pu-kumamoto.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/1393/1/2602_shigedome_6_14.pdf
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