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三重大学の取り組み(No.6)

2010.06.10

学び

三重大学は、5学部6研究科が同一キャンパスに集まる、学部生、院生の数が約7400名の大学である。建物の延べ床面積は約29万平方メートルである。

三重大学は環境報告書において、学長が「世界一の“環境先進大学”を目指す」「環境は経営の最優先事項である」「環境人財の養成を行う」と非常に強いメッセージを発している。 三重大学の環境方針には環境対策の対象として挙げられる項目が「教育、研究、社会貢献、業務運営」の順に記載されていることでもわかるように、教育面、つまり学生の環境教育に力を入れている大学である。平成19年にはISO14001認証を取得した。

受賞歴は以下の通りで、対外的な評価も高いことがわかる。環境報告書に関する受賞が多いが、環境への取り組みの質の高さが環境報告書の評価に反映されていることは言うまでもない。

  • 「容器包装3R推進環境大臣賞」地域の連携協働部門優秀賞(平成20年度)
  • 「第13回環境コミュニケーション大賞環境報告書部門」環境配慮促進法特定事業者賞(平成21年度)
  • 「第12回環境コミュニケーション大賞環境報告書部門」環境配慮促進法特定事業者賞(平成20年度)
  • 「第10回環境コミュニケーション大賞環境報告書部門」環境配慮促進法特定事業者賞(平成18年度)
  • 「第12回環境報告書賞・サステイナビリティ報告書賞」環境報告書賞公共部門賞(平成21年度)

 

1、三重大ブランドの環境教育

1-1 環境教育資格支援プログラム

三重大学では、平成19年度から「環境教育資格支援プログラム」が始まった。学部問わず本教育プログラムの履修者全員に、 環境内部監査員の資格と「環境資格支援教育プログラム修了証明書」を授与するというものである。

このプログラムでは、必修科目(2単位)および選択必修科目(1-2単位)、選択科目(8単位)の合計11-12単位を取得することとなっている。 選択必修科目はインターンシップ科目であり、環境ISO推進室が認める内外の行政・企業・団体・国連関連機関でインターンシップを単位として評価することとなっている。 選択科目では、環境カウンセラーや地球温暖化防止活動推進員、環境管理士、公害防止管理者、環境計量士、ビオトープ管理士、 生物分類技能検定といった環境資格試験に関連した講義が開講されている。科目は共通教育科目と各学部専門科目で構成されており、 どの学部専攻の学生でも平等に学習できるような体制が整備されている。

1-2 国際環境教育プログラム

平成20年度からは「国際環境教育プログラム」が始まった。このプログラムは国内外の大学と協力して「アジア・パシフィック環境コンソーシアム」を構築し、より優れた環境教育プログラムの開発および国際交流、国際環境インターンシップを行うことを構想するものである。そのために平成20年度には、国内外の23大学との意見交換を行った。

国連関連機関での「国際環境インターンシップ」の実施に向けて、ユネスコ・スクール、気候変動枠組条約事務局、生物多様性条約事務局に三重大学の全学部・研究科の登録申請を行った。国連関連機関での全学部・研究科の登録は、三重大学が日本で初めての事例である。

国際環境インターンシップとして、平成21年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)にはすでに学生を派遣しており、また平成22年に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)にも学生を派遣する予定である。環境条約の会議だけでなくユースの国際会議にも目を向けており、平成21年8月には、名古屋で開催された「アジアユース会議」および韓国大田で開催された「UNEP-TUNZAユース会議」に3名の学生が参加した。

環境条約の締約国会議だけでなくユースの国際会議でも、使用言語は当然英語である。会議に参加する学生の英語力を高めるため、「実践英語特別授業」を毎週木曜日の午後6時から8時まで行っている。環境は、人文科学、社会科学、自然科学と広範囲にまたがっていることから、どの学部の学生も参加できるようなテーマで授業を行っている。

1-3 三重大ブランドの環境人材養成プログラム

三重大学が申請した「三重大ブランドの環境人材養成プログラム」は、平成20~22年度の質の高い大学教育推進プログラムに採択された。環境人材育成の概念図は上図の通りである。

このプログラムでは、下図のように環境資格支援教育プログラムと国際環境教育プログラムをPDCAサイクルによって継続的に改善しようとしている。P、D、C、Aそれぞれには以下のような内容が対応している。

  • P:環境資格支援教育プログラムの開発、環境インターンシップおよび国際環境インターンシップの開発、基礎科目および専門科目における環境関連科目の開発
  • D:積極的に実行
  • C:プログラムの評価、参加学生からのアンケートによる満足度調査、内部評価および産官学民の第三者評価による成果および課題
  • A:プログラムの改善、新プログラムの提案

 

2 環境ISO学生委員会

環境ISO学生委員会は、平成18年2月21日に「MIEキャンパス宣言」を宣言して発足した。学内の活動にとどまらず、 小学校での環境学習や町屋海岸清掃、津市との連携によるイベント運営など、地域と連携した活動も行ってきた。 また現在は、平成22年に名古屋で開催が予定されている生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けて動き出している。

2-1 学内での活動

環境ISO学生委員会は、学内で多様な活動を展開してきた。以下にその例を紹介する。

  1. ○レジ袋の削減
      ・三重大学オリジナルエコバッグの作成
      ・レジ袋有料化前後のレジ袋の使用枚数の調査(年間使用量98%削減という結果が明らかに)
○屋外ごみ箱の改善
・ふたつきの、分別ごとに色分けされたごみ箱を新規に導入
○放置自転車の再利用
・平成21年には81台を再利用へ
○古紙の再生利用
・回収古紙を学内用トイレットペーパーとしてリサイクルする仕組みの構築
○落ち葉の堆肥化
・落ち葉から850kgの堆肥を作り、学内の花壇に利用
○学内の花壇の整備

 

2-2 学外での活動

環境ISO学生委員会の学外での活動の代表的なものとして、町屋海岸モデルがある。町屋海岸モデルとは、共同実施者として、中部電力株式会社の産(民間企業)、三重県・津市の官(国・地方自治体)、環境ISO学生委員会、津市立北立誠小学校の学(教育・研究機関)、地元の町屋百人衆の民(地域住民)の産官学民が協力して“素足で走れる町屋海岸”を目指すというもので、平成18年から始まった。

三重大学に隣接する町屋海岸では、不法投棄対策に悩まされてきた。地域住民によって結成された町屋百人衆が海岸美化活動を行ったり、津市が海岸清掃で回収される不法投棄の処理をしたりしてきたものの、有効な連携が取られておらず不法投棄の減少に至っていなかった。そこで、三重大学が各主体の連携を促すコーディネーターとなり、不法投棄対策を包括的に実施することとなった。概念図は以下に示してある。

大学生と地域住民がともに海岸清掃活動を行ったり、北立誠小学校の児童に町屋海岸を題材に環境学習を行ったりするなどの活動を行っている。これからも取り組みは発展していく予定である。

また環境ISO環境委員会は、他大学の学生環境団体との交流を積極的に行っている。全国環境ISO委員会、全国環境セミナー、全国大学生環境活動コンテストなどの学外イベントに積極的に足を運び、自らの取り組みの発信や情報交換を行っている。学内においても教育学部や工学部といった各学部の学生との交流の場を設定している。

※USR=University Social Responsibility、大学の社会的責任

 

参考文献

  • ・三重大学環境報告書2006
  • ・三重大学環境報告書2007
  • ・三重大学環境報告書2008
  • ・三重大学環境報告書2009
  • ・三重大学環境ISO推進室 http://www.iso.mie-u.ac.jp/office/
  • ・三重大学環境ISO学生委員会 http://www.iso.mie-u.ac.jp/student/
  • ・三重大学環境ISO http://www.iso.mie-u.ac.jp/

文責 根本潤哉(元環境保全センター研究支援推進員)

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