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【京大!バイオスクープ file 37】10月の木 モクセイ

2024.10.19

学び 京大!バイオスクープ

文責・清水

複雑な生態系を少しでも理解し、さまざまな自然を徹底的に究明したい京大!バイオスクープ。今回のご依頼はこちら「キンモクセイとギンモクセイって何が違うの?」

吉田南図書館前では見上げるとキンモクセイが見られます!

モクセイ
学名Osmanthus fragrans モクセイ科
開花時期:10月頃
@吉田キャンパス吉田南構内吉田南図書館前

 

 

 

10月中旬になると突然街中に芳香をまき散らすキンモクセイ。雑貨屋さんや化粧品を扱うお店では9月からキンモクセイの香りの商品が並び、その花期が終わってもしばらくピックアップされていますね。

香りも花のかわいらしさも人気のキンモクセイって、ギンモクセイってやつと何が違うの?という謎からその不思議なところまで紹介いたします!

 

へぇ☆「花と葉で見分ける」

キンモクセイとギンモクセイ大きな違いは、やはりその花の色。キンモクセイはオレンジ色ギンモクセイは白色の花の束が咲きますね。その中でもキンモクセイの香りが一番強いとされています。他の特徴としては、ギンモクセイの葉のほうが少し大きく幅も広い。葉っぱの質感はギンモクセイがやや厚いようです。

ウスギモクセイと言うのもありまして、こちらの花の色は薄黄白色。葉っぱは3つの中で最も厚いそう。

ただし、やっぱり目の肥えた人でないと見わけは難しそうなので、花が咲く秋の時期に見分けておきたいところです。

京都大学では吉田南構内の吉田南図書館前でキンモクセイとギンモクセイを見ることができます。

ピントが合っておらず申し訳ない……

また、実はキンモクセイとギンモクセイは同じ学名で呼ばれています。すなわち、種としては同じものなんですね。ただし、キンモクセイはOsmanthus fragrans var. aurantiacus Makino、ギンモクセイはOsmanthus fragrans Lour.と書かれることもあり、キンモクセイはギンモクセイの「栽培品種」であると考えられています。ヤブツバキでいうと、ギンモクセイとキンモクセイはヤブツバキと月下美人(ヤブツバキの栽培品種の一つ)という関係性何です。

 

へぇ☆☆「キンモクセイは2度おいしい」

キンモクセイは秋に花を咲かせますね。その開花時期の中でも、同じ個体で2度の開花のピーク、すなわち花盛りがあるといわれています。キンモクセイの花盛りを1度逃してしまっても、その後また開花のピークが来かもしれないので、あきらめないでくださいね。

京都市北区の住宅街に植栽されているキンモクセイを観察した研究では、しっかり2度の開花ピークが観測されています。
さらに、1度目のピークではキンモクセイの小花は全体のうち70%以上が開花していた一方、2度目の場合は全体の30%を下回り、最も低い株ではわずか5%でした。その結果、2度目の花盛りのほうが株全体の花の香りも弱くなっていました。

また、1度目の開花ピークではその年に新しく成長した枝からの花の芽とその前の年に伸びていた枝の花の芽の開花率は同じでしたが、2度目の開花ピーク時では前の年に伸びた枝の開花率がその年のものよりも2倍も高くなっていました。前年の枝は2回目にして本領発揮をしだしたんですね。

去年の枝は葉っぱがついている枝の一段下にあります。

2度、もしくはそれ以上の開花ピークがあるかもしれませんが、咲いてる花の数も香りも1度目のほうが強いということですね。できれば1度目のピークからお花を楽しみたい!

 

へぇ☆☆☆「温暖化で花盛りに変化」

キンモクセイ花の咲き方が、夏の長さによって変わるのではないかを調べた研究があります。

夏からの気温が高い状況で育てられたキンモクセイ、すなわち夏が長い状況で育てられたものは、開花する前の花の状態である花芽のふくらみ開始時期が遅れ、さらに開花の開始も遅れたようです。

加えて、花の咲き始めの時期もばらつき、気温が高い場所で育てられたキンモクセイは開花ピークが複数回観察され開花期間が長期化しました。後半の開花ピークでは開花する花の数が少なくなるものも観察されています。

花の形もかわいい!!

温暖化が進み夏が長くなるとキンモクセイの花の咲く時期も遅れるということですね。皆さんの写真フォルダを見返してみても、キンモクセイが咲く時期は少しずつ遅れているのではないでしょうか。さらに花盛りや開花期間が長期化するというのは私たちにとっていいのか悪いのか……身の回りの生き物でも気候変動の影響を受けているというのを実感できるわけです。

 

キンモクセイには、「実は……」といいたくなる秘密がたくさんありました!この記事だけでは紹介しきれないくらいおもしろく、また人間と深くかかわってきた植物です。まだまだおもしろさに溢れているので、ぜひじっと、観察してみてください!

 

キンモクセイは1回目の花盛りで楽しもう。

 

参考文献

葉と枝による樹木検索図鑑. キンモクセイ-ギンモクセイ-ウスギモクセイ. https://elm3.web.fc2.com/top/ruijisyu-miwakekata-hoka/kinmokusei-ginmokusei-usugimokusei.html (2024/10/3最終閲覧)
高橋俊一. 小石川植物園の樹木 -植物名の由来-.  https://warpal.sakura.ne.jp/kbg/mokusei-kin/gold.html (2024/10/16最終閲覧)

下村孝, & 山本祐子. (2008). 京都市上賀茂および下鴨地域でのキンモクセイ (Osmanthus fragrans var. aurantiacus) 二度咲き現象の実態調査. 日本緑化工学会誌, 34(1), 109-114.

中島敦司, 山本将功, 大南真緒, 仲里長浩, & 廣岡ありさ. (2011). 夏季から秋季にかけての気温がキンモクセイの開花に及ぼす影響. 日本緑化工学会誌, 37(1), 26-31.

 

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